転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 マクシミリアンの『裁判』は軍務相ヤンと内務相グレイヴの2人が主導して行うようだった。おそらく軍務に所属する文官に引き連れられてやってきたマクシミリアンは、捕縛されてほとんど日数もたっていなかったものの、獄中でどんな扱いを受けたのか想像がつかないほど、やつれていた。
 これは、形式的には『裁判』ではあるのだが、この裁判というのは、ウィリアムが裁判前に言っていた通り、弁護側が『形式的』であるというのが、アリアでも露骨に分かった。
 なぜなら、検察側の役割を果たすのは二人のトップであり、弁護側が新人同然のウィリアムだけであり、彼についても上からの命令だろう、全く弁護する、という思いが伝わってこない。
 この裁判におけるマクシミリアンの罪状は、彼自身が商人に情報を漏らし、グロサリア王国と勝手に同盟を結び王国に反乱を起こそうとしていた、というのが大前提になっていたのだ。実際に領地に行ったことがあり、彼を知っているアリアからしてみればふざけるなという話であったが、ヤン軍務相とグレイヴ内務相はあくまでも彼らなりの『証拠』に基づいてこの裁判を行っているので、アリアは横槍を入れることはできなかった。
 しかし、裁判において、ヤン軍務相とグレイヴ内務相が示した証拠について、ある一点についてはアリアも否定したいことがあり、反論するそのすきを虎視眈々と狙っていた。

 やがて、『裁判』は終盤に迫った。
「では、反論のある者はおりませんな」
 でっぷりと太り、目はぎょろついている、いかにも悪役が合いそうな男―――ヤン軍務相は、確定事項検察側の証拠形式上の要素弁護側の弁論を終えた議場でそう宣言した。アリアは、
(何が『反論のある者はいませんか』ですか)
 と内心思っていたが、表情には全く出さずに自分が座っている席より前の方、議場の中央に進み出始めた。
「では、マクシミリアン・フェティダ公爵は――――」
 そうヤン軍務相が宣言したところで、アリアはとうとう前に出て、


「「お待ちください」」

 そう言った。
 しかし、それを言ったのは、アリアだけではなく、もう一人いた。

 そのもう一人は、秘密の法廷枢密裁判が行われている部屋の外から来ているみたいで、後ろには屈強な男たちを数人引き連れていた。

「何者だ」
 グレイヴ内務相の見た目はかなり良いのだが、いかんせん着ているものは趣味が悪すぎる。かなり成金趣味がある様だった。彼がそう言うと、二人の秘書官が視線だけで議場内にいた武官をアリアとその乱入者を取り押さえようとした。しかし、その乱入者が一歩早くアリアの方までくると、
「僕は捕縛してもらって構いませんが、この方を捕縛されると、後からあなた方が大変な目に遭いますよ」
 と腕をつかみながら、そう言い放った。すると、抑えにかかった武官たちは一瞬怯んだが、すぐさま、
「何をしておるのだ、早く捕まえろ」
 と、ヤン軍務相の怒声が鳴り響いた。しかし、武官たちが動くよりも早く赤毛の乱入者―――アラン・バルティアはにこやかに、
「あなたたちにはどうやら、軍務規律違反で内々の処分を決める以上に、通常裁判もしくは王室裁判・・・・で裁かれなければならないようですね」
 と言った。すると、流石の軍務相や内務相も顔色を変えた。
「どういうことだ」
 こちらに剣を向けている武官のうち、リーダー格の男がそう言った。どうやら彼も、アランを少し見下しているみたいだった。
 アランは聞かれたことに嬉しそうに、
「まず、僕たちの紹介を行います。僕はご存知の方もいるかもしれませんが、王立騎士団でコクーン騎士団長の推薦により第3副隊長を勤めておりますアラン・バルティアと申します。お見知りおきを」
 彼は軽やかに一礼をした。すでに議場はアラン達の乱入による驚きと困惑の渦に包まれており、その一礼になぜか拍手する者までもいた。

「で、なんで僕たちがここに来たかというと、陛下・・からこの議場でどうやら面白いことをするみたいだから、見学しておいでって言ってくださったんですよね。で、陛下も見学されたかったらしいんですけれど、ご公務の方でお忙しそうで、秘書官と一緒に行っておいでって言われちゃったんですよね」
 彼はまるで道化師のように飄々と言ってのけた。彼の正体を知っているアリアにとってみれば、演技だろうと予想はさすがについたものの、その場で焦っている貴族たちは、どうやらそれが読み取れなかったみたいだ。顔が真っ青になっていた。
「外からしばらく聞かせてもらったんですけれど、なかなか面白い状態なんですよね、ポール秘書官?」
 アランはまだ扉の方にいたポールに尋ねた。ポールは苦笑いをしながらも、頷き、
「ここまで不完全・・・な裁判を初めて拝見させていただきました」
 と、裁判長の役割を果たしているヤン軍務相にお辞儀をした。ある意味滑稽な会話をしている二人に対し、ヤン軍務相はものすごく苦虫をつぶしたような顔をしていた。
「まあ、いろいろ言いたいことは山ほどありますが、それは後程別室で伺いましょう。
 それよりも、もう一人喋りたい方がいらっしゃるようなので、その方にこの場をお譲りいたします」
 と言って、アリアの方を向き、頭を下げた。どうやらここでは、ポールから『同僚』としてではなく、『公爵家の人間』として扱われているようであった。

 指名されたものの、アリアは困った。一歩踏み出してヤン軍務相とグレイヴ内務相を糾弾したいのに、その足が動かないのだ。そんなアリアに気づいたのか、隣にいたアランはアリアの頭をそっと撫でた。彼の方を見ると、大丈夫と目だけで言っていたので、再び二人の首謀者の方に向かった。
 そして、口を開いた。

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