転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

夏祭り

 王国における祝日の一つで、一年で最も暑くなる"暑陽"と呼ばれる日がある。その日には、氷菓子を屋台として出した店がきっかけとなり、多くの出店が王都の大通りに並ぶ風景が見られ、王都の観光名物の一つとなっていた。
 その屋台には平民が多く参加し、稀に貴族がお忍びで参加する、というくらいでしか見かけない。ましてや、その日は王族はほとんど城下には行かないように、というお達しがあるくらい、王族は行かない。しかし、この春にリーゼベルツに来たクロード王子は一外交官として、王都名物に参加しようと張り切っていたし、参加しに行くという話をクリスティアン王子に言ったら、かなり何度もねちっこく羨ましがられたので、アランは国王夫妻にセルドア通じてお伺いを立てたら、セルドアとアラン同伴の元でなら行って良いという事となった。
 そうして、彼らは自分達の仕事をいつも以上に早く終わらせ、アリアとベアトリーチェを強引に仕事を切り上げさせて城下へと降りた。

「というか、何で私まで」
 ここ数週間のアリアは様々な行事が重なったせいか、かなり気が立っていた。それに加え、昼過ぎに、王太子から直々と『今日の夕方空けておけ』という命令を下されれば、恨み言の一つも言いたくなる。誘うなら婚約者であるベアトリーチェだけにしろよ、と声を大にして言いたい。
「そう言うな。ここ最近の婚約ブームによって、接待部は痛手を受けただろう。だから、それの労いもあって呼んだんだ」
 クリスティアン王子は意外にもアリア達侍女の事情を知っていた。確かに、王の従姉の王女エンマとピレッツ辺境伯アウグストという幼馴染同士の婚約をきっかけに、この婚約に肖ろうとしたのか王都では(幼馴染同士の)婚約ブームが襲来し、接待部を初めとする侍女(特に下級侍女)の退職が続いていた。この時期の退職は夏の王宮行事に影響が出ており、残っているメンバーで何とか遣り繰りしたものの、かなり一人一人の負担が大きかったのだ。
「そうだな。確かに昼過ぎにお誘いするというのは悪かったと思う、すまない。しかしアンタには休息を取って欲しかったんだよ」
 クロード王子もだれからか聞いたのか、事情を知っていた。
「本当は部屋で休ませる、というのもよかったのかもしれないが、たまにはこうやって城下に出てみるのもよいと思うが」
 クリスティアン王子はちゃっかりとベアトリーチェの手を握っていたが、そう言ってアリアの労をねぎらっていたのは好感度が上がる。もちろん、馬鹿じゃないので、惚れることはない。
「さあ、時間は少ししかないから行こう」
 クロード王子にエスコートされる形で、王都の大通りを進んでいった。


「だから、君から目が離せないんだよね」
 と言ったのはクロード王子。そう、アリアは普段長距離を歩かないため、靴擦れを起こしてしまっていた。ほかの面々は先に王宮に戻り、2人だけ後からゆっくりと歩いていくことにしたのだ。しかし、その歩きもかなり鈍っていた。恐らくは他の一行はすでに部屋の方に戻っているだろう。しかし、王宮への帰り道の途中で、
「もう痛くて歩けない」
 と彼女は座り込んでしまった。もちろん、正真正銘、彼女の言葉は本音だった。その言葉を聞いたクロード王子は、
「しょうがないな」
 と言って、彼女をお姫様抱っこして王宮に持った。彼女は侍女エリアにたどり着く前に降ろしてもらって、誰にも見つからないように一人で帰った。


 その翌日、昨日の非礼を詫びるためにクロード王子のところに行ったら、アランとなぜかまたセルドアがいて、その二人には彼女がお姫様抱っこしてもらって王宮に帰ってきたことがばれていた。

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