転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「僕はあの時まで、全く思い出せない状況だった。でも、なんか、靄がかかったような感じだったからか、ベアトリーチェヒロインユリウス幼馴染騎士を見て、『ああ、ここは「Love or Dead」の世界なんだな』って思ったんだ」
「じゃあ、どうして私のことを『転生者』だとわかったの?そんなことおくびにも出したことなかったはずなんだれど」
 アリアはそこが疑問だった。なぜ自分が転生者だとばれたのか、そもそもあの茶会ではアリア自身を見ていたとも思えないし、王宮でもあったことはないはずだ。そう言うと、彼はくすっと笑い、

「実はアリア・スフォルツァ悪役令嬢もあの茶会で見かけたんだよ。そして、そこで君も転生者っていう事に気づいたんだよ」
「えっ」
 彼女は驚いた。そんなボロを出すような真似をしたのだろうか。
「君は勘違いしているだろうけれど、君は完璧すぎたんだよ。僕以外・・・は絶対に気づかないぐらいには、ね」
 彼はにっこりと笑った。その言葉を聞いて、
(というか、人生で二番目にこの人の観察眼怖い)
 って思ってしまったアリアだった。
「君は二人を最初に見た時、驚いていただろう」
「え、そうだけれど」
 彼女は確かその時、きわめて内心を隠していたはずだ。しかし、彼はそれを見破っていたらしい。
「それで分かったんだ。君が転生者であり、このゲームの世界を知っているのだ、と」
 二人が知っている状況のすべての辻褄があった。
「で、悪役令嬢のフラグを回避するために、一生懸命働いている。それを見て僕は君を助けたいって思ったんだ」
「助けたい?」
 攻略対象である彼がどうしてそのような言葉を言うのかが不思議だった。普通なら、ヒロインと結ばれたいんじゃ、と思ったが、彼の話の続きを聞きたかった。
「うん。頑張っている君を見ているだけでは、僕自身が許せなかったから。それに、アラン・バルティアのルートを知っているわけでしょ。だから僕も、おちおち爵位をはく奪されてたまるか、という思いもあるんだ。だから、互いのために身の破滅というフラグを立てられないように頑張っているのさ」
 アランはにっこりと笑った。確かに、アランのルートも、どのエンドにおいても爵位はく奪が待っている。彼が『前世』の記憶を思い出してしまった以上、没落エンドにならならないよう、彼自身の行動が必要だったわけだ。そして、ちょうど記憶を思い出すのと同時に自分と同じ転生者だったアリアの助けとなるべく、動いたみたいだった。
 さらに、元いた世界でみかけたネット小説などの悪役転生もののジャンルでは、『ヒロインも異世界転生者で、逆ハーレムエンドを目指すアホでした』というものもよく見かけられる。そういったものを知っていれば、万が一を考え、ヒロインの行動に巻き込まれる可能性の高い、ゲーム内と同じ職業である近衛騎士を選ぶよりも、安全な王立騎士を目指す方が命の危険性も少ない。そのため、どうやら王太子の近辺に侍るよりも、王都の安全を守ることを選んだに違いない、とアリアは思った。彼女は、ベアトリーチェが転生者である可能性をベアトリーチェと初めて喋った段階で、ゼロであると断言できていたので、そんな馬鹿な考えは持たないだろう、と思い、自分の破滅回避だけに奔走できたのだ。そう言った意味では、彼はかなり慎重だったみたいだ。

「そうだったんですか」
 アリアはため息を一つ着くと、アランの顔を見た。彼は相変わらず微笑んでいた。
「とりあえず、まず今回の件について、助けていただいてありがとうございました。また、機会があったらお礼をさせてください」
 公爵令嬢として、にっこり笑った。言われたアランは一瞬虚を突かれた顔になったが、すぐに、再び微笑んで、
「こちらこそ、アリアさんをこんな家に連れ込んでしまって申し訳ありませんでした」
 と言った。

 王宮(にいるアランの姉アーニャ)から迎えの馬車が寄こされていた。
「では、お気をつけて」
 アランはアリアを馬車の中までエスコートした後、動き出すまでの間、名残惜しそうに窓枠にしがみついていた。そして、馬車が動き出す瞬間、

「アリア姫――もし機会があれば、一緒にこの国を乗っ取りませんか?」

 その言葉は、一瞬であったが、確かに彼女の耳に届いた。どういう意味?――アリアが聞き返す前に馬車は動き出した。彼女は慌てて振り返るも、どんどんとアランからは離れていく。結局その真意は、15歳になるまで明かされなかった。

 王宮に戻ると、真っ先にアーニャが出てきてアリアに抱きついた。アリアは、出迎えに来てくれた多くの同僚に、相当心配をおかけしました、と皆の前で謝った。
 そして、奥の部屋に呼ばれ、その部屋へ向かうと、母親のエレノア、幼年ながらも当主本人であるユリウス、国王夫妻、王太子、そして妹のリリスがそろっていた。自分の行方不明事件がそんなに大事になっていたのか、と思ったが、どうやら様子が違う。
「この度はご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。ただいま戻りました」
 ひとまず、アリアは大人たちに詫びと挨拶を済ませると、空いている席に座るように促された。座ると、他の面子はすでに『話』を聞いていたらしいが、聞いていなかったアリアに、もう一度説明した。それを聞いて、アリアは。
「待ってください。何故上の娘である私ではなく、妹を?」
 と尋ねてしまった。その話とは、妹リリスの婚約話だった。まだ妹は成人も迎えていないはずなのだが。
「私としても断りたいところだけれど、向こうは具体的に誰、という訳ではなく、『王家に連なる姫』という事を所望したのよ。それに当てはまる未婚の女子は、ミスティア王女とあなたたち姉妹だけしかいない。で、誰を選ぶか、というところだけれど、確かに認知はしているけれど、事実上の庶子を嫁がせるには申し訳ない相手であること。そのため、ミスティア王女は外されたのよ」
 その『申し訳ない相手』というものの顔を拝んでやりたい、とアリアはその場で思ってしまった。
「そして、なによりあなたの功績を考えれば、この国に残すしかないのよ。今ここであなたがいなくなったら、国は破壊されるでしょうね」
 確かにアリアの危険と隣り合わせであり、八面六臂の活躍でなんとか、政治も繋いでいるみたいなのはアリアもなんとなく想像ついていた。この時ほど自分が転生者であるというのが、もどかしい時はなかった。
 エレノアの説明により、現在の状況がどのようなものになっているのかは、分かった。
「で、そのために、急きょリリス姫には王宮の上級侍女になってもらい、ある程度のマナーの応用を学んでほしい、とお願いしていたところだ」
 国王はまた無茶ぶりを、と思ったが、何も言わなかった。しかし、いったい誰がリリスの面倒を見る、というのだ。ただでさえ、この一年間の結婚(婚約)ラッシュのせいで、侍女の数は足りていない。無茶苦茶すぎる。
「で、その指導役にアリア姫、貴女にお願いしよう、と思って」
 王妃はのほほんと笑った。
「私ですか?」
 おかしいでしょ、私はいまだ下級侍女ですよ、それ知っていますか?と詰め寄りたくなったのは我慢した。しかし、そんなアリアにお構いなく、
「ええ、そう言うと思ったから、今日からあなたを上級侍女に任命します」
 王妃は目を輝かせて言った。
(はぁ!?何言っているんですか、王妃様?最近、ようやく私への平民侍女からの嫌がらせがなくなったの、知っていますよね?)
 アリアは内心突っ込み続けていたが、国王夫妻は全くそんな彼女を気にしなかった。隣を見てみると、母親もかなりジト目で国王夫妻を眺めていることに気づいた。
(これは詰みチェックメイトなのだろうか)
 アリアはその後、王女ミスティア付きの上級侍女に任命され、同じく上級侍女に任命されたリリスに作法を教える役割を担った。
(これじゃあ、転生損!?)
 アリアは癒しの空間(下級侍女の控室)でアーニャたちに愚痴を聞いてもらいつつ、その年の瀬を迎えた。

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