転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「なるほど、それは――――」
 アリアは二人から聞いた話を踏まえて、今回の流れを改めて考えてみた。
 どうやら宰相をはじめとする国王派・・・は、『戦は起こっていないものの、今後の情勢の変化を考えてセルドア・コクーン騎士団長を南方の砦に送る』つもりらしい。それはどうやら主であるはずの国王やら他の派閥の重鎮は通さずに、先のクーデターをほぼ瞬時に鎮圧した彼に恐れを抱き、飛ばすことを決めたらしい。
「僕の事ならお気になさらずに」
 セルドアはにっこりと笑った。その笑顔にアリアは今すぐ文句を言ってやりたい。
(いや、たとえあなたが気になさらなくても、こちらは気にします)
 というか、その笑顔がまぶしすぎて、申し訳ない。一応、身内・・のしでかしたことに端を発するこの左遷劇は本当に申し訳ない、と思う。しかし、セルドアが言った一言で、アリアは固まった。
「ですが、もちろん貴女のためならばいつでもこの地位は捨てることはできますので、ご安心してください」
「え―――?」
 確かに、こないだアランとはそんな話をしたように、こちらとしては様々な方面に優れた人が欲しいのはやまやまだ―――いや、それ以前に何故そんなことを彼が言い出すのかが、分からなかった。しかも、その彼は目の前にいるのは、アリアだけではないことも気付いているが、その人物も彼を止めなかった。むしろ頷いている。
「はい?」
 アリアは昔見ていた某刑事ドラマの主人公になった気分だった。人間というのは、理解できる部分を超えると、そんな声を出してしまうみたいだ。

「そのままですよ。貴女には僕たち兄妹と甥だけではなく、いろいろな人を守っています。だから、僕やクレメンスは貴女に対してかなり大きな恩を感じています。しかし、現国王をはじめとして、国王派の貴族には何も守ってもらっていません。だから、貴女がもし何か大きなことをするとき、僕は身分や大した教養はありませんが、貴女を守れる『力』だけはあります。
 だから、もし、貴女がこの国を変えていく、というのならば、僕は貴女に従います」
 セルドアは強い言葉でそう言った。
「僕もそうだ。『アリア・スフォルツァ公爵令嬢』が何かをするというのならば、僕も貴女に従う。これがこの数年君を見てきた答えだ」
 クレメンスもまた、アリアの目をしっかり見てそう言った。思わぬ二人からの言葉に、アリアは驚き、目を見開いた。
「今は内務相補佐、という役割についているが、あくまでも内部の情報を探るためにその地位に身をやつしているだけだ」
「まあ、内務相自身も結構厄介な方なんだけれどね」
 クレメンスの言葉に、セルドアがそうぼやいた。そう言ったセルドアを一睨みしたが、丁寧にクレメンスは解説を加えた。
「かなり大雑把に言うと、内務相は現国王を認めていない」
「国王を認めていない、ですか」
「ああ。ジェラルド殿下・・派、というところか」
 クレメンスのその一言で分かってしまった。

 反国王派―――それが意味するものを。

 クレメンスの講義の中で出てきたのかもしれなかったが、今までは単純に『反国王派=王政反対派』という意味だと勝手な想像をしていたが、『ジェラルド殿下』――正確に言うならば『ジェラルド元殿下(もしくは閣下)』というべきだろうか――――を主として認識しているのならば、話は違ってくる。
 そもそもそんな派閥が何故出来上がったかというと、アリアから見て、母方の祖父であるジェラルドの存在からだった。彼は、先々代国王であるフリッツ国王の長男である。しかし、彼の国王にはたくさんの愛妾がおり、王妃との子供を含めて認知されている子供は15人。しかし、死ぬ間際まで女遊びが激しかった彼の手がついていない侍女はいなかった、と言われるほどの人物だったので、それ以上の可能性もある。
 ただ、無事に育ち切ったのは5人。さらに、その中でも後継者候補・・と言われたのは3人。女性が王位に就くこともできるこの国であるため、それぞれ愛妾の娘と息子である第1子である長女のマリア=アンネは早くから政治的な才覚を見出しており、また、第3子のハインツは武芸に秀で、何より野心家でもあった。その間に挟まれた正妃の息子である第2子ジェラルドは凡庸とはいかないが、姉と弟に比べれば見劣りする存在であった。しかし、父が急死後、最も国王としての父を慕っていた姉のマリア=アンネがその後を追うように死ぬと、貴族の間では兄弟間の争いが起こるのかと思えたくらい宮廷内で不穏な雰囲気が漂っていた。
 しかし、ジェラルドは姉の葬儀後すぐに、当時婚約していた女性と破局し、あまり利益にならないような令嬢と結婚、王位継承権を破棄した。そのため、血で血を洗う様な内紛は起こらなかったものの、国内の情勢を憂慮した、ジェラルドの方を慕い、ハインツ国王に心から忠誠を誓わないものもいる。ジェラルド派の勢いをそぐと考えていたハインツ国王と、王家の血を取り入れたかった当時のスフォルツァ公爵(マグナムの父)によって、エレノアはスフォルツァ家に来ることになり、アリアとリリスが生まれている。ジェラルドの子供はただエレノア一人であるため、ハインツ国王の思惑は成功したかのように見えたが、これにはまださらにその裏の目的があるのをまだ、アリアは知らなかった。

「なるほど。しかし、今の代である母や私に従う事はないのでは?」
 アリアは微笑んだ。
「そうだな。そのためにあの方は厄介だと言っている」
 クレメンスはそれを肯定した。
「だが、俺も大半の情報を取り扱う部署だ。だから、何かあったら頼れ」

 こうして、二人の協力者を得ることになり、この約束が今後の彼女の人生にも大きく関わっていくこととなった。

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