転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 アリアはまさか二人が現れると思っていなかったので、2人の声がした瞬間にひどく焦った。
「これはマックス坊ちゃんじゃないの」
 二人の登場にアリアが固まったままの状態であったものの、マルセラは『いつも来ている』というマクシミリアンの登場にのんきに声をかけた。
「マルセラさん、今日もお元気で何よりです」
 クリスティアン王子は朝と同じく高級感丸出しの服であったが、マクシミリアンは朝と違った服になっており、その服はいかにもお忍びできています、という感じが見られなかった。
「お嬢ちゃんとそこの貴族のお坊ちゃんはマックス坊ちゃんの知り合いなんだねぇ」
「ええ、そうです」
 マルセラの言葉で、隣で先ほど登場した時よりも機嫌が悪化しているクリスティアン王子を尻目に、マクシミリアンは苦笑いした。
「僕のところに用があって来たみたいで」
「そうなのかい。ちょうどいいところだ。出来立てのチーズと腸詰を持っていくかい」
 マルセラは婦人たちで作っていた腸詰とアリアが初挑戦したチーズを勧めた。
「では、お言葉に甘えて、いただきます」
「じゃあ、待っていてね、すぐに詰めるから」
 そう言い、マルセラは二つを木の箱で梱包すると、氷を入れて彼に渡した。
「毎回ありがとうございます」
 マクシミリアンはマルセラに礼を言った後、木の箱を受け取った。
「しかし、今日は燻製まで行ったんですね」
「やったよ。そうか、マックス坊ちゃんがこの前来た時は時間が合わなくて出来なかったんだっけ」
 マルセラはああ、と言いつつ、彼との作業を思い出していた。
「ええ。また来た時にお願いしたいです」
「分かったよ。いつでもおいで」
 そうマルセラは言い、今度はアリアに、
「じゃあ、お嬢ちゃん。迎えが来ちまったようだから、今日のところは帰りな。またいつでもいいから来ておくれ」
 マルセラはアリアとクリスティアン王子にそれぞれ梱包した腸詰とチーズを渡しながらそう言った。
「ええ、時間があるときにお伺いさせていただきます」
「その言葉忘れるんじゃないよ」
 マルセラはころころと笑って三人を見送った。

 彼女の工房からは、2人が乗ってきたらしい馬車で帰った。
「なんでだ」
 クリスティアン王子は馬車が動き出した後、すぐにそう問われた。
「何がですか」
 アリアには心当たりはあったものの、何から答えればよいのかがわからなかった。
「まずは、お前が公爵の屋敷を勝手に出て行った事だ。それから、話し合いに参加しなかった事。あとは―――」
「はいはい。殿下、そんなにいっぱいあるのなら、一つずつにしてあげたらどうなのですか」
 アリアには答えることのできる質問を、次々としたクリスティアン王子にマクシミリアンがどうどうと、肩を押さえた。
「僕は貴女が出て行った理由になんとなく想像がついています。しかし、意外と貴女は僕が思っていたような人物ではないことがわかりました。まず、そこは謝りますし、出来ることなら、少し貴女の行動を見習わせていただきたいです」
 マクシミリアンは微笑んだ。どういった心境の変化なんだろう、とアリアは思ったが、口にすることはしなかった。
「ですが、貴女がついて行った男と場所は偶々僕の知り合いの人たちでしたけれど、このフェティダ領は王国内でも治安が悪い場所の一つに挙げられています。ですから、貴女は王国随一の公爵家の姫、たとえ王太子の婚約者ではなくなったからと言って、一人で勝手に行動していいわけではありません」
 彼の指摘に最もだ、とアリアは痛感した。自分がいなくなったと知って、二人は慌てて出てきたのだろう、と想像はついた。しかし、ですが、とマクシミリアンは続けた。
「貴女は昨日のを少し引きずっていたのでしょう。一応、衛兵にはそうだろう、と伝えてありますが、一応貴女からも謝っておいてください」
 そう言った彼の顔は優しかった。
「分かりました」
 アリアはもっと言いたげにしているクリスティアン王子を横目に、頷いた。

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