転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「えっと、申し訳ありません、貴女は――?」
 アリアは目の前のナイスボディな赤い髪色の巻き毛美人に恐る恐る尋ねた。アリアの勘が正しければ、この人は――
「アーニャ・バルティアよ。バルティア公爵家の次女の方よ」
 アリアは、そういえば、このお姉さまの年齢は自分よりも上だったはず、と思った。攻略対象の一人であるアラン・バルティアはアリアよりそもそも2つ下であり、貴族の名前と爵位を覚えているときに、貴族年鑑を見ていて、バルティア家の項目では3人の姉の名前も出てきていて、確かに2人目がそんな名前で、彼女は確か彼よりも4つ上だと書いてあった気がする、と思い出していた。
「お初にお目にかかります、アーニャ様。私は―――」
「アリア・スフォルツァ公爵令嬢ね。初めまして」
 赤毛の彼女、アーニャ・バルティアはにっこりと笑った。
「貴女の噂はいろいろ聞いているわよ」
 そのアーニャの言葉にアリアはたじろいだ。というか、どんな『噂』なのかが怖くて、冷や汗が背中を流れた気がした。
「大丈夫よ、悪い噂だけではないから。貴女が行ってきたことについてすべて聞いているわ」
「そうですか」
 アリアは少し安堵するとともに、しかしなぜ、去年彼女に会わなかったのか不思議でしょうがなかった。これだけの目を引く美人だったら、喩えアリアでなくても覚えていそうな気がするが。
「あの」
 アリアは他人の事情に首を突っ込むのに少し躊躇ったものの、結局誘惑に負けて聞いてみることにした。
「何故、アーニャ様は昨年王宮におられなかったのでしょうか。王宮にみえたのでしたら、アーニャ様ほどの方はすぐに気づいた、と思うので、差し支えなければ教えていただけませんでしょうか」
 アリアが躊躇いがちに、でもはっきりと聞いたその疑問に、アーニャは、
「去年はクロイド帝国まで行ってそこのマナーの勉強をしていたのよ。で、この前の夜会の直前に帰ってきたけれど、体調を崩して出られなかったのよ」
 と言い、にっこりと笑った。
「本当は貴女と事前におしゃべりしたかったけれど、少し・・過密日程だったから、会えなくて残念だったわ。でも、こうして接待部に来てくれたから、これからはおしゃべりする時間が増えて嬉しいわ」
「そうでしたか」
あけすけに彼女に好意を持って接してくれるのは、ありがたい話だった。そうやってアーニャと話していたアリアだったが、あることにふと気づいた。
「そういえば、他の皆さんは?」
 そう、この部屋にはアーニャとアリアしかいなかった。アーニャもそれに気づいて、
「そうね。あと私の同期が2人と先輩侍女が3人いるのだけれど、おかしいわね」
 と言った。軽く言った彼女だったが、そういう彼女の目は笑っていなかった。アリアもまた、この事態に目を据わらせた。
「貴女の同期で接待部ここに配属された子は何人?」
「2人です。両方とも男爵家出身です」
 アリアはついでに出自も言っておいた。
「そう。私がここに来たのは、公爵家の中でも跡取り以外スペアの存在だから。貴女は?」
「私は自分の運命を変えるためです」
「運命?」
「はい」
 アリアは、初対面である彼女にそれ以上何も言えなかった。
「そう。まあ、その話はここまでにして、おそらく私の同期や先輩も同じ、伯爵令嬢以下の爵位若しくは平民出身の方だわね」
「なるほど」
 少し話が見えてきた。恐らくは、高位の貴族である(しかも片方は超有名人で、もう片方はつい先日まで留学していた)二人に、ここは生半可な気持ちじゃやってけねーぞ、的な何かで、先輩方はご指導・・・してくださっているのかもしれない。
「どうされます?」
「ただ、黙って泣き寝入りするのは可愛がってくださっている方々に、申し訳ありませんね。少し強硬な手段取りたいのだけれど、貴女は自由に王妃様に謁見できる立場?」
 アーニャは少し考えるふりをしたが、すぐにアリアに逆質問した。
「難しいかと」
 アリアは自分の力量というものを分かっていた。アーニャはアリアの答える速さに驚きつつも、
「じゃあ、強行突破・・・・で行きましょう」
「はい」
 二人は今日が初対面のはずなのだが、これでもか、というほど息が合っていた。

「それで、私のところに来た、と」
 部屋の中央奥で王妃シシィは難しい顔をしていった。彼女たちは『公爵家』という身分権力を使って王妃に直接アポなしで訪問したのだ。アーニャ曰く、こういった事態にならない限りは本当は公爵家の力なんて使いたくなかった、とのこと。アリアもそれは同感だったので、何も言わなかった。
「はい」
 今回、王妃とのやり取りをするのは先輩であるアーニャにお願いした。
「で、彼女たちがやったという証拠はあるの?」
「いいえ」
 王妃の質問に淡々と答えていくアーニャ。アリアはそんな彼女の姿を見て、自分も見習わなければ、と思った。
「では、貴女たちの主観だけじゃ何ともならないわね」
 王妃は難しい顔をしていった。すると、隣にいた年嵩の侍女が王妃にそっと言った。
「では、彼女たちをここへ呼んでくれば良いのではありませんか」
「確かに。貴女たちは彼女たちがどこの部屋を使っているのか想像つきますか?」
「はい」
 アリアとアーニャは顔を見合わせて頷いた。
 これから、侍女生活2年目の戦いが始まる合図だった。

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