転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 翌朝、アリアとエレノアは共にある場所へ行こうと考えていたが、彼女たちが出かけるよりも先に、まさに会いに行こうとしていた人物がセレネ伯爵の屋敷に訪れた。
「ディート伯爵」
 エレノア自らディート伯爵――クレメンスを迎えに出た。
「これはスフォルツァ公爵夫人、いえ、スフォルツァ前公爵夫人自ら出迎えてくださるとは、光栄です」
 最初は厭味ったらしく聞こえた、流れるような挨拶も、最近では何も感じなくなってきた。
「あら、ちょうど会いに行こうと思っていましたのよ、ディート伯爵。そして、何故、私の称号が変わっているのかしら」
 エレノアもアリアも、そして、その場にいたセレネ伯爵も気付いていた。
「そうですよね。あなた方は、昨日の晩王宮で何が起こったのか、この王都の下町にいてはわかりませんよね」
 クレメンスは目を細めて笑った。そして、その詳細を語ってくれた。マグナムを捕らえたものの一人であり、エレノアに組していたフェティダ公爵ユージンは、マグナム父親とは反対に当主位をはく奪され弟のデビトが当主の座に就いた、という。
「そうでしたか」
 エレノアは話を聞き、少し考えるような仕草をしたが、納得いったように、頷いた。アリアもセレネ伯爵もまた、昨日の晩、王宮で何があったのか実情を理解して、セレネ伯爵の無実がきちんと・・・・証明されたことに胸をなでおろした。しかし、フェティダ公爵家当主が弟のデビトに変わったという事については、少し引っかかるものを覚えた。そして、攻略対象であるユージン前当主の息子がどうなったのかが気になった。

(これはある意味、騎士団長に申し訳ないことをさせたわね)
 マチルダの兄である騎士団長と父親を会わせることについて、とても葛藤した。しかし、今回のような事件が起こったときに協力してもらわねば困る、と思ってあらかじめ頼んでおいたのだが、本当に実行してくれる人だとは思っていなかったのだ。しかし、昨晩ふと思ったことがやはり心の底に引っかかっていた。
(まだ、それ・・がそうだと断定されたわけじゃないけれど、それも念頭に入れて行動しないとだめね)
 悪役令嬢であるアリアは『涼音』の記憶を覚醒・・し、主人公であるベアトリーチェ、異母弟であるユリウスと邂逅し、自分自身の意識の持ち方や彼女たちをはじめとする人とのかかわり方をこの二年間学んできた。そして、まだ不完全であるが、アリアと同じ悪役令嬢であるミスティアはすでに、母フレデリカに対して、冷めた態度をとっているので、問題はないと思うが、曲がった貴族根性がなかなか治らず、エレノアとともに諦めかけていたリリスは今回の事件で、少しでも気づけたのではないかと思い、やはり彼女の根性を完全に改めさせたい、という思いが出てきた。かなりゲームバーチャル内のシナリオとは違ってきているが、ここからも気が抜けない状況だった。

「ねえ、ディート伯」
 エレノアはセレネ伯爵と話していたクレメンスに問いかけた。
「何でしょうか、夫人」
「今回の主人の隠遁劇は王宮での勢力関係に当然関係あるのよね」
 エレノアは悲嘆するわけでもなく、ただ淡々と尋ねた。
「そうですね。もともと国王の取り巻き貴族というものはありませんが、フレデリカを毛嫌いする連中は多く、ほとんどは公爵自身ではなく、スフォルツァ前公爵夫人――すなわち、エレノア様に付こうとするのが多かったものの、公爵は今回の騒動である意味フレデリカの犠牲になったので、多少の同情票としてこちら側に付く輩が増える、というぐらいでしょうか」
 クレメンスは一人でうんうんと言いながら、そう言ったが、アリアにはそう思えなかった。一時期は多少増えるかもしれないが、仮にもスフォルツァの当主が隠遁し、まだ6歳のユリウスが当主になったことで、今まで出来ていたことが出来なくなる、というという事もあるだろうし、表ではこちらにすり寄ってくる人間がいるだろうが、反対に裏で取引をする連中が多くなるだろう。そして、なによりスフォルツァ公爵家と同じように当主交代したフェティダ公爵家がどう出てくるかが気になった。

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