転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 煌びやかな世界。
 会場を彩る花や光は全て王宮の侍女が設置したのだろう、と思う。ここまで彩るのに、どれだけ時間や苦労がかかるのか想像が出来なく、彼女たちには頭が下がった。
 そして、数年ぶりに王宮夜会に出てきた自分・・に群がる同じ年頃の少女たち。
 しかし、その中に自分が踊りたいと思っている少女はいなかった。

 しばらく壁際に立っていると、以前領の館へ彼の姉に連れられてやってきた少年がやってくるのが見えた。
「お久しぶりです、フェティダ公爵」
 自分と同じ公爵とはいえども、近年再びその地位を確立しつつあるスフォルツァ家の当主は、自分に対して何のためらいもなく頭を下げた。
「久しぶりだね、ユリウス君」
「先日姉がそちらへ伺ったと聞きまして、その時はお世話になりました」
 彼はどうやら年末に彼女がフェティダ領うちへ訪れた時の話をしに来たみたいだった。自分はそのときの事を思い出しつつ、
「いや、構わないさ。どうやら彼女は僕たち・・よりもいろいろなものを知りたがっているみたいだから、僕はそれの手助けをしたいだけだよ」
 言ってから少し皮肉すぎたかな、とは思ったが、スフォルツァ公爵は全くです、と神妙に頷いていた。彼にも彼の思うところがあるみたいだ。そんな彼をほほえましく思っていると、失礼します、と言い、彼の左隣に並んで立った。そして、彼はそういえば、とある話題をふってきた。

「グロサリア王国とセリチアの間に不穏な噂があることをフェティダ公爵はご存知でしょうか」

 その言葉に一瞬自分は、瞬くことを忘れた。グロサリア王国―――それは、この数十年の間、現王とその父親の二代で急成長した軍事国家であり、この周辺国家では最強の軍隊をもつと言われている国である。自分は領地に引きこもっている間にそんな事態が起こっていたとは露知らなかった。彼は自分の表情だけで、自分が知らなかったことを悟り、やはり知らなかったのですか、と言った。諜報員でも放っておけばよかったと後悔したが、若きスフォルツァ公爵がもたらした内容はそれだけではなかった。

「おそらく、あなたのお父上と叔父殿がこの一件にはかかわっていますよ」

 父と叔父は数年前に起こった事件で引退を余儀なくされている。しかし、その父親の時代に付き合いのあった貴族や商人たちはフェティダ領を訪れて自分に会っている。もちろん、自分の屋敷にいるときは同行を知っているものの、フェティダ領内での同行は把握していなかった。

 する必要がないと思っていた。

「ま、さか―――」
 自分からここまで乾いた声が出てくるとは思っていなかった。自分の領地の特徴として挙げられる『牧歌的』という言葉に申し訳ないくらいお粗末な話だと思った。
「ええ、そうだとおもいます。出入りの商人や貴族たちでしょうね」
 彼は果実水を飲みつつそう答えた。そして果実水を飲み切ると壁から背中を離し、ホール中央の方へ向かった。

「おそらく、近日中に王立騎士団・・・・・法務相・・・が動き始めると思います。そうなってしまった以上、スフォルツァ家は中立の立場をとらねばなりません」
 彼は三歩進んだところで背中越しにそう言い、
「では」
 と、振り向いて一礼して去って行った。


「すぐに戻らねばな」
 若きスフォルツァ公爵の言う通りならば、早急に対処すべきである。そう考えたら、いてもたってもいられず、何も考えることなく王宮を辞して、フェティダ領へ戻る馬車に乗った。そのころには、すでにあの少女のことはあきらめがついていた。

(どうあがいたって無理だろう、な)







「君はあちらへ行って来なくていいのかい?」
「ええ、3曲目と4曲目に王太子殿下とバルティア家公爵子息にダンスの相手を申し込まれているので、後ほど伺います」
 アリアは現在の職場である国王秘書官の同僚にそう答えた。アリアたちがいる位置は、広間をざっと見渡せる位置で、本来ならばアリアも秘書官の仕事があったものの、国王の鶴の一声により『スフォルツァ公爵令嬢』として出席していた。
 この国の夜会におけるマナーとして、本来エスコートした(された)異性と1曲目を踊り、2曲目以降は自由に踊るというものがある。また、基本的に立場の上の者から順に踊る、という暗黙の了解もある。そして、この夜会はデビュタントの夜会なので、夜会が始まってからの1曲目はデビュタントした若者たちとそのエスコート役の踊りであり、2曲目以降にしか成人貴族たちは踊らない。よって、この夜会においてデビュタント時以降、初めてエスコート役をお願いしたクレメンスと踊り、それ以降の曲は壁の花になるつもり満々だったが、どうもそうしてくれないのが2人おり、仕方なく踊ることにしたのだった。
「そうかい」
 そういうと、同僚は何やら慌ててアリアの側を離れた。何事か起こったのか気になり、視線だけで追ったものの、何も起こっていない。どうしたものかと思い、内心首をかしげていると、隣に予想もしない人物がやって来た。

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