転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 休憩後の馬車の中では、一人アリアが悶々と悩んでいた。
(いや、まあ私もあそこで突き放せばよかったんだけれど、流石にできなかった。うぅ――)
 先ほどの休憩時に言われたことを思い出すと、未だに恥ずかしさと後悔でいっぱいだった。一応、今回は王太子の視察と雖も、王都からあまり離れていない、という事と、アリアも戦力の一つとして数えられているのではないのか、というくらい護衛の数は少人数に抑えられており、秘書官代わりの侍従やアリアを除いた手伝い専門の上級侍女もほぼいない。しかし、一応騎士たちは天幕の外に立っていたわけだし、会話自体は聞こえなくてもどういった状態になっていたのかは、出てきたアリアの様子からして邪推しやすいだろう。そうなったときのフォローも大変だなあと思いつつ、クリスティアン王子との過去、そして彼がどう思っていたのか、と聞けてほっとしている自分もいたが、やはり恥ずかしい。

 次に止まるのは、フェティダ領に入る直前の宿場町だ。そこに着くまでは、接待部の事でも考えよう、と思ったときに少し考えたのは将来の自分。
 このまま、侍女として王宮で過ごすのもよいとは思うし、それならば変なことには巻き込まれにくいだろう。あえて言うならばいずれ王妃となるであろうベアトリーチェに頼んで、侍女長として雇ってもらうのもよいだろう。侍女として続けていくのが難しいのならば、誰か条件の合う人を見つけて、結婚するのもよし、いざとなれば、スフォルツァ領にいる父親の元へ行って、のんびり田舎暮らしをするのも良いだろう。アリアはそんなことを夢見ていた。
(ああ、早く王太子が国王についてほしいわね)
 そうすれば、おそらく自分の役目悪役令嬢は終わる。さらば、王宮暮らし、そんな将来の夢を描いていたらいつの間にかアリアは眠りの淵に陥っていた。
 しかし、今の段階で、彼女が思い描いた日は永遠に来ないとは彼女自身も思わなかった。その幻想を壊す足音はすでに迫りつつあった。


 宿場町に着いた時にはすでにあたりは暗くなっていた。
 宿場町に入る直前で安全のためにクリスティアン王子も馬車に同乗することとなり、もう一度臨時で休憩することとなった。その時に、アリアがあまりにも気持ちよさそうに寝ていたので、天幕を張らずに、ただ王子が馬車に移り、一部の荷物を彼が乗っていた馬に乗せ(ちなみに、王家所有の馬であるため、護衛たちはかなり恐縮していたが、王子は笑っていたそうだ)る作業をしたのだが、中途半端な足音を立てたせいで、アリアが馬車に乗ってきた王子を不審者と勘違いし、隠し持っていた暗器で攻撃しようとしたのは、ご愛敬である。
 かくして、宿場町に着いた一行は貸し切りにしてあった目的の宿に入り、先に護衛たちが荷物を運び入れつつ、王子とアリアは先に食事をいただくことになった。
「美味いな」
「ええ」
 この宿の食事は、畜産が盛んなこの地方の特産品である畜産物をふんだんに使ったものが多く、普段見かけない白い腸詰のソテーやさまざまな種類の香辛料を使った蒸し焼きが出された。本来ならば毒見役が必要だが、この宿の主人に悪いと思いあえて毒見役を設定しない代わりに、主人も同席してもらい、主人にも同じ料理を味わってもらうことにした。同席している主人や料理人は非常に恐縮しながらも、王子の言葉に喜んでいるかのように感じられた。
「で、アリア姫」
「何でしょう」
「明日の予定だが」
 食事が終わり、主人と料理人が席を外したのを見計らって、クリスティアン王子は切り出した。
「明日はこのままフェティダ領に入り、領の屋敷に赴く」
「そうですわね」
「その際に、当然主であるマクシミリアンにも会う。その時にだが、お前にも同席してほしい」
 クリスティアン王子のその発言にアリアは何故、と思った。しかし、その答えはすぐに彼から述べられた。
「彼は確かお前と同じ年にデビュタントしていたよな」
「そうね、多少面識位はあるわ。ただ、向こうが覚えているかはわからないけれど」
 と、アリアは返した。
「そしたら、お前が間に入ってくれると助かる」
「その心は」
「おそらく、王族というものが嫌いなのか、そもそもこの国が嫌いなのかは知らない。しかし、ある程度、お前がいてくれると話がしやすいのではないのか、と思う」
 彼の意見にはすべて頷けなかったが、ある程度は理解できたので、分かったわと言って、それを引き受けた。

 その晩は、翌日に控えて早く寝ることとし、それぞれ別の部屋に入って寝支度を整えて就寝した。
 アリアは、昼間途中で寝てしまったものの、かなり疲れていたらしく、すんなりと寝ることが出来た。
 一方のクリスティアン王子は、近くの部屋で寝ているアリアの置かれている立場や彼女の性格などを考えているうちに、何故ここまで頑張るのか、という根本的な部分にぶち当たり、夜が明け始めるまで悶々としていた。
 翌朝、一行は朝食をとった後、宿を出発し目的地へと旅立った。
 昼前にフェティダ領の都サリエルダに到着し、公爵の屋敷へと入った。
「よく来てくれました、王太子殿下とスフォルツァ公爵令嬢」
 彼の人物・・・・・は、本当の年齢よりもはるかに上に見えたものの、紺色の髪はまるで夜明けの闇を表している感じであった。
「私がマクシミリアン・フェティダです。この度は叔父に変わり当主を拝しましたこと、厚く御礼申し上げます」
 彼は、緑色の目を伏せた。
「会談の席を設けさせていただきましたので、こちらへどうぞ」
 二人を誘って奥へと進む。

 これから、最後の攻略対象者との会談が始まる――

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