転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 叫んでしまってから、あここは王宮だった、と気を取り直したが、国王夫妻はなぜかにこやかな視線を投げてきたが、エレノアは当然冷ややかな目でアリアを見ていた。
 しかし、国王と話していて、どうやら先ほどの言葉は本心ではないのだろうか、という気もしてきていた。なぜなら、フレデリカに怯えてきた王太子だ、せめてしっかりした嫁が必要で、それに該当したのがアリアだったからなのではないのか、と思ってしまった(アリア自身で思うのはどうかと思うが)。だが、アリアはそれに待ったをかけた。
「国王陛下、王妃陛下。両陛下のお気持ちはわかりましたし、私もいずれこうなる可能性があるのではないかと思いました。なので、いまは特別好ましく思っている方もいませんし、私の事情としては問題ありません」
 アリアはもうひと押しで決まる、という状態だった空気を一変させる発言をした。
「アリア」
 エレノアは反論した娘を嗜めた。アリアも本来ならばこのような真似をしない。しかし、二つ引っかかっていることがあったので、それもついでに確かめたかった。国王はアリアを遮ろうとしたエレノアを目で制し、続きを促した。
「この婚約をするにあたって、二つ分からないことがあるので、お伺いいたします。まず、スフォルツァ家は古くから続く家柄であり、母以外にも過去に何人もの方がスフォルツァ家に嫁いできています。これ以上王家とスフォルツァ家の血のつながりは必要なのでしょうか」
 アリアが『涼音』として普通の高校生だった時に、歴史マニア(歴女)でもあった。習い事の関係でその歴史に触れることが多く自然と好きになっていたのだが、その中でも古代史が好きだった彼女は天皇家の女性関係についてよく調べていた。そのなかで、特に古代において大貴族は娘を挙って天皇(もしくは皇太子)に嫁がせる、という事は日常茶飯事だったみたいだ。しかし、姉妹をそれぞれ同じ男や兄弟、果ては親子に嫁がせるという事まで行っていたのだから、相当その子供は血が濃かったのだろう、と思い、また、そこまでして権力を保ちたかったのだろう、と思ってしまったりしていた。
 そして、今。この王国は500年ほど続いており、スフォルツァ家も建国当初からある家なのだが、現在に至るまでその名門さ・・・・・を保つためなのか時々王家から輿入れしてくる女性もいるし、反対に王家が窮地に陥ったときは、王家へ輿入れした女性もいた(しかし、そこまでしているのになぜ、大派閥を持っていなかったのかを先祖に問いたくなったアリア涼音であった)。そのため、彼女は、たとえ政略結婚であっても王家に嫁ぐ必要性を感じていなかったのだ。
 その問いに国王は、
「確かに、其方の言うとおりだ。エレノアはじめ数多くの女性が王家とスフォルツァ家をいききしておる。もちろん、他の貴族だったら権力を欲するものが多く、スフォルツァ家みたいに長続きはしなかっただろう。しかし、其方らの家は一部の者を除いて・・・・・・・・・権力を求めてはおらん。だからだ」
 彼はきっぱりと言った。確かに、『驕れる者も久しからず』だ。この家が長続きしているのもそれが一因なんだろう。
「して、二つ目の質問は何かね」
 少し考え込んでしまったアリアは国王の声にはっとなった。
「あ、申し訳ありません。もう片方は、確認というよりもお願いなのですが、王太子殿下の意向を直接確かめさせていただけませんでしょうか。あと少しすれば、王宮夜会で王太子殿下のパートナーを務めさせていただきます。その時に、王太子殿下の意向を直接聞いてお返事させていただいてもよろしいでしょうか」
 アリアは必死に言った。意向を直接確認するにも、じゃあ、今この場で確認したら?と言われかねなかったので、必死に王宮夜会まで先延ばしにしてもらおうと思ったが、
「では、今確認してみればよいのでは」
「そうですわね。今でしたら休息の時間に当たっているはずです。これ、クリスティアンを呼んできなさい」
 王妃が扉の外に控えていた侍女に指示した。
(うっわぁ。しまった、かなり計算ミスかも)
 アリアは自分の計算違いにげんなりとしながらも、王妃とエレノア母親同士の会話に耳を傾けていた。
「本当に変わったのね」
「ええ、おかげさまで」
 アリアの過去をあまり知らなかった(もしくはかなり隠されていた)王妃は、アリアの回転の速さに感心していた。
「しかし、少し急だけれど、ダリウスも来年デビュタントさせようと思うの」
「ダリウス様ですか」
 ダリウスとはクリスティアン王子の弟だ。そして、本来の『ラブデ』内において将来リリスがつかるはずの王族、アリス王女の息子だったはずだ。
「ええ、そうなのよ。もう少ししたら、こちらのやらねばならないことも終わるわけだし、ね」
 意味ありげに王妃がアリアを見た。
「それに、頼れるお姉さんがいることだし」
 と王妃が言ったところで、部屋の扉がノックされた。

「クリスティアンです」
 まだ変声期前の幼い声が聞こえて、王妃自ら扉を開けに言った。
「入りなさい」
 扉の外にいた少年を見た。彼は――黒髪碧眼の少年で、かなり顔面偏差値は高い方みたいだった。アリアは前世涼音だった時において、恋愛経験は乏しいが、嵌っていた物語の主人公によく似ている、と思った。アリアとエレノアは立って彼に礼をとった。
「お初にお目にかかります、クリスティアン王太子殿下」
 アリアが淑女の礼をとったら、彼は驚きに目を見開いて、
「あ、ああ。初めて・・・だな」
 と言った。その言い方に少し引っかかりを覚えたが、二人の挨拶に呆気に取られていた大人たちの内、王妃が、
「あら、長いことあっていなかったから、忘れてしまっているのね、二人とも・・・・
 と笑っていった。
(え)
 アリアはその情報にギョッとした。が、そんな感情はすぐに打ち消されることになった。

「父上、母上。どうやら、この元の結婚話をなされているようですが、俺はお断りいたします」
 クリスティアン王子はそう言った。
(さて、ここからどうしましょう、ね)
 まさか『ゲーム補正』があるとは思わなかったが、本当に・・・断られると思っていなかったアリアは、内心困惑していた。

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