転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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※王宮の食堂にて
 アリアが国王と会話した数日前、デビュタントの夜会の翌日の夜――

「あなた」
 シシィ王妃は国王と晩餐を共にしていた時にその話を切り出した。国王は、どうした、と己の思考を中断されるのを厭うように尋ねた。昨晩の夜会にて王国の膿を絞り出すきっかけを作った母子に与える褒美を国王は考えながら今日の一日を過ごしていたため、とても廷臣たちの意見を聞くことができる状態ではなく、一日自室に引きこもっていた。
「一つお願いがあります」
「アリア・スフォルツァ嬢の事か」
「はい」
 国王夫妻は以前の・・・アリア・スフォルツァのことを知っていた。というか、王族であるエレノアの娘であったので、話題に上ることも多かったのだ。
「もちろん、最近の彼女の起こしてくれた行動によって、あの女・・・の一派を片付けることができるとは思います」
「そうだな」
国王は妻の言葉に確かに、とうなずいた。
「しかし、彼女は、以前はあのようにお淑やかな、というのか、貴族としての振る舞いを身につける気配はいっこうにありませんでしたよね」
 シシィの言葉に国王は無言で肯定した。
「はっきり言えば、私はまだ疑っています。エレノアはあのようにアリア嬢を立てていますし、ディート伯とコクーン卿も彼女に入れ込んでいるようでしたので、もう、二度とあのような態度はとらないであろう、と安心したいです」
 国王は無言のまま食事をつづけた。
「もちろん、疑うためではありません。しかし、私はあの子の本気を知りたいです」
「本気とは?」
 ここで初めて、国王は食事する手を止めた。
「公爵家の姫であるアリア・スフォルツァ嬢が、しがない・・・・伯爵家出身であるわたくし王妃の下級侍女という身分、そして下級侍女に与えられる役目、それをこなせるか試したいのですが」
 シシィは緑色のその瞳を伏せてそう言った。国王は王妃のその発言に少し考えたのち、
「なるほど。確かにそれも一理あるな」
「はい」
 国王の言葉に王妃はよろしくお願いします、と言った。

(確かに、あの令嬢を確かめる、か。いい機会なのかもしれぬな)

 国王には、ひそかに考えているある案があったが、それにはかつて愛人だったフレデリカの存在がかなり邪魔だったのだ。そして、

(早く第一王子、第二王子の両方を早く成人させねばな)



※とある貴族の屋敷にて

「どういう事よ」
 女の金切り声が屋敷に響いた。
「フレデリカ様、まだ大丈夫でございますれば」
 一人の若い男が先ほど叫んだ女をなだめた。男は長身で紺色の髪を持ち、物腰が柔らかそうな印象を持っていた。
「何が『大丈夫』よ。あの女と・・・・その小娘・・・・にしてやられたのに」
 フレデリカ・スフォルツァ、ブラッケンベリヒ伯爵夫人は国王の愛人だ。現在例の夜会にて、もともとおとなしかった性格で、以前はフレデリカに頭をホイホイ下げていたエレノアが、王族としての立場からか、誰にでも媚びへつらう態度を直し、あのような公の場で自分エレノアの事ことを親友だと思っていた侯爵夫人を断罪するとともに、一部の貴族がセリチアに通じていた証拠を提示するとは思いもよらなかったのだ。それによって、フレデリカはただでさえ王宮にあがるのが面倒だと思っていたところに、輪をかけて長居したり、密談するのには不適だと思ったため、ある伯爵の家を借りて密談させてももらっている。

 6年前にある夜会に周囲の思惑もあり、憧れていた国王に近づいた。その後、国王をしばしば誘惑し、ベッドへ誘い込み、色仕掛けを駆使し、陥落させた。そして、実家であるスフォルツァ家を政界の大派閥にまで押し上げた。
 大派閥に押し上げた後も、王の寵を受け続け、すぐに妊娠し、娘であるミスティアを産んだ。伯爵家出身である王妃の元には男児が二人いたが、公爵家の姫であるフレデリカの息子・・を次期王位につけたいという高位貴族や高位聖職者ら周囲から、男児を産むことを期待されていたがために、媚を売っていた貴族たちは落胆し、再度息子を産めとフレデリカに詰め寄ってきた。しかし、フレデリカ自身はすでに子供を産む気はなく、自分の権力や色気は使うものの、周りの熱意を乾いた眼で見ていた。しかし、ミスティアを産んだ時から、すでに王の寵愛は衰えており、自分の色気になびかない国王に苛立ち意を見せるとともに、男児を産む気はなかったものの、権力は欲しく、ミスティアを新女王に担ぎ出そうとしていた。
国王の従姉の娘であり、自分の姪に当たる兄、マグナムの娘二人は最初はいいカモであり、自分の派閥に組み込んで、ミスティア親衛隊を作ろうとしていたが、ある時を境に、姉のアリアが貴族らしさ・・・・・をやめた・・・・。周囲の人はそれをいいことだと、誉め称えたが、フレデリカにとってみれば、アリアの目覚めは痛手であった。さらに、つい最近、フレデリカの派閥に属する貴族の一部が隣国の内部分裂を利用して隣国王子を利用しようとしていたのが発覚した。そのときは、一部の貴族が暴走した、と釈明すればよかったが、頭数が減ったのと同時に、ブレーンと呼べる存在だったのが痛手であった。

「隣国の内部分裂に首を突っ込むことはもうできませんが、あの公爵家に内部分裂を作れば、国王とて甘く見過ごすことはありませんでしょう」
 長身の彼、デビト・フェティダ――フェティダ家現当主の弟であり、先日がデビュタントだったマクシミリアンの叔父は薄く笑った。
「何をする気なの?」
 フレデリカは、今ではスフォルツァ家唯一のフレデリカ派異端児であるリリスの心配をしていた。そんな彼女の心配を見透かしたように、笑った。
「大丈夫ですよ、リリス姫には迷惑はかけませんから」
 その言葉に、フレデリカは安堵した表情を見せた。

(本当に素直に・・・表情が出る方だ。それが命取りになるのも知らずに。まあ、せいぜい儚く散っていただきましょう。そして、そのためにあなたを利用させていただきますよ、アリアさん、そしてまだ見たとこもないユリウス君)

 その貴族の屋敷から自宅へ戻る道すがら、デビトはそう思った。

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