転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 王宮に戻ると、すぐにいつも通りの生活に戻ったわけではなかった。なぜなら、ベアトリーチェが王太子の婚約者になったのと同時に彼女付きの侍女にアリアは直々に指名されており、『接待部との兼任』という条件でそれを引き受け、使える相手であるベアトリーチェにもそれを了承してもらっていた。
 秋の狩りの連日勤務前に、彼女は数日間実家に宿下がりすることにし、それまでは二つの部署で掛け持ち勤務をしていた。

「貴女がそこまで物好きだと思いませんでしたよ」
 王宮におけるアリアの最近の話を聞いたエレノアは、彼女の行動に苦笑していた。彼女は一年と少し前にアリアが王太子との婚約者候補を最初に辞退した時はかなり眉をひそめており、気に食わなさそうだったが、その後、王宮に戻ってから頻繁に手紙を送り続けて、長い時間かけて説得を続けたため、今では王太子とアリアの婚約者候補辞退に対して、不快に思う事はなく、ただ、アリアが望んだのなら、と笑っていると思われた。
「私は王命でこの家に嫁いできましたし、普通ならば貴族というものは『そうあるべき』よ。でも、私としてはもうこれ以上、誰にも不幸な結婚生活は送ってほしくはないと思っているのよ」
 初めて聞いた母の本音にアリアは少し戸惑った。恐らく『不幸な結婚生活』というのは、エレノアマグナムだけでなく、ユリウスの母であるマチルダやその元夫、また、義妹のフレデリカも含むのだろう、と思った。
「でも、働き詰めで体を壊さないで頂戴ね」
 エレノアはアリアに菓子類の入った皿を差し出した。その上には、ナッツにチョコをまぶしたものや、色とりどりのゼリーなどが乗っており、前世も甘いお菓子が好きだったアリアにとってみれば、このお皿はまるで宝石箱のような輝きを持つものだった。
「はい、お母様。ありがとうございます」
 アリアは二つ・・の物に礼を言ってから、手を伸ばし、最初にルビーのような真っ赤なゼリーを食した。

 数日後、気分転換を兼ねた宿下がりを終え、王宮へ戻ると、何やら侍女部屋でひと騒動が起こっていると思ったので、部屋に自分の荷物を置いて現場へ駆けつけると、アリアたちよりも幼い一人の少女がベアトリーチェ(と王妃派の侍女たち)に対峙し、彼女を指さして、
「ふざけないでよ。パッと出の伯爵令嬢風情が」
 と、叫んでいた。なんでこうなった、とか色々突っ込みたいことはあったものの、
(いろいろ突っ込みたいけれど、まず誰なのよ。この少女は)
 と、頭が精神的に痛くなったアリアだった。そんなアリアは、後ろの方で様子を見ようと思ったが、アリアに気づいた侍女たちが一斉にわきに退いた。その侍女たちの行動によって、アリアとベアトリーチェ一派、そしてその少女の間に一本道を作ってしまい、ベアトリーチェと侍女とその少女当事者たちに気づかれてしまった。
(で、仲裁してほしい、と?)
 少女に気づかれないよう、アリアはベアトリーチェに目で尋ねたら、彼女もまた、アリアに、
(お願い。助けて)
 と、視線だけで言っていたので、しょうがなく、微かに頷き、双方の言い分を聞くことにした。

「まず、貴女はどなた・・・なのですか」
 アリアは、まず少女に尋ねた。すると、

「黙ってらっしゃい、この役立たず・・・・の公爵令嬢」
 少女はアリアの方をにらみつけ、そう罵った。

 その言葉に、アリアは何か思うところがあったのか、にこりと笑い、野次馬見物をしていた侍女の中に赤毛の少女がいることに気づき、
「アーニャさん」
 と声をかけた。赤毛の少女(アリアよりも年上)は、のっそりと出てきて、
「何でしょう」
 と、いかにも関わりたくないです、って言っている感満載で、アリアに返事をした。
(いや、私だって関わりたくなかったわよ)
 と思ったが、当然口にはしなかった。しかし、再度にっこりと笑い、アーニャの耳元で、ある人物名をささやき、
「この方を公爵令嬢として、この部屋にお越しいただくよう、お願いできるかしら」
 と、部屋全体に聞こえるように言った。その言葉に、何人かの侍女は人物名を言われていないのにもかかわらず、真っ青になり、おろおろし始めた。アーニャはその場から逃げるように、さっさと部屋を後にした。
(まったく。あなたたちが悪い、という訳でもなさそうなのに、ね)
 自分の同僚たちがおろおろし始める様子を見て、アリアはこっそりとため息をついた。

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