転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 アリアと共に先ほどまで優雅にお茶を楽しんでいたのは、国内有数の大手商会出身の娘をはじめとする貴族ではない身分の娘たちだった。彼女たちは、彼女と同期か年上の娘たちで、最初にアリアが侍女として入ってきたときに、不満そうな顔をしていた娘たちだった。接待部ではない彼女たちは、彼女たちは今でもアリアのことをよく思っておらず、今では接点が少なかったため、問題はなかったが、今年は重大な問題が起こっていたのだ。そのため、他部の侍女たちと協力をしていかねばならず、今もこうやってお茶会と称して他部の侍女たちと交流を図ろうとしていたのだ。
 だが、アリアが女主人ホストであるため、たとえ身分が彼女より低くても(というか、侍女の中では彼女が最も身分的に偉いのだが)、誘われた侍女たちのために彼女自身がお茶を入れるのは何ら問題なかった。が、問題は話をしているときに、ある侍女がアリアの行動を見ており、それをうっかり茶会の話題にしてしまったことが原因だった。
「いくら王妃様のお気に入りだからって、そのように王宮の中で騎士団長様に個人的な・・・・授業をしてもらうのはいかがだと思いますわよ」
「そうですわね。というかそもそも貴女、公爵令嬢なんでしょ。相手や場所・・・・・ならいくらでも調達できるのでは?」
「そうよ。わざわざ人目に付く場所でする必要もないでしょ。それとも、貴女は自宅ですれば・・・よいのに」
 侍女たちの悪意には慣れていた彼女も、流石にここまで明け透けなこと言われるとかなり腹が立つ。しかし、隣にいるベアトリーチェが小刻み震えているのが見えた瞬間、アリアは何か吹っ切れた。

「ええ、そうですわね。あなた方もそう思うのね」
 アリアは言われた意味と逆ベクトルの意味で言葉を返し、その言葉に呆気に取られている侍女たちを放置し、席を離れようとしたが、それは突然の乱入者により出来なかった。

「アリア様にお謝りくだいませ」
 そう言ってアリアの目の前に立ったのは、ミスティア王女だった。彼女は今年御年7歳の少女で、母親フレデリカと違いかなり聡明に育っていた。いや、母親の方も一応聡明ではあったものの、それの使い方を間違えていただけのようなもんなのだが。
「そうです、アリアさんにお謝りください」
 そう言ったのは、先ほどから小刻みに震えていたベアトリーチェだった。彼女の震えは収まっている(ような気がした)。
「あら、これはミスティア王女殿下とベアトリーチェさん。貴女方はお知りになっているのか知りませんが、この方は王太子殿下の婚約者筆頭でありながらも騎士団の長であるコクーン卿と懇ろな仲なんですって。特にミスティア王女殿下、貴女はそのような方が王族にふさわしいとお思いで?」
 彼女たちは良い贄が現れたと思って、ものすごい勢いで彼女たちに情報提供・・・・していく。
(うん。これ、真実を言いたいんだけれど)
 アリアは半ば他人ごとのように聞いていた。
「まず、アリア様は騎士団長様のところに通われているのは、武術の鍛錬のためですわ。一度騎士団長様やセリチアの外交官であられるクロード王子殿下にお聞きになられてはいかがでしょうか」
「ええ、それが一番ですわね、王女殿下。騎士のアラン・バルティア公爵子息もそこにはおられるとか」
 ミスティア王女とベアトリーチェが相次いでアリアの援護射撃を行う。その援護に、(身分的な問題も相まって)侍女たちはかなり顔色を悪くしていた。
「それに、わたくしからは具体的なことをあまり言えないのですが、残念ながら王太子である私の兄の目に留まったのは、アリア様ではないのですよ。これはアリア様も知っているお話なので、皆様に申し上げておきますと、もうすでに内密で兄の婚約式は終わっているのですよ」
 その言葉に、侍女たちはいっせいにアリアを気の毒そうなものを見る目に変化した。アリアからしてみれば、王子の性格は彼女の性格とも一致するわけではないので、破たんするだろう、と考えていたので、別に気にするような話でもなかったが、一応ここは彼女たちの同情の視線に合わせた仕草と表情をしておいた。ちなみに、張本人婚約者であるベアトリーチェは、他の侍女たちの驚きの表情を見て、反応するタイミングを間違えないようにそれらをまねて表情を作っていた。
「もう、アリア様を悪くいうのはやめていただけませんしょうか」
「そうです。ただの憶測だけでものをいうのはやめていただきたいものです」
 黒髪美人と金髪美人(しかも片方は正真正銘幼く、もう片方も背丈的に幼く見える)からそう言われれば、彼女たちも自然と頷いてしまう。もちろん、根本的な部分で納得していないのだろうが、理性で感情を押さえつけさせたような状態になっていた。
「わ、分かりましたわ」
「は、はい」
 彼女たちは曖昧にだが頷くと、蜘蛛の子を散らすように去って行った。
「変な子たちね」
「ええ」
 ミスティア王女とベアトリーチェは頷きあっている。
「あ、あの。ミスティア王女殿下とベアトリーチェ、ありがとうございました」
 アリアは急転直下の状態に驚いていたものの、二人に礼を言った。
「気にすることではなくてよ。それに、私は貴女に礼がある。貴女に対する恩返しはいくらでもするつもりよ」
「全くです。アリアは何も言ってくれないんですから。あの方々はアリアのことを嫌いって知っていましたけれど、アリアは自らの意思であの方々と仲良くなりたい、と思っているんですから、貴女がうまく立ち回れる自信があるって思っていましたけれど、なんとなく嫌な予感がしたので、王女殿下をお呼びして、来ていただいてよかったですわ」
 ちなみに、ミスティア王女が侍女たちに言った言葉は正しい。王太子とベアトリーチェは夜会の直後に婚約している。そのため、アリアは今現在フリーな状態である。なので、別に誰と恋愛してもいいのだが、今のところ仕事侍女の方が忙しくてままならない、というのが実情である。

 ちなみに、今現在の彼女の周りの男ども(王太子以外)に対するアリアの感情はこうだ。
 クロード王子:押しが強すぎて怖い。花もいい加減いらない。
 セルドア:年が離れたお兄さんとしか思えない。そもそも、ユリウスの母親であるマチルダの兄でもあるため、特に男として見たことはなかった。
 アラン:一応まじめだが、底知れないので今はあまり近づきたくない。
 ウィリアム:とりあえず、どのように転がってくるか楽しみ。
 ユリウス:すでに弟であるものの、彼を支える人間でありたいと思っている。もちろん、人の道からはずれた恋に陥る、という展開にはならないだろう。
 ダリウス王子:そもそもあまりあったことのない人物なので、今はどうなのかを判断することはできない。
 身内以外でアリア的に一番評価が高いのはアランで、最も低いのはクロード王子だ。万が一のことがあった場合にも、絶対にクロード王子の世話にはなりたくない、と思っている。

 その後、アリアとミスティア王女、ベアトリーチェの3人で、仲良くお茶会をして、接待部の面々が来た時に王女と気軽に話をしているところを見られ、自分が公爵令嬢だったことを思い出させられたアリアだった。

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