転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 一週間後。
 ディートリヒ国王をはじめとしたリーゼベルツの一行はセリチア・グロサリア双方の軍がにらみ合っているセリチア側の国境付近、マニエルダという街にいた。そこまでは通常ならば、一台の馬車でなら二週間程度かかり、こういった行幸は護衛などを引き連れた状態であるので、それ以上掛けて進むのだが、今回は調停という役割、そして、奇襲作戦をとるという形の手前、そう言っていられず、貴賤問わず今回の調停団は全員が馬でひとっ走りした。ちなみに、アリアは一人で馬に乗ることはできるものの、今回は早く着かなければならないので、アリアはクレメンスの後ろに乗せてもらった。

 途中で休憩を取る間、アリアはクレメンスと今回の調停について話をした。
「今回の強行的な調停には、陛下はどのような思惑があるのでしょうか」
「俺にもわからん」
 アリアの問いに、クレメンスはそう即答した。彼の答えにアリアは驚いた。内務相である彼となら話をしていてもおかしくないだろう。
「だが、今回の人選はおそらくあぶり出しのためだろう」
 アリアの驚きを見て、クレメンスはそう続けた。
「あぶり出し?」
「ああ。十中八九アリア姫はあの方を裏切ることはない、とあの方は信じているだろう。しかし、や他の侍従二人はどうかわからない。今回のスベルニアの一件がそうだ。誰かがあの国と繋がっていなければ、あの・・白き土蜘蛛・・・・・』とあのタイミング・・・・・・・で協定を結ぶことは不可能だ。本来ならばお前だけを連れて行かない、という選択肢もあったが、そうすると調停先で俺を含めた・・・・・誰かに裏切られたときに対処ができない。そう思って、陛下はお前を連れてきたんだろう」
 クレメンスは羨望のまなざしと共に、アリアにそう言った。
「そうなんでしょうか。私はあの方にさんざん文句言っていますよ」
 かなり振り回されていますしね、少し文句を言いたくもなります、とアリアはクレメンスの言葉を受けて、ため息をつきながらそう言った。しかし、クレメンスは首を横に振った。
「お前の存在があったからこそ、陛下は動かれる。そして、あの人はおそらく―――――いや、これは聞かなかったことにしてくれ」
 クレメンスは何かを言いかけたようだが、結局最後までいう事はなく、そのまま休憩が終了し、マニエルダまでの早掛けが始まった。

 そして、まだリーゼベルツ一行がマニエルダに到着した、という事が一帯に伝わる前、今回の調停に参加するメンバーが集められ、どのような方向性に持っていくのか打ち合わせていた。そんな中、アリアはそれに集中できていなかった。
「なんか、集中できていないな」
 アリアは座りながら休憩時の出来事考えており、心ここにあらずだったようだ。ジョルジュが小突いてきた。
「ええ、昨晩は少し眠れなくて」
 クレメンスに言われたことを含め、自分自身で考えていたことを含めると、たとえ同僚であっても全てを言う訳に行かなかった。なので、多少の真実を交えつつ、微笑んでごまかした。
「そうか。まあ、いつでも頼ってこい」
 ジョルジュは気前のいいお兄さんのように、アリアの頭を撫でた。彼女はありがとうございます、と言い、目の前の状況に集中することにした。




 その日の晩、リーゼベルツ一行は意図的に情報を拡散した。街の人たちは新たなる侵入者の情報にパニックになり、慌てて街を飛び出す人も少なからずいた。しかし、大半の住民は残ったため、どうしてもその街を戦場にするわけにはいかず、リーゼベルツの腕の見せ所だった。





 そして、翌日、各国の進駐軍からリーゼベルツに対して、昨日出した調停に応じるかどうかの返事が返ってきて、各国ともに是という返事だったため、すぐさま調停、というか話し合いの場が設けられることになった。

「これで、4カ国ともそろったか」
 リーゼベルツ国王ディートリヒが気怠そうに言った。各国の代表たちは大半が面倒そうにこの場に来ていたので、彼としてはやる気が一気に減ったのだろう。
 各国の責任者は、それぞれグロサリア王国から今回の侵攻軍の総大将であるダリオ王子、スルグラン国から自称軍師だというヨセフ、『白き土蜘蛛』から頭領のイサクが来ており、セリチアの総大将としてなんとフィリップ王子とクロード王子の2人の参加だった。
 さすがのクロード王子も、今回は場を弁えているのかアリアに親しげに話しかけてくることはなく、フィリップ王子と共に彼女の存在に驚いてはいたものの、無言だった。
「では、これから調停の会議を始めることにしよう」
 ディートリヒ国王がそういうと、各国の責任者たちは真剣な面持ちでうなずいた。
「まず、今回の戦役の一番の発端はグロサリアのセリチアへの侵攻によるものだと聞いておるが、相違ないか」
 国王はグロサリアとセリチアの責任者へ尋ねた。セリチアの2人は憎悪のこもった眼で、ダリオを見ながら頷き、ダリオはそれがどうした、と言わんばかりの態度であった。
「まず、その侵攻はいかなる理由によるものだろうか」
 ディートリヒ国王は目を細めて、ダリオに尋ねた。国王もまた、彼の態度は気に食わないらしく、何かを投げつけてやりたいと思っているようにも取れた。

「グロサリアは海の資源が少なく、川の使用権もほとんど持っていない。加えてセリチア国内における他国の船の通行料が異様に高い。だから俺らは再三申し入れているはずだが、聞く耳を持たなかったお前らの父君が気に食わないんだよ。だから、セリチアの国王陛下殿に聞く態度をとってもらうために、一発殴るだけでもしてやらぁ、グロサリアこっちとしてはよかったんだ」

 ダリオの態度は悪いが、彼の言っていることは間違っていない。しかし、セリチアはその挑発行為を本気だと考えたようだし、挑発方法も間違っていた。だから、この戦が始まったのだ。

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