転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 王妃の『馬鹿兄』という言葉を耳にした少女はびくりと肩を震わせたが、王妃はそれを気にせず、少女にとって死刑宣告に等しい言葉をつなげた。
「まず、招かれもせず王宮に忍び込んできたという事は、そこらへんにいる賊と同じことをやっている、と思わないのか。そして、一国の王である国王陛下とその妻である私がこの婚約は認めたもの。それに異議を唱えるという事は反逆罪相当すると覚悟の上に乗り込んできたのであろうな」
 王妃の言葉に真っ青になっている少女だが、
「わ、わ、私は父様に命じられてやってきたのでございます。父様は仮にも公爵。その娘である私が王太子の婚約者に選ばれないとはおかしい、と。そして、公爵位であるスフォルツァの娘もまた、初めに公爵令嬢であり、王妃殿下とも親密ゆえに王太子殿下のパートナーに選ばれながらも、伯爵令嬢風情に遠慮して婚約者候補を辞退するとは呆れた所業だ、とも仰っておりました」
 少女はそれでも懸命に釈明していたが、彼女をはじめマーブリット公爵の旗色が悪くなる未来しか見えなかった。
「それで、お前は父親にそそのかされたために、自発的ではなく・・・・・・・ベアトリーチェとアリアを罵りに来たのか」
 王妃は手に持っている扇をいつ凶器に変えようか思案しているようだった。
「は、はい」
 少女はこの部屋の雰囲気に圧倒されているのか、早くこの部屋から逃げ出したい、という雰囲気をダダ洩れさせていた。
「して、スフォルツァ公爵令嬢」
 アリアは自分が呼ばれるとは思っておらず、一瞬ビクッとしたが、それでもその雰囲気をおくびに出すことはなかった。
「何でしょう」
 多少面倒だな、と思いつつ返事をすると、少しジト目で見られたのは気のせいだろうか、とアリアは思ったが、ここでは口には出さなかった。
「今回の其方の解釈を聞きたい」
 王妃の言葉に面倒くさい、と思いつつも、ベアトリーチェやほかのあまり理解が追い付いていない下級侍女たちの期待のこもった眼を見て、仕方なくアリアは少女が言った言葉をあわせて考えた推測を口にした。
「おそらく、マーブリット公爵はあの方自身が自分の力・・・・で公爵になっていないこと、そしてほかの公爵からしてみれば成り上がりものの存在であることをお忘れなのでしょう」
 あとはお任せします、と王妃に目配せしたら、これで終わりなのか、という不満な顔をされたが、アリアからしてみれば後は自分でやってください、としか言えなかった。
「そうだ。スフォルツァ公爵令嬢の言うとおり、マーブリット公爵、すなわち私の兄はもともとしがない伯爵家の次男だった。しかし、私が王妃になる際に、有事の時用にと伯爵家の継承権が低い次男を、土地を持たぬ名だけの公爵位に据えたのだ。しかし、私の父親、すなわちそこにいるコゼットにとってみれば祖父とその据えられた次男坊であるコゼットの父親は何を勘違いしたのか、公爵位に据えられたのを良いことにほかの伝統ある貴族ども相手に喧嘩、というには幼稚過ぎることを前々から仕掛けておったのだ」
 王妃は嘆息した。アリア以外の貴族の娘たちは王妃相手だというのに、かなり頷いていたし、アリアもわずかながら納得した。確かそこのもう一人の娘はリリスと前は仲が良かったはずだ。
「スフォルツァ家はまあ、よいとしても、バルティア家をはじめとする公爵家やサランドア侯爵家には非常に申し訳ないことをしたと思って居るが、時世が時世でなければもう少しあいつらに対応できたとも思っている」
 確かに、王妃が冊立されたのは現国王の即位と同時だが、この国王の王位は王族内部の内紛によって零れ落ちてきたものに等しく、元はアリアの母エレノア方の祖父であるジェラルドの方が継承権は上だったはずだ。そのため、王族はともかくジェラルド派に属していた貴族の方を押さえるのに必死だったのだ。そのため、ある意味功臣でもある王妃の実家については後手になったことを王妃は、現在進行形で悔やんでいた。
「まあ、今回の件も含めて私が抑えきれていなかった部分もかなりある。私もしかるべき罰は受けよう。しかし、コゼット、其方がやったのは先ほども言ったとおり、十分に反逆罪に値する。其方をはじめ、お前の父やそれに連なるものを私の権限で捕縛させてもらうぞ。良いな」
 王妃は過去の自分をかなり後悔しているようだった。9歳より前にアリアがしでかしていることもあるが、今現在、この少女のようにならなくてよかった、とも思えた。また、ベアトリーチェたち、事情が分かっていなかったものは全てが事情を把握し、驚きで言葉を出せずにいた。

 こうして、一人の少女が巻き起こした騒動は、王妃の実家籍の人間が反逆罪・・・により捕縛、爵位をはく奪されるという異例の事態に発展した。
 秋の狩りは厳戒態勢で行われることとなり、ほぼすべての危険は表の騎士たちによって取り除かれ、アリアたちは事前に準備してきた成果を披露・発揮することが出来た。

 その後、二つの知らせがアリアのもとに届いた。
 一つ目は弟のユリウス。彼はこの秋から王立騎士団に入団することとなり、彼は王宮の近くにある王立騎士団詰め所に、勤務することになり、しばらく新人の間は官舎で寝泊まりするらしい、と書かれていた。
 二つ目はしばらく前にあったマクシミリアン。彼は次の王宮夜会には王都に戻ってくるらしい、と書かれていた。その前に、ぜひフェティダ領にも来てほしい、とも書かれていたのだ。
「そうね、ぜひ行ってみたいわ」
 アリアは忙しさが再び本格的に始まる前にと思い、1週間の休暇届を侍女長に提出した。
『お土産よろしくね』
 というと言葉とともに、アリアの休みは始まった。

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