転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「で、彼女たちは貴女に集合する時間と場所を違って教えられたって言っているけれど、本当なの?」
 程なくしてほかの接待部の侍女たちが見つかり、全員が王妃の部屋に連れてこられた。アリアとアーニャの同期の侍女たちは半分くらいが顔を青くしていたが、残りは流石というべきか、何故ここに連れてこられた、という疑問は浮かべつつも、自分たちが悪くはないというスタンスをとることにしたらしい。
「いいえ。彼女たちには正しい時間と場所を教えましたわ」
 接待部の最年長の侍女は白を切るつもりだった。アリアの隣でアーニャが切れる様子に気づいたが、アーニャさん、とアリアが声をかけると一度は落ち着いた。
「と、言っているけれど、何か二人は反論あるのかしら」
 王妃は、今度はアリアの方を向いて聞いた。本来ならば先輩に任せたいのだが、アーニャが喋ると感情から物事を言うのではないかと思い、アリアが代わりに話すことにした。
「はい。まず、私の方ですが、部署配属の会議の席順は指定制でしたよね」
「そうよ」
 最年長の侍女が部署配属の会議に監督役としていたのをアリアは覚えていた。
「その時私に配布された資料がこちらです、王妃様」
 と言って、王妃付きの侍女に配布された資料の部署毎の会議場所が書かれた部分を手渡した。接待部の侍女たちの顔つきが変わるのを見逃さなかった。
「そちらが、私に配られた資料です。その一部分、接待部の項目を見ると、明らかにおかしくありませんか」
「そうね。なぜ彼女にはこの場所を指定したのかしらね」
 王妃はそう問いながらも、面倒くさそうな顔をしていた。接待部のトップらしき彼女もほかの侍女たちも何も言わなかった。
「アーニャ様にはなんで別の部屋や時間を変更して言う必要があったのでしょう。アーニャ様の立場は公爵家の令嬢という一面もありますが、私とは違って、あまり目立っていませんし、何よりこの王国で必要な知識を吸収して戻って見えたのですよ」
 アリアは顔を変化させるだけの侍女たちにイラついていた。しかし、それでも彼女たちは何も言わなかった。アリアも言いたいことは言い終わったのでそれ以上は何も言わなかった。

 しかし、膠着状態が数分続いたのち、
「なんで、あんたたちみたいな楽して生きていける身分の人間が、こんな場所で働いているのよ」
 侍女たちの一人が金切り声を上げて言った。確か、彼女は貧しい商家の出身だったはずだ。
「少しでも稼がなければならない、一番いい方法は娼婦になること。でも、それだといつ家に戻れるかわからないし、二度と親に会えないかもしれない。それに比べたら、という言い方はいけないのかもしれないけれど、ここなら身元がしっかりとしていれば雇ってくれるし、お給金だって弾む。しかも、天上の人たちを垣間見ることが出来るのよ」
「そうです。いつでも天上の方を見ることが出来る人たちがこんなところにいなくてもいいじゃないですのよ。あなたたちは何が目的で、侍女になろうと思ったんですの」
 二人目の侍女が追撃するように言った。
「私は自分自身の運命を変えるかもしれないからです」
 アリアはその問いに、ある程度はカミングアウトしようと思った。その言葉に、王妃とアーニャ以外はギョッとした目でアリアを見た。
「どう意味ですの」
 先ほどの彼女がそうアリアに問うた。
「文字通りです。昔ある人にこれ以上悪くなると早死にするぞ、と脅されまして」
 その言葉にアーニャもまた、ギョッとした目で彼女を見たが、昔の彼女の噂を思いだしたのだろう。少し遠い目をしていた。
「そ、そうなんですの」
 質問してきた彼女もまた、遠い目をした。
「では、アーニャ様は」
 ほとんどアリアを知らない侍女は、王妃とアーニャの反応に目をぱちくりさせていたが、すぐさま気を取り直して、アーニャに尋ねた。
「わ、私は公爵令嬢って言っても次女です。後継ぎの可能性の高い正妻の長男や長女と違って、二番目以降は全て予備です。貴女たちにはわからないかもしれませんが、二番目以降の面倒はあまり見てもらえませんのよ。それに少しでもいろいろなことを知ろうと思うと下級侍女ここの方が役に立つのよ」
 アーニャは、最初は先ほどのアリアの勢いに押されていたが、はっきりと自分の意思を言った。その言葉に嫌がらせをした侍女たちは顔を見合わせ、何やら声を潜めて話し合っていた。その様子にアリアがやきもきしていると、アーニャがアリアの手をそっとつかんだ。アリアは彼女を見ると、彼女はにっこりと笑った。彼女は、ありがとう、と声にはしなかったが、そう言っているのがアリアにはわかった。

「アリア様、アーニャ様。この度は大変ご迷惑をおかけしました」
 小声での話し合いを終了した侍女たちは、全員でアリアとアーニャ、そして王妃とそのおつきの侍女に謝罪した。それに対して、アリアたちも彼女たちを許すとともに、王妃たちに迷惑をかけたことを謝罪した。
「構いませんのよ。しかし、久しぶりに良い交流・・が見れて嬉しかったわ」
 王妃はそう言い、片目を閉じた。
「まあ、今年いっぱい仲良く協力してやって頂戴」
 と王妃は続け、さらに、
「今年は、セリチアから新たな外交官が来ることになっているから、また歓迎パーティーを表と合同でやってもらいますよ」
 と続けた。
(『新たな外交官』かぁ。ではないといいな)
 そうして、波瀾に満ち溢れる二年目の、まだ序の口にすぎないひと騒動が落着したのだった。

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