転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 クロード王子がリーゼベルツに外交官としてきた年は、その後何も起こらなかった――というよりも、彼が来た時以上の大ごとが起こることはなかった。しかし、何故王太子と仲の悪いクロード王子がこの国来たのかは明らかにされていない。これはゲーム内でも共通のことだ。
 もともとリーゼベルツとセリチアの間柄は悪くはない――良くもないのだが、あからさまに戦争が始まる雰囲気でもなかった。しかし、現国王――王太子とクロード王子の父親の考えていることがわからなかった。あえて言うならば、中央に王太子の権力を集中させたいがために次男であるクロード王子を遠方であるこの国に追いやったとも考えられなくもないが、それを好機ととらえたのか、将又、違う理由なのか、クロード王子は気にしている雰囲気はなかった。
 ちなみに、クロード王子はたちまちリーゼベルツの王宮内で人気者となり、彼が出席する夜会では彼のダンスパートナー争奪戦が開かれており、貴族の子女を排除しきったリーゼベルツ王太子クリスティアンの時と比較されることが多い。また、彼専属の護衛騎士であるアラン・バルティアもまた、未婚女性の恰好の的となり、夜会では毎回大変な目に遭っている、とアリアは風の便りで聞いた。
 一方、アリアとベアトリーチェは平和な時を過ごしていた。結局、アリアと王太子の婚約の件はなかったこととなり、彼女は下級侍女としてそのまま王宮とどまることとなった。その代り正式にベアトリーチェが婚約者となった。通常、婚約が成立した場合はその時点を持って、侍女をやめなければならないが、王妃の計らいによって彼女は王太子と婚約した、という話は外部には伏せられており、侍女を続けることとができたものの、王妃の目の届くところ、すなわち王妃直属の上級侍女となった。

「これで、完全に王太子ルートに入ったのかしら」
 『ラブデ』内の王太子ルートでは、ハッピーエンドとして無事に婚約、成婚まで至ったという結果が載っていたものの、実際には貴族たちの猛反対を押し切って結婚したのかもしれないし、逆に諸手を挙げて祝福されたのかもしれない。それはアリアにはわからない。しかし、後者の状態でなければアリアは、彼らの幸せな結末ハッピーエンドを全力で担ぎ上げなければならない。そう思ったアリアは、侍女仕事の合間に昔書いたノートに今の状況を付け加える作業を久しぶりにしてみることとした。
 1人目の攻略者、クリスティアン。二人が初めて会った時から彼とは違った意味・・・・・で馬が合った。そのため、周りの大人たちが押し付けようとしていたのにも拘らず、婚約はせずに一目ぼれしたヒロインであるベアトリーチェに最初からアタックをかけ続け、つい最近それが実ったばかりであった。
 2人目の攻略者、クロード王子。彼はゲーム内と同様、リーゼベルツに外交官としてやってきた。しかし、どちらの面を見ているのかわからないのだが、彼は『ゲーム内』や大方の情報通りの真面目人間ではない。こないだもちょっかい色仕掛けを仕掛けられそうになったのを、アリアは覚えていた。しかし、まだヒロインであるベアトリーチェと遭う、という機会は恵まれていない(はず)だが、もし遭遇してもおそらくはクリスティアン王子が対処してくれるであろう、という事で放置決定。
 そして3人目、ユリウス。彼は今のところ誰からも横やりを入れられることもなく、平穏にスフォルツァ公爵のままである。しかし、この先どうなるかわからない。なので、早く成人してほしいし、アリア自身が公爵補佐の立場に座りたい、とも思っている。ちなみに、彼が公爵位を継いだ後に、クレメンスの紹介により王立騎士団に入ることとなったそうだ。そのため、『公爵』と『王立騎士』の二足草鞋を履いて頑張っているらしい。
 4人目、アラン。彼はゲーム内の設定としては、近衛騎士だったはずなのだが、現在の所属は『王立騎士(ただしセリチア王国外交官専属護衛)』だ。また、性格自体も見た目はチャラいのに、かなり真面目な男性だ。クロード王子の部屋でしかあったことはないものの、彼があの『愛人エンド』を作るとは思えなかった。
 5人目、ウィリアム。彼は最近アリア自身が公爵邸に帰っていないので本当なのか怪しいところだが、ユリウスの相手を時々しているらしいし、2人の師匠のお眼鏡にも適って、平民が王宮で雇われるために行われている文官試験に、今年こそ臨むつもりだ、と手紙で書いてあった。
 最後、6人目のマクシミリアンについては一切情報がない。正確に言えば、彼は叔父であるデビトの失脚によって、今現在ユリウスと同じ立場――フェティダ公爵だ。しかし、彼は叙爵式も病気という事で欠席すっぽぬかしていた。それが本当かどうかはわからなかったものの、クリスティアン王子以外の『攻略対象者』は全て性格や行動がゲーム内と違う。

(ここから先は、いかにしてクリスティアン王子以外の『攻略対象者』をベアトリーチェの方から遠ざけるか、ね)
 アリアは自分が生きるために、彼らの余分な諍いが起きないように整える仕事・・をすることにした。

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