転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

11

11
「どういう事よ」
 マクシミリアンの言葉にアリアは驚いたものの、あまり動揺することはなかった。なぜなら、アリアにも以前に同じような光景を見たことがあるような気がしたからだ。
「王宮夜会でユリウス君から忠告されたんだ。僕の領地が戦争の温床になっている、と。だから近いうちに騎士団が動き出すかもしれないって」
 彼は目を伏せながらそう言った。その言葉にアリアは納得するとともに、いつの間にという思いが胸に燻った。そんなアリアの心の中の葛藤には、気づかないマクシミリアンはアリアの腕を離すと同時に、こぶしをきつく握った音が聞こえてきた。

「僕はもともとうちが公爵家であることを知りながらも、父と叔父の悪行を諫めないできた。そして、今でも昔からのつながりを絶つことはできないから、こうやってあの人たちの影響を受けざるを得ない。それを考えると、このやり方でよかったのかどうか、この数年間の僕は正しかったのか分からない」
 そう吐き出すように言ったマクシミリアンの言葉はアリアにも理解できた。否、未来の彼女自身も当てはまることだと思った。
 昔の自分・・はかなり我儘娘であり、他人にも迷惑をかけていた。そんな中、母、エレノアはよく我慢したのだろう、と今となってはしみじみと思う。さらに、領地のことは、今はエレノアに任せているものの、当主代行の地位を拝命してぶんどってしまった以上、これからはアリアがやっていかねばならない。特に王族の継承権を持ったことのある祖父が健在である以上、スフォルツァ領に反乱分子が集まらないとも限らない。損壊のような事件の起きる前に、領地の体制を一新し、スフォルツァ領を戦場いくさばとさせてはいけない。未来の自分を後悔させるわけにはいかない。
 だからこそ――――

「でも、今分かったからいいじゃないですか」
 アリアはマクシミリアンの手を握った。マクシミリアンは一瞬ビクっとなったが、すぐに顔を上げて、アリアの方を見た。
「どういう意味?」
「そのままの意味よ。今回あなたは『疑惑』をかけられた状態で、少し、いいえかなり痛い思いをしたと思う。でも、これがフェティダ領での反乱、リーゼベルツ全土が戦場化した場合、もしくは他国から侵攻されて壊滅状態に陥る前、あなたが痛み・・を知る人間だからこそ、どういう対処法をとるのが最善なのか、そしてそれを実行するのに人をまとめ上げる役割を果たすことが出来る。私はそう思う」
 アリアは自分が勝手に思ったことだが、少しでもプラスの方向に考えてほしいと、どんどん言った。もちろん、それがすべて正しいことだとは限らないと知っていた。アリアの言葉を聞いたマクシミリアンは、アリアの手を再びつかみ、彼の胸の方に持っていった。不意にそうしたので、アリアはベッドにつんのめった。
「ちょ、ちょっと」
 アリアは上目遣いでマクシミリアンを睨んだ。しかし、彼はひるまず、反対に笑った。
「ごめん」
 彼の無邪気な謝罪に、アリアは毒気を抜かれた。

「僕がもし公爵じゃなかったら、と結婚したいな。君みたいなお姫様・・・がそばにいてくれるなら何でもできそうだよ」

「え――――――」
 アリアはその言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。マクシミリアンは、
「気にしないで。何でもないよ」
 と緑色の瞳を細めながら笑い、
「さあ、もう休もう。あなたが倒れてしまっては元も子もないから、ね」
 と言って、今度こそ彼女の手を離した。
「そうね。また明日話しましょう」
 そう言って、アリアも今度こそマクシミリアンが休んでいる部屋を出たが、先ほど彼に言われた言葉を思い出し、彼に捕まれた腕が仄かに熱を帯びていることに気づいたが、それは気のせいだと自身を納得させた。


 王宮内某所、同時刻―――――
「どういうことだ」
 ディートリヒは夜分遅く訪れた宰相に向かってそう尋ねていた。宰相は得体のしれぬ笑みを浮かべつつ、
「そのままの意味ですよ」
 と、言った。
「しかし、何故秘書官たちを連れて行くべき・・なのか」
 ディートリヒは宰相から言われた言葉に不信感をあらわにしていた。通常、公務の随行員は国王自身が決める。それを覆す所業をこの宰相はしている。だが、宰相も食えない男である。笑みを浮かべたまま、
「それは陛下自身の御為・・を思ってですよ」
 と、宣った。ディートリヒは、その言葉の裏に隠された意味を探りつつも、結局は了承した。
 宰相が部屋を出て行った後、机に一枚の手紙を広げた。そこには、今スベルニアで行われるある極秘会談の『お誘い』があった。
「知っているか。今、お前の手中にあるのは法務・・だけだぞ」
 彼は、宰相が出て行った扉を見つめながらそう呟いた。

「では、こちらも動くとするか」
 彼は真新しい便箋を取り出し、2通手紙を書き、王家の花であるカザグルマの花が象られた封蝋で密封した。
「すまないが、頼む。くれぐれもジョルジュには気づかれるな・・・・・・
 今まで空気のように気配を消し、彼の背後に控えていたポールにその手紙を託し、そう忠告した。
「御意」
 ポールは一礼し、音を立てずに部屋を出た。

「転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く