転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「君があの提案に乗ってくれるとは思わなかったよ」
 目の前の赤毛の騎士はそう笑った。
「あら、そうなの」
 アリアは自分の茶色の髪をもてあそびながらそう言った。
「反対に私は、あなたが忘れずにいてくれたことの方が驚きだったわね」
 アリアは園遊会の後、数日間悩んだ。もちろん国王の意向なのであるから、自分たちは逆らうことは基本的に不可能だ。しかし、この状況をそのままにしておいてよいのか、とも思う。
 もし、何かしらの変化を求める場合、自分ひとりの力では足りない。
 足りないものは何か。
 そこまで考えた時、初めに思い付いたのは赤毛の騎士だった。彼は自分と同じ転生者であり、同じ公爵家、そして何より、現状・・を何とか変えたい者でもあった。一方、『一緒に変えよう』と言ったのはずいぶん前の事だったので、それを彼が忘れている、と言いう心配もあったのだが、どうやら忘れていなかったらしい。園遊会の後、休暇を珍しく自発的に申請したアリアは、一人でアランの家、すなわちバルティア家を訪れたのだ。
 最初、突然きたアリアに驚きつつも、アランはすぐに内容を悟ったのか、家の中へ招き入れてくれた。
「そう言ってくれると光栄。しかし、この計画は当然僕たち二人だけでは成し遂げることはできないし、時勢にも成功するかどうかが左右される」
 前世は某有名議員の秘書の息子だったというアランは、なんとなくではあるものの、この国の状況が見えていたらしい。なので、この国の現状が変わってきた状況に、ひどく落ち着き払っていた。
「ええ、そうね」
 アリアは確かに、と肯定した。もし、二人の頭脳がこの安定した国をひっくり返せるようなものであるのならば、今すぐには可能だ。しかし、実際にはそんな頭脳は持ち合わせていない。よって、二人だけでなしえられる革命などない。きちんとそれは理解していた。
 アリアとアランは一時間余り様々なことを話し合ったが、『現段階』では大きな構想しか出てきていない。というより、その構想でとどめておいた。なぜなら、いくらアリアやアランといった、次の世代の王国を支えるものの方が、今の現国王の下と比較して苦労を交わされようとも、現段階における王国内における政策についてはまとも・・・なのだ。なので、今の状況ではただ『子供の戯言』で済まされてしまい、まともに取り合ってもらえない。そういうところを危惧したため、この話はこの場だけ、しかもまともに内容を知るのはアリアとアランだけ、という状態にしておいた。

 アリアは王宮の自室へ戻ると、普段書き物用に使っている机の上に封書が乗っているのに気付いた。宛名は『アリア・スフォルツァ公爵令嬢』、差出人はクレメンス・ディート伯爵。通常、奥宮に勤める女官が差し出したり、受け取ったりする手紙は謀反や事件引き起こす危険性があるために、『表』によって検閲されるが、今回アリアに差し出された手紙は封蝋が開封されていないため、検閲されていないみたいだった。どうやったら、ここまで検閲なしに届けられるのか今度会った時に、差出人クレメンスに聞いてみたい、とアリアは思った。
(今度は何の用かしら)
 アリアは中身を取り出してみて読んでみると、そこにはリリスの婚姻の日時が決まり、具体的な婚礼までの手順や作法などが書かれていた。
(なぜ、彼から聞くことになるのだろうか)
 通常の作法と違う事に一抹の不安を感じながら、誰にも見られるわけにはいかないので、その封筒を部屋の明かりに使われている燭台で燃やした。


 数日後、彼の手紙に書かれていた事実が『表』から発表され、アリアもそれを公式的・・・に聞かされることとなった。現宰相であるジュリオ・ロレンツォが国王代理として奥宮まで来て、アリア、リリス共にそれを聞かされた。しかし、先日クレメンスから来た手紙の内容とは少し違っていた。彼の手紙では、相手国では次の月以降だと雨期に入るため、雨期が終わる秋以降に婚礼が行われる、と書かれており、その前には相手から使者が王都までリリスを迎えに来る、という手順だった。しかし、今回発表されたのは、時期は同じだ。しかし、相手国の使者がこちらまでくるのではなく、騎士団長をはじめとする王立騎士団の一個隊がリリスを皇国の皇都まで送っていく、というものだった。そのほんの些細な違いがアリアには引っかかった。
 おそらく、その引っ掛かりを作った根本的な要因は、自分小娘がしゃしゃり出る場面ではない『表』政治の話だろう。しかし、『クレメンス・ディート』という人間サポートキャラから情報を聞いてしまっている悪役令嬢・・・・のアリアは、どうしても干渉せずにはいられない。せめて、その話を具体的に聞くべきだと思った。
 自室に戻ったアリアは、どうすればクレメンスと噂にならずに会えるのか、少し考えたが、一つしか方法は思いつかなかった。


 翌々日、再び休暇をもらったアリアは、今度は実家に戻っていた。彼女が家にたどり着いた時、娘息子の3人ともが王宮に仕官していて、ほとんど母親しかいない落ち着いた家のはずなのに、何故か全体的に華やいでいるように感じられた。
「おかえり。貴女に客人が来ているわよ」
 出迎えたエレノアがそう言った。アリアは覚悟を決めて、客人が待っているという部屋に向かった。そこには、二人の人影があり、一人は呼び出したクレメンス、そしてもう一人はこの話の当事者であるセルドア・コクーン卿だった。

「よく気づいたね。さすがは公爵代理であり、僕の教え子」
 クレメンスはニヤリと笑った。

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