転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「アリア、それで国王陛下とのお話はどうだった?」
 国王との会談の後、自宅に戻ったアリアは待ち構えていた母親に捕まった。アリアとエレノアは談話室へ移動し、そこで何か暖かいものを飲みながら話をすることにした。
「王妃様の下級侍女に任命されました」
「シシィの?」
「はい。陛下の話からの推測でしかありませんが、おそらくは王妃殿下からの入れ知恵、もしくは王妃殿下によって試されているのではないでしょうか」
 アリアは国王と話していて気になっていたことを伝えた。すると、エレノアは眉をひそめ、
「どう意味かしら?」
 と尋ねた。
「おそらくは、ですが、国王陛下は何かを思案するように私と話されていました。というか、すでに決定したことに対して、それで本当に良かったのか、というような感じで迷われていると言った方がいいのでしょうか」
 アリアはそこでいったん一息入れた。
「これも推測でしかなりませんが、おそらく依然、王族の方々の間で私の話題が流れたのでしょう」
 この言葉を聞いて、エレノアは納得いったように頷いた。
「なるほど。以前のあなたとあまり違うから、驚かれてしまったのね」
「ええ、ごく一般的と言えるのかわかりませんが、たいてい男性は現物もしくは金と引き換えられるものを人に与えようとします。ですが、女性は対照的に形に残らないものを人に与えると思いませんか?」
 アリアは少し『前世』でのことを思い出していた。自分涼音は彼氏と呼べる存在がいなかったが、彼女の周りではそのような傾向がったので、なんとなくそんなんであろうことを言ってみた。そう力説した彼女をエレノアは少し驚いたが、今までの娘の行動をすぐに思い返し、落ち着いた。
「そうね」
 母親の気持ちを知らないアリアは、そんな母親の落ち着いた答えに驚いた。
「なので今回、本来は何か形に残るものを国王陛下は私に渡したかったんだと思います。しかし、どこかで王妃殿下が国王陛下に頼みこみ、私を『王妃付きの下級侍女に任命する』という形に残らない報酬を与えたと思うんです」
 淡々としゃべる娘にいつもながら驚くエレノアだったが、この時は少し恐怖を持った。
「なので、今回の話は私にとっても悪い話ではありませんし、あの女に対していい牽制となると思いませんか」
 アリアは少し先の話をすることにした。
「そうね、あの女がすぐにぼろを出すとは思わないけれど、いつかの時の牽制…切り札にはなるわね」
 エレノアはその『切り札』という言葉に抵抗を感じているようだった。確かに、アリアにとっても実の子供が、自分たち一家を守るために自ら危険な場所に飛び込んでいってほしくはなかったので、母親の気持ちもよく分かった。
「はい。なので、ミスティア王女殿下のお相手含めてしばらくの間王宮に上がることにします」
 王宮の侍女は階級問わず、全寮制に似た住み込みなのだ。たいていの場合、貴族の子女は花嫁修業の一環で来るので、はやくて数か月、長くても一年くらいの間共同生活を送ることになるが、下級侍女から始まる本格的な王宮仕官コースは、たいてい一年から数年にわたることが多い。なので、今回のアリアの場合もそれに準じた扱いになるであろう、と予想できた。
 自分が『転生者』だとしってから、アリアは貴族としてのマナーは一通り逃げ出さずに受けてきた。その甲斐もあって良い意味で『最も貴族らしい娘』という評判も出てきた。そして、今回のことについてもマチルダとユリウスを保護して、そこから貴族や騎士団の人脈を引き出すことに成功している。しかし、それだけでは今のアリアは不十分だと思っていた。『前世』ではある程度の家事はこなせたが、この世に来てから、そういった類のことを一切していない。今回下級侍女の役割でどこまで、こなすことになるのかはわからないが、もしかしたらそういった類のことも必要になってくるかもしれない。それに、とアリアは思った。もしかしたら、国王夫妻の思惑の中には別のことも含まれているのではないかと思った。
 そう思いながら、王宮に上がる日まで、ずっと公爵家の中で過ごしていた。

 そして、王宮に上がる日がやってきた。
「では行ってまいります」
 アリアは10才の子供が持つのには少し大きい鞄を持って、王宮へ向かう馬車に乗り込んだ。

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