転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「遅くなりました。ただいま王宮に到着いたしました、リーゼベルツ国王陛下並びに諸大臣の皆様をはじめとする皆様方」
 勢いよく開かれた大広間の扉の外には、金髪で長身の男性が立っていた。彼は、急いでいたのかかなり息を切らしており、おそらく普段はきちんとしているであろう髪も、かなりはねていたが、今は誰もそれを気に留める人物はいなかった。

「よく来たな、クロード・コレンス王子――セリチアからの使者よ」
 この国王の声は今まで一番威厳のある声なのだな、とアリアは迫りつつある睡魔に負けじと考えた感想だった。





 この大広間の光景に至るまでには、あれから一か月の時を要した。結局、王子は予定されていた進路とはかなり外れたところで保護・・された。そう、何故か北の隣国の出身である彼はリーゼベルツ中央にある王都に行くのに従者とはぐれ、一人で南方の辺境伯の家に匿われていたらしい。その貴族が言うには、彼は国境付近の森で倒れていて、瀕死の重傷を負っていた、という。腕の良い医者をその辺境伯に紹介してもらったせいか、一週間もかからないうちに、彼は回復し動けるようになっていた。本当は国王直々に彼を引き取りに行きたかったのだが、王妃や侍従などに『国王陛下の不在はあらぬ憶測を生む』という事で、引き留められ、代わりに国王の信頼も厚い騎士団長のセルドアが迎えに行くことになり、それにアリアもスフォルツァ公爵令嬢として同行させてもらうことが出来た。
「聡明なあなたの事ですから、もしかして王子殿下を襲った犯人については想像がついているのではありませんか」
 今回の出迎えには、本来ならば馬車の方がよかったのが、あまりにも物々しい雰囲気だと、かえって襲撃されやすくなってしまうのではないだろうか、という国王の判断のもと、騎士団長とアリアを除けば、十人にも満たない騎士で出向えの面子は構成された。ちなみに、アリアは昨年からセルドアに武術一式を習い続けていた甲斐もあって、騎士並みに一人で馬に乗れていた。
辺境伯の屋敷に着いた時、クロード王子は起き上がれて、ほとんど日常生活に影響が見られない程度にまで回復していた。
「クロード王子殿下、この度はリーゼベルツの大使として着任されるというのに、初っ端からご不快な気分を味わいなされたこと、誠に申し訳ございませんでした」
 出迎え団の最高位となる公爵令嬢のアリアは背後に騎士団長を従えた状態で土下座して謝罪していた。
「貴女がアリア・スフォルツァ公爵令嬢ですね」
 爽やかな声が頭上から降ってきた。
「左様でございます、殿下」
 アリアは必死に頭を上げたい感情を理性でねじ込んでいた。
(何、この爽やかな声は反則でしょう――)
 そんなアリアの葛藤を知らず、クロード王子は、
「お気になさらないでください。ちょうどあんたに会えて直接会話できてよかったと思っているんですよ」
 さあ、顔を上げてください、と間近でささやかれ、ビクッとなって彼女は跳ねるように顔を上げた。
(うわぁ、麗しすぎるでしょう)
 クロード王子の顔はゲーム内で見た時よりも数段素敵な人だと思った。しかし、次の瞬間、彼女は押し倒されていた。
「『さあ、選びなさい。我が娘か死か』」
 クロード王子の声は先ほどの爽やかな答えと違って、何かを芝居しているような口調だった。背後で、剣の柄に手をかける気配がした。
「止めなさい」
 アリアは両方に・・・言った。アリアは彼のただならぬ様子に、何かを感じていた。
「クロード王子殿下。もしかして、貴方はそれを犯人・・に言われたのですか」
 アリアはある可能性を持って尋ねた。
「はい、その通りです。あんたならわかってくれると思いましたよ」
「貴様」
 その飄々とした声に後ろから殺気を含む声が聞こえてきたが、アリアは何も言わなかった。
「で、犯人逮捕につながる証拠はあるのですか」
 彼女はクロード王子に尋ねた。彼なら持っているはずだ、と確信しながら。

「ええ、持っていますよ」
 彼はにこりと笑った。

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