転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 現場には、先ほど助けを呼んだ男が立っており、負傷しているアランとセルドアはどちらも意識がないようだった。
 負傷したアランとセルドアを目の前にして、不覚にもアリアは立ち止まってしまった。
「なんで」
 そう呟いたが、緊急事態いまは変わらない。アリアは深呼吸一つして、二人の怪我状態を探るために、近づいてみると、どうやらアランの方はかすり傷だ。セルドアがかばったのだろうか、彼の方がアランの上になるように倒れており、出血量もひどいような気がした。先にセルドアの止血をすることにした。

「…アリアさん、です、よね」
 医者でないアリアは一時的な手当てしかできないが、ほんの少しのだけでも、と思い止血していると、彼女の存在に気づいたのか、セルドアが彼女の手をつかんだ。
「はい」
 彼女は力強く頷き、もう少しです、と彼に声をかけた。しかし、彼は、
「ここは、危ないです、よ」
 と途切れ途切れだったが、そう言った。その言葉に、アリアは一瞬訳が分からない顔をしてしまった。
「どういう、ことです、か?」
 そう、彼女が問うと、セルドアは彼女の頭を引き寄せた。彼女はセルドアの行為に驚きつつも、彼の言葉をじっと待った。
「…おそらく、まだ、この付近に、います」
 彼は短い文章を話すのがやっとなのだろう、それ以上の言葉はなかった。セルドアは『何が』とかそれに続く言葉を言わなかったが、アリアはなんとなく察した。
『おそらくまだこの付近に、自分たちを狙った犯人がいる』
 たぶん、彼はこう伝えたかったのだろう。アリアはそれを聞いて覚悟を決めた。

 セルドアの止血を急ぎ、続いてアランの手当てをしていたが、背後に何か鋭いものを突き付けられている、という事をその瞬間まで彼女は気づかなかった。
「動くな」
 彼女を脅した誰か――少なくとも男――は、アリアにその体勢でいることを命じた。
「しゃしゃり出るからこうなるんだ」
 まるで、彼女のこと知っている誰かは、憐れむような声でそう言った。
「俺はお前・・のせいで王宮を出る羽目になった。お前のことをどうしても殺しておきたかった。だから、手っ取り早くこの狩り会に乗じて、乗り込んだ。偶然俺と遭ったこいつらは、お前のところに案内させよう、と思ったが、断固として首を縦に振らなかったよ。もっとも騎士団長の方はバルティアの息子をかばったせいで自滅した、と言った方がいいと思うが」
 そういうと、男はのどをククっと鳴らして笑った。
(ふざけんな)
 アリアは男の言い草にかみつこうかと思ったが、身体が震えてうまく動けない。
(しかし、が王宮から追放した人間?)
 男の言葉が気になった。この数年の間に確かに、王宮内は一掃されたと思うが、アリアが直接かかわっているのは片手で数人ほどしかいないはずだ。アリアが無言になったのが、己に有利だと勘違いした男は、
「ああ、しばらく国王様の手下どもも来ない、と思うよ。俺の部下を数人向かわせたから」
 と笑いながら言った。
「保険もかけておいて、正解だったと思う。何せ、天幕においてもらった予備・・の槍とか弓矢がなくなっていたから、ね」
 と、言って彼女の背中の右側に突き立てている何かに力を加えた。何かが突き刺さる痛みが生じ、何かが流れていく感覚が生じた。そして、どうやら、例の不審な槍や弓などをアリアが片づけたのがばれていたみたいだった。しかし、ここまで言われても、そしてここまでされても、彼の挑発には乗らなかった。むしろ乗せられる気がしなかった。
 背中に感じる痛みよって掠れ行く意識の中、ようやく国王の配下の騎士たちがやってくる声が聞こえた。
「チッ、もう来たのか。でも、お前の命さえ俺は奪えればいい」
 そう言って、男は彼女のそばを去って行った。
 近くで剣戟の音が聞こえたが、アリアにはもう体を起こす気力はなかった。アランの側に倒れこみ、そのまま意識を失った。

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