転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 12歳になった年の王宮夜会は何事もなく無事に終わり、アリアはほっとした。そして、王宮侍女として3回目の春、彼女は最近接待部の仕事は立て続けに忙しかったことからご無沙汰になっていた、王立騎士団団長直々の訓練をしてもらうことにしたため、練習場に向かっていた。
「何故、貴方がそこにいるのですか」
 セルドアとの約束の時間通りに練習場についたアリアは、そこにいた人物を見て驚いた。
「アリア姫こそなんでこんなところにいるのかな?」
 彼は目を細めて、そうアリアに返した。
「何故って、私は――」
「僕の教え子だからですよ、クロード王子」
 アリアはむきになって返そうとしたが、その前に彼――クロード王子との間に入ってきた人物がいた。ほう、とクロード王子は言って、
「なかなか面白い子だね」
 と言い、

「じゃあ、僕と手合わせしてよ」
 と続けた。
「いや、お断りしま――」
「面白いですね。なかなか機会もないですし、いいではありませんか」
 アリアは即答で断ろうと思ったのに、セルドアは面白そうに勝手に受託してしまった。
「あの、コクーン卿」
 と言って、勝手に受託したセルドアに抗議しようとしたが、彼の目をよくよく見てみると、全然笑っていなかった。やはり、彼にとってクロード王子は初対面の時から気に食わない存在らしい。
(怖いんですけれど)
 アリアは抗議しようとした声を何とか抑え込み、
「いえ、何でもありません。お受けいたします」
 と頷く以外に選択肢はなかった。


「いやぁ、君強いね」
 剣術、弓術、槍術、馬術の4項目で手合わせしたが、彼女が最も得意とする弓術以外ではすべて負けた。ちなみに、この国の弓術は『涼音』の世界であった日本に存在する弓道と似ていて長弓であり、長いこと『涼音』として弓道をしていたため、彼女アリアと相性が良かったのだ。
「やはり、クロード王子殿下には敵いません」
 アリアは心の奥からそう言った。ちなみに、いまは馬術の勝負で王宮の外に出ており、王宮が見渡せる小高い丘の上にまで来ていた。勝負を終えた二人は、馬に水をやりながら、共に城下町を見下ろしていた。
「そうか。しかし、君は強い」
「は?」
 先ほどと同じ発言を繰り返したクロード王子に、アリアは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「だって君って2年前から人が変わったように善人・・になったんだろう」
 確かに彼女は、2年前、10才になる前に目覚めている。しかし、目覚める前のことを隣国の王子である彼は知らないはずだ。
「いったい誰が」
「コクーン卿とアラン君からだよ。あの二人・・は君に深く関わっている」
 クロード王子の発言にアリアは疑問を感じた。確かに、セルドアは彼女にある程度関わっている上に、騎士団長という重要な立場だ。彼女の過去を薄々気づいても仕方がない。また、アランについても公爵家の一員である、という事は社交界のことを知っていなければならない。そのために、彼の姉も知っていたように、彼女のことを知っているかもしれなかった。しかし、共にそれほど深く関わっている、という認識は彼女にはなかった。なので、アリアはその部分だけ訂正した。
「私は彼らと深く関係はしていませんよ」
 そう言うと、彼は大して興味がなさそうに、
「そう」
 とだけ言って、再び城下町を見下ろした。

 騎士団まで戻ってきた二人は、(特にクロード王子に向けた)セルドアの冷ややかなまなざしに出迎えられた。先にクロード王子が馬などの片づけをするために厩舎に入っていった。残ったアリアとセルドアの間には少し、溝があるように感じられた。
「アリア姫、大丈夫でしたか」
「ええ、大丈夫よ」
 アリアは何も起こっていないことを示すように乗馬服をひらひらと振った。数分経ち、先に片づけを済ませてきたクロード王子が、
「今日は楽しかったよ。また、時間があるときに遠乗りに出かけよう」
 とにっこり手を振って厩舎を出ていった。セルドアとすれ違う瞬間、彼らの間には静かな火花が散った、とアリアには感じられた。

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