転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

100話御礼SS

 俺からすれば『それ』は、可愛い弟だった。
 だが、運命は皮肉なことに、違う母親から生まれたことによって、俺らの仲は引き裂かれた。


 雪が降るある日に、俺とクロードは出会った。
「おにいしゃま」
 俺によく似た――――それは父親に似たともいうのだが―――その幼子は俺のことをそう呼んだ。ならば、それは間違いなく俺の弟に違いなかった。『彼』が生まれたのは同じ王都内であるので、頑張って隠さない限りはたとえ母親の住んでいる宮殿が違っていても知ってしまう。だから、俺は彼が生まれたことを知っていたし、いつかはこうやって出遭う事も知っていた。

 俺当時、すでに後継者として帝王学なるものを学んでいたものの、その幼子は無邪気に俺にまとわりつき、俺は彼が来るたびに勉学の時間を彼に提供していた。別段、それについては苦でもなかったし、可愛い弟のためならば、と思えた。しかし、俺は同時にいつか必ず別れる対立する時が来ることも知っていた。同じ母親でも殺し合いをしなければならないことがあるが、異なる母親の場合、それも立場が全く違う場合だとその可能性は高まる。
 俺の母親は隣国・リーゼベルツの公爵家出身なのだが、弟の母親は父親の又従姉だ。セリチアという国を想うのならば、他国の血は入っていない方が当然安心する。すなわち、俺の方が先に生まれてしまったがために、俺が王位に付けば隣国からの干渉が入ってくるのではないかと心配する奴らもいるのだ。
 一方、俺の母親の支援をする連中もいる。このセリチアにリーゼベルツの口出しを願う連中。セリチアの王子としては当然、それはいただけない。だから、俺は奴らの影響もまた、躱さねばならないと感じていた。


 そんな俺の葛藤を知らないのか、弟はずっと俺にくっついてきており、離れようとしなかった。そんな中、ある事件が起こった。
「クリス妃がお亡くなりになりました」
 父王の執務の手伝いをしていた俺は、母親の急逝を侍従によって知らされた。急いで、母親の居室に向かうと、母の亡骸とそれを検分している医官がいた。
「どういうことだ」
 つい今朝方までは元気だった母親。それがなぜ死ぬのか俺には理解できなかった。如何は部屋に入ってきた俺に気づき、近くに寄ってきて俺の耳にささやいた。
「フィリップ殿下、王妃殿下は毒を盛られました」
 その言葉に俺は一気に凍り付いた。
(そうか、ここは『王宮』だ―――――)
 弟と仲がいいのでつい忘れてしまうのだが、この王宮では決して気を緩めてはいけないのだ。
(これ以上、あの弟と仲良くしてはいけない――――)
 俺はそう決め、その日から弟に冷たく接することにした。そして、ある時は政策について激しく意見を交わしたり、またある時は武術で勝負を挑んだりした。そのため、周りからは『とうとう内紛勃発か』とか、『リーゼベルツが動き出したのか』などと騒がれるようになったが、俺にとってみれば、そんなのはどうでもよかった。もっとはっきり言えば、王位なんてどうでもよかった。だが、もし俺が王位に付いたら、誰にも俺の政策を邪魔させず、弟を宰相に据える。それまではつぶれるな、そう思い、俺はあいつに試練・・を与えた。幸い、あいつの親族はうるさかったものの、あいつ自身は王位を望むという野望は今のところ見えていないので、何とかできそうだった。
 結局、俺の母親の死の真相は不明だったが、俺はそれでもかまわないと思った。

 リーゼベルツ行きもそうだ。もちろん、あいつを手中に収める、という意味では確かに俺のいう事を聞かせるために、『駒』として動かした、という見方も取ることが出来る。しかし、実際のところ、俺としてはあいつにもっといろいろな国を見てきて欲しかったし、あいつには俺の汚い部分を見せたくなく、あいつがいない間に貴族どもを黙らせようと考えていたのだ。
 そうして、あいつはリーゼベルツに旅立った。出立の時、弟は父王に挨拶をした後、俺の方を見た。その時、あいつの顔に少し物寂しげな雰囲気を出していたが、俺らは対立・・しているのだ。駆け寄って、そして泣く、もしくは笑顔で見送ることのどちらもできなかった。
 その後、俺は改革を断行した。
 どんな貴族でも、俺とあいつの邪魔になるものはすべて排除し、俺とあいつにとって有益かつ、他国からも舐められないだけの有能なものしか残さなかった。
 そうして、あらかたの改革が終わった後、あいつを呼び戻し、ついでに向こうの王太子の異母妹だという王女をセリチアに呼んでみた。彼女の母親はかなりの烈女だったらしいので一回どんなお姫様なのだろうかと思ったのだ。
 あいつは帰国するなり、父王と俺への報告をし、再び行きたいとのたまった。当然俺は許可せず、『友人』への文通だけにとどめさせた。
 一方、呼び寄せた王女の方は綺麗であり、そこそこ・・・・賢い。しかし、この国の実情からすると、彼女を娶ることはない、そうはっきりと告げ、丁寧に帰国させた。

 それから先は、弟と手を取り合って生きることにした。
 少し経った後、リーゼベルツの狩りの大会にあいつと共に呼ばれた。あの国の国王や王太子とは初対面だが、王女を返してしまっている以上、こちらに非がある。行かないわけにはいかなかった。会場で王族たちに挨拶をしたときに、外交官時代に知り合った令嬢になれなれしく声をかけた弟を引きはがさなければならない、という一幕もあったが、狩りの会は大方楽しかった。
 どうやら、最後に何か事件が起こったらしく、バタバタしていたものの、無事に狩り会は終わり、帰国した(ちなみに、あいつは件の令嬢に会えなかった、とかでひどく落ち込んでいた)。



 今は、グロサリア王国との戦いの真っただ中だ。だが、この戦いが終われば、スベルニアの皇女を娶るつもりだ。リーゼベルツの王女は賢かったが、彼女はどうなんだろう。俺はまだ見ぬ、花嫁に会うのが非常に楽しみ・・・だ。

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