転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 ―――そのころ、王宮の一室
「どういう事かな」
 あくまでも表情・・はにこやかである男は、自分と対等な爵位を持つ人間にそう言った。
 現在、スフォルツァ家当主マグナムは王宮の一室、彼の執務室の近くに監禁されていた。捕らえられたときに手を下した人間の顔は見ていなかったものの、彼をそこそこ丁重に扱う事や、家族を交換条件にしていないことから、おそらくは国王の派閥の暴走、という事ではないのはわかっていた。

(しかし、あいつらもここまで汚くなっていたとは、ね)

 彼は昔、公爵位を投げ出そうとしていた人間だ。それをエレノアに助けてもらったのに、針子の一人、マチルダに手を出した。しかしその後、愛のない結婚をしたために、結婚相手から凄惨な扱いを受けていたマチルダとその息子を助けたのは娘のアリアだった。
 一方、スフォルツァ家を『大派閥』にのし上げ、自ら働かなくてもよいようにしたのは妹のフレデリカだ。しかし、まず、1年と少し前に、娘のアリアが何か・・に目覚め、きちんとしだした。そんな彼女に触発されたのか、今までおとなしく、自身が王族でありながら『名門の家柄であることを鼻にかけてはいけない』ことを教えてくれたのは、妻エレノアだった。特に最近一年間の働きぶりは男であるマグナムと同等、いやそれ以上であり、フレデリカ関連の事には彼も頭を冷やし、最近では散財が激しく傲慢さが目立つリリスではなく、しっかりとしたアリアの方を可愛がるようになっていた。
 そんな彼の変化に気づいたのだろう、フレデリカと彼女の周囲はマグナムを放っておくわけがないと常日頃から、警戒はしていたものの、この新年の夜会の直前で仕掛けてくるとは思わなかった。

「僕としても貴方様を解放してあげたいのはやまやまですが、僕も『家族』というものがありまして、貴方を解放するわけにはいかないのです」
 目の前の男は――ユージン・フェティダ、デビト・フェティダの兄であり、フェティダ公爵家当主は背後にガラの悪い男引き連れながらそう言った。彼自身は、そこそこ見た目が良いゆえに、アリアが見たら、どこぞの世界で言うホストがチンピラを引き連れている様子を想像させそうな構図である。
「ほう、落ちぶれているフレデリカにくみすることがフェティダ家に有益、と」
 マグナムは冷ややかに見ながら言った。
「ふふ、ええ。僕の弟があの御方と懇意でして。強いて言うならば、貴方がたスフォルツァ家と王家のようなものですよ、いいえ、これからは――」
 ユージンが喋っている間に何者かが扉の外に来た音がしたので、彼や背後の連中はそちらの方に気を取られていた。マグナムの方も、この短時間で、しかもある意味スフォルツァ家の恥さらしのような自分を助ける輩がいるとは考えていなかったので、フレデリカの一派予期せぬお客さんがまた増えたか、と内心焦ってはいたが、どうにもならない状況ではあったので、半分以上諦観していた。
 しかし、予想外の事態は扉側ではなく、扉と反対側にあった小さな窓から起こった。
「よっと――」
 窓が外側から割れ(とっさにマグナムは窓から離れた)、長身の男性が入ってくると同時に扉が開き十人前後の男が入ってき、ガラの悪い連中をとらえていった。そして、最後にユージンも捕縛された。
「な、何をする?」
 ふいに腕をつかまれたことに対して、ユージンは捕らえた男に怒ったが、彼らはびくともしなかった。
「我々はスフォルツァ公爵閣下に危害を加えようとしている物をとらえただけである」
 彼の腕をとらえた男の内の片方が無表情でそう言った。
「牢へ連れていけ」
 廊下側で指揮を執っていた、一番位が高そうな男は現場の男たちにそう言った。その言葉に全員が無言でうなずき、そのまま地下牢へ連れて行くために部屋を出て行った。

「助けに入るのが遅くなり申し訳ありませんでした、スフォルツァ公爵殿下」
 残った指揮官は彼の前に跪いた。
「いや、助かった。こちらからは礼を言わせていただこう。しかし、何故ここにいるとわかって、私を助けに入ろうとしたのだ?」
 マグナムは一番理解できないことを言った。その男は笑って、
「貴方のご息女、アリア姫に頼まれたからですよ」
 彼は笑った。そして、こう付け加えた。

「僕は貴方のことを許していませんがね」

 セルドア・コクーンは剣の切っ先をマグナムに突き付けていた。

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