転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 結局アリアの熱が下がったのが、当日の朝だったため、流石に欠席という事態は見送られたが、同じ公爵令嬢であるアーニャの付き添いは必須となり、出席はダンス前半のみ、一曲踊ったら中座する、という措置をとることにした。

 が――――
「あの大捕り物も結局は偽善だったのか。やはり本性を現して、王太子殿下に捨てられたのだな」
 という王太子との婚約に関わる発言や、この会の冒頭で公表された妹リリスと西の大国との婚約についてもささやかれ、
「国の有益になるのならば、多少・・行き遅れになるかもしれないが、姉を残しておくべきだ」
 という肯定的な意見から、
「行動的過ぎる姉よりもお淑やかな妹の方を選んだのだろう」
 と少し的外れな意見もあった。ちなみに、リリスの評判としては今までがあの状態・・・・であったのにもかかわらず、そこそこよく、どこで情報操作が行われたのだろう、と思えるくらいだった(ちなみに、『お淑やかな』というイメージを作ったのはほかならぬ王妃だったらしい、と後々知ったアリアだった)。

 宴も半ばに差し掛かり、そろそろアリアは中座しようとして、アーニャを探しに行こうとしたところで、急きょ国王から臨時の発表がある、と宣言され、その場にいる貴族たち全員の意識がそちらに向かい、アリア自身もアーニャを探すのをやめてしまったくらいその宣言には驚いた。
「いつもはあまり大々的には発表しないが、いつもならば貴族のみに限っていた登用試験を、数名の採用にとどめるものの、今年から平民にも適用させた」
 国王の報告にほとんどの貴族は驚いていた。一方で、全く驚かない貴族もちらほらいたことを察するに、それらの貴族はその採用、とやらに関わっていたのだろう、と思った。
「そして、今回3人の未来ある子息がこの試験に合格した」
 と言って端っこにいる(と思しき)少年たちを手招きした。
「まずは、リカルド・ミレーネ。財庁に入ってもらう」
 茶髪の彼は、国王直々に紹介され、少し照れながらも頭を下げた。
「そして、ミカエル・オイデレン。同じく財庁に入ってもらう」
 隣にいた黒髪の少年も同じように頭を下げた。そしてもう一人、視線を横にずらすと、そこには灰色の髪をした少年がいた。
「そして、最後の一人。ウィリアム・ギガンティア、法務庁に入ってもらう」
 その言葉に、ウィリアムは誇らしげにお辞儀をした。彼らの登場による貴族ギャラリーの反応は様々だった。歓迎の拍手を送っている貴族もいれば、そうではない貴族もいた。そして、再び彼らに視線を戻すと、何故かウィリアムの眼がアリアに向けられている気がして、思わずそむけてしまったアリアだった。
「アリアさん、そろそろ戻りましょう」
 顔をそむけた先にはそもそも探していたアーニャがいて、アリアに戻るよう言い、もうすでにアリアも戻る気満々であったので、素直に頷き、そっと会場を抜け出し、侍女部屋に戻った。
「今日は災難だったわね」
 部屋に戻り、アリアの就寝の手伝いをしているときに、アーニャはぼやいていた。
「どういう意味ですか」
 アリアには心当たりはあったものの、自分自身が思っていることと他人が思っていることが違う可能性もあったので、尋ねてみた。
「今日の会場でのあなたの話よ。聞こえていなかったわけではないよね」
「もしかして、王太子殿下とリリスの事ですか」
「ええ、そうよ。あの人たちはアリアの頑張りを知らないのね」
 アーニャはアリア自身よりもその手の話に怒っていたみたいだった。
「そうですね」
 アリアは自分の活躍・・は、『前世』の知識があってできたものであると割り切っていたので、それらに対する誹謗中傷は苦笑いするだけでとどめて置いた。そんなアリアを見てアーニャは肩をすくめた。
「でも、クリスティアン殿下がアリアさんのことをほざいていた貴族どもに、『お前らはスフォルツァ公爵令嬢と同じ年齢の時に、同じことを行ったのか』という問いには、笑ってやりたくなりましたのよ」
 とアーニャが、悪気がなく、しかし目は全く笑っていない状態で言った言葉に、アリアは本当に苦笑いしてしまった。

「しっかし、あの坊ちゃんはアリアさんのことをよく見ていたわね」
 誹謗中傷していた貴族たちのことはさておき、とアーニャは話題を変えた。
「へ?」
 一瞬何を言っているのかわからず、間の抜けた声を出してしまったアリアだった。
「あの、ウィリアムとかっていう新人の文官の子よ」
「ああ、ウィリアムですか」
 アリアは納得した。その言葉に、アーニャはえっと小さく叫んだ。
「知り合いなの?」
「はい。昔の家庭教師をしてくださっていたディート伯に拾われていたらしく、弟の剣術の相手として呼ばれていました。」
 アリアが言った情報に軽く目を見開いたアーニャだった。まさか、国内の公爵家の中で、ここ最近は落ちぶれてきたとはいえども、一応『名門』であるスフォルツァ家の令嬢と、一平民の接点がそんなところにあったとはだれも信じがたいだろう。
「――――そうだったのね」
 しかし、アーニャ自身はそんなことに表面上・・・は、嫌悪感を抱かなかったみたいだった。驚いてはいても、不快感は表に出していなかった。

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