転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 アリアは大きく息を吸い、ゆっくりとしゃべり始めた。
「まず、今回軍務相と内務相がフェティダ公爵を捕縛された理由ですが、グロサリア王国への内通とおっしゃっておられましたが、どこからその根拠は出てきているのでしょうか」
 アリアは首を嗅げた。
「もちろん、あなた方はしかるべき・・・・・証拠としてこちらの書類をここにいる関係者の皆様方に渡しております」
 と言い、数枚の紙束を上に掲げた。
「しかし、これらの証拠・・は証拠として本当に役に立つものなのでしょうか」
 そう問いかけると、軍務相も内務相も共に顔を真っ赤にし、
「ふざけるな」
「証拠書類として有効だと言っている」
 と言いつのった。アリアは心の中だけで嘆息し、隣にいた王立騎士にそれを手渡した。手渡す瞬間、内務相はそれを奪い返そうとしたが、彼の意を受けた武官たちが奪う前に彼が受け取り、中身をざっと見た。
「王立騎士団としては、これは完全な証拠書類と言えますでしょうか」
 横眼だけでアランを見ながら、そう問いかけた。アランは少し考えるふりをしながら、
「いやぁ、無理でしょうね」
 と鼻で笑った。
「作った方、おそらくヤン軍務相殿であると思いますが、あなたは本当に文官なんですか?これ、僕がまだ王立騎士団に仕官していなかったときの作文ですよ」
 アランは子供の無邪気さを利用して軍務相に問いかけたが、彼の目はいたって本気だった。
「しかも、出典元が書いていない、おまけに証人も王都に住む貴族だけ・・ですか。先ほどのあなたの言葉をそのままお返ししましょう、『ふざけていますね』」
 アランの言葉は相当鋭く、軍務相以外もだんだんと顔色が悪くなっていった。しかし、例外がいた。
「ふん。そこの騎士団の小童こわっぱがバルティア家の嫡男であるのは知っておる。さすがだとしか、言いようがない。しかし、お前は何者だ。たかだか平の文官ごときがこの裁判の証拠をケチつけるとは何様のつもりだ」
 そう、内務相を除いて。その言葉を聞き、先ほどまでの態度とは異なり、ああ、確かになどと賛同していたものもいた。
 そんなグレイヴ内務相を見て、アリアは笑った。
「ありがとうございます。もう一つご指摘しようとしていたので、それを申請する手間が省けました」
 アリアはにっこりと笑った。中性的な笑みに周りの貴族おっさんたちはギョッとしたことに気づき、アランもまた釣られて笑ってしまった。
「通常の裁判では法務主導で行われ、判決には国王の御璽がどうしても必要であるので、必ず国王の知るところとなります。また、この枢密裁判においても、国王本人、国王の最側近と呼ばれる国王侍従もしくは王立騎士団長のいずれかの出席が義務付けられているのをご存じで?」
 アリアはまだばれないようにと、低めの声を出すようにしてグレイヴ内務相に尋ねた。
「――――」
 彼は答えなかったものの、彼の顔色を見ただけでその答えはわかった。
「そうでしたか。まあ、時には例外・・というものもありますし、それはひとまず置いておきましょう。



 では、当代の爵位持ち、特に公爵家当主を捕縛する際、また、彼のものを裁く場合は必ず事前の国王の承認以外に、5公爵以上の当主・・の承認と裁判への出席が必要ですよね?」

 アリアの言葉に、一部の人間以外のその場にいた全員が息をのんだ。どうやら、自分と関係ない事情は別に知る必要ないと思っているらしい。
「ええ、そうなんですよ。まあ、これは法務所属であるなら、そして各部署の長であるのなら、知っているはずなんですよ」
 と言いつつ、首をかしげた。二人をはじめ、四分の一くらいの貴族たちが青ざめた。
「昔から、公爵家当主だけはどうしてもこの王宮の勢力関係上の都合や他国へ影響を及ぼす影響のためか、そういう決まりがあるんですよね」
 アリアは議場を見回しながらそう言った。ごく少数ではあるものの、クレメンスや一部の文官たちは知っていたらしく、頷いていた。

「で、実際ここにいる人間の中でその資格を持つのは、捕縛されたマクシミリアン様をのぞいたら、一人だけですね」

 彼女はにっこりして、この議場に入るときには着けていた鬘をとった。
 今日一部以外に気づかれなかったのは、おそらくこの黒い鬘が気づかれない原因の半分ぐらい占めるだろう、と思った。さすがに、この世界にはカラコンなんていう代物はなかったので、変装道具として用意できなく、早々に目の色を変更することは諦めていた。
 茶色い髪があらわになったことで、大半の貴族たちはまさか、と呟いていた。議場の隅の方で、クレメンスは嘘だろう、と呆れていた。ちなみに、グレイヴもまた、アリアの正体に気づき、
「お前はまさか、あのフレデリカ毒婦の姪」
 と言った。アリアは名称はともかく、その覚え方にいら立ち、
「アリア・スフォルツァよ。あの女と一緒くたに覚えないでほしいですね」
 と、冷ややかに言った。やや間があって、グレイヴは、
「そうか。だが、スフォルツァ家は王立騎士団のユリウス・スフォルツァが当主だろう。お前はスフォルツァ家の当主の姉であり、単にスフォルツァ家の人間という肩書でしかないはずだ」
 と言った。先ほど、まさか、と呟いていた貴族も半分くらいはその疑問はあったようで、グレイヴに同調する者もいた。しかし、そこは当然すかさず、
「ここに、国王陛下からの親書があります」
 と言って、昨日もぎ取ってきた頂戴してきた『当主代行』の証拠を提出した。それを見たグレイヴは、
「――――――嘘だろう」
 と呟いていた。

「まあ、これでも、私一人であるので、この枢密裁判自体成り立ちませんよね。この場で行われていたのはただの私刑リンチですよ」
 そうアリアが言いきった瞬間、顔が俯いた貴族が何人もいた。

「それに、私は現在国王陛下の隣に侍る秘書官としており、秘書官は3人います。秘書官の仕事内容として、国王陛下に通される法案、議案、裁判関連、諸人事の承認などあなた方から上がってくる事案について吟味し、私たちで対処できるものは対処し、どうしても陛下の許可を得なければならないことは奏上します。もしかして、全部が全部把握していないと思っているのですか?」
 アリアは彼らに呆れていた。

「国王陛下にじかに奏上することは、確かに禁止はされていませんが、奏上する場合であっても、秘書官の同席は義務です。ですので、私たちの誰もが知らない、という事はありえないのですよ、グレイヴ内務相」
 と、言外に国王の承認ないだろう、と先ほどいったん捨て置いた話を振ってやったら、彼の顔は真っ青を通り越して、紙のように白くなっていた。

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