転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 その後、その年の社交シーズンの開始である夜会は散々な状態になり、退出者が続出したため夜会自体がお開きとなった。その様子を国王たち王族がにやにやと見守っている姿を最後の方まで残っていたアリアには確認できた。
 まあ、あの状態で続けようとはだれも思わないし、実際聞かれていた時間よりも早く終わった感じはしていたので、特に驚くようなことではなかった。

「で、褒美として、其方には王妃、シシィの下級侍女として仕えて、より一層の社交の知識を身に着ける場を広めてほしい」
 後日アリアは国王に呼ばれ、王宮へ上がっていた。そこで、国王からとんでもないものを聞かされたのだった。
「お待ちください」
 本来なら、臣下であるアリアに国王への口答えは許されていないかったものの、国王の突飛な・・・発言に思わず言ってしまった。すぐにおのれの失言に気づいたアリアは、すぐさま今の発言を取り消すべく、頭を下げ、口を開き、
「あ、も、申し訳ござ…」
 と謝ろうとしたが、
「面白いな――」
 国王のその言葉に、許可を得ていない、という事も忘れて頭を上げてしまった。
 国王はアリアを見ながら、にやにや笑い、
「其方が、男児ならばどれだけ面白い・・・ことになったことか…」
 と言った。その言葉にアリアは首をかしげた。
「くくっ」
 その様子に国王は笑った。その言葉にアリアがますます疑問に思っていると、国王は、
「其方と同年代の貴族の子息がもう間もなく官吏見習いとして、参内する。今年がデビュタントだったフェティダ公爵の息子をはじめ、すでにデビュタントを済ませているベゼリア侯爵、スレイディナ侯爵、バアラシアナ伯爵の息子あたりがそろそろ未来の宰相候補として、内務庁に配属される。本来ならば、バルティア公爵の息子にも、文官として仕えてもらいたかったが、彼たっての希望もあって、武官になったから、せめて近衛騎士になってもらうつもりだよ。おそらくはその彼らと肩を並べられるくらい君は外の事情にも詳しいみたいだが、いかんせん、男児でなければ官吏になれない、という悪法・・のせいで、其方の活躍を妨げることになってしまったよ」
 と正答を述べた。その答えにアリアは瞠目した。彼女が今回したことは、女性のネットワークなら使えることだが、男性社会において使う価値のあるものではないと無意識に思ってしまっていたからだ。
「我が愚息も本来ならば今回デビュタントとさせるべきだったのだろうが、私が間違ってしまったばっかりに、フレデリカ一派を助長させてしまった。あいつらにとって正当な出・・・・である・・・クリスティアンは目の上のたん瘤だ」
 国王は王族の内部事情家庭事情を話し出し、アリアは少し、いや、かなり焦っていた。自分はいくら王族に近い立場と雖も、聞いていい話ではないだろう、と思った。しかし、そんなアリアの内心に当然国王が気づくはずもなく、続けた。
「あいつらはここ最近、どういう手を使っているのか知らないが、積極的に・・・・クリスティアンを排除するようになってきた」
 その発言には、アリアもさすがに耐えられなくなってきていた。
「だから、こないだも万が一夜会で死人を出すわけにはいかなかったので、愚息を表に出すわけにはいかなかった。できることならば、この一年の間にあいつらとの決着をつけたいと思っている」
 国王は目線だけで、アリアに可能かどうかを尋ねてきた。それに対し、
「半分は可能だと思います」
 とだけ答えた。まず、些末の貴族どもはこないだの夜会での膨大な証拠があるので、処罰はされるだろう。ただ、中ボスクラス――どこぞの宗教で例えると、司祭クラスまでなら今のスフォルツァ公爵夫人エレノアにも手を出せるのだが、それ以上のランクには手を出せない。
「ならば、その半分だけでも達成しよう。今、其方は10歳。『公爵令嬢』という立場からすると、親に勝手に婚約者を定められても仕方ない立場だろうが、レーン――其方の母親はそれをしていない。ならば、それを利用させてもらってもよいか?」
 国王はあえて問いかけの形をとった。アリアの心はすでに決まっていた。
「もちろんでございます。シシィ王妃殿下の一侍女として貴族社会の役に立てつつ、国王陛下の役に立てれば幸いと存じます」
 その返答に国王は満足したように笑った。その笑みはどこか寂しそうな笑みでもあった。
「其方の働きに期待する。ところで」
「何でございましょうか?」
「我が娘、ミスティアとこの後会っていかないか?」
 最近ミスティア王女に会っていなかったことをいまさらながら思い出したので、その提案に、迷うことなく快諾したアリアだった。

「アリアお姉さま」
 ミスティア王女の部屋は以前とは異なり、あの女フレデリカが入り浸っていなかった。まあ、この前の夜会の影響で、王宮に引きこもってふんぞり返っているよりも貴族の家にいて、作戦会議密談しているのであろうとは容易く予想できたのだが。
 ミスティア王女はアリアが部屋に入るなり、抱き着いてきた。
「王女殿下。ここはまだ侍女たちがいますので」
 と言って、彼女を軽く引きはがし、改めて挨拶を行った。そんなアリアの様子に、ミスティア王女もまた、寂しそうな笑みを浮かべていた。
「お姉さまはどんどん私の手の届かない場所に行ってしまいますのね」
 まだ、5歳の王女からしてみればそのように取れるのだろう、とアリアはあいまいに笑っておいた。
「最近何かが変わって来ているみたいですわね」
 ミスティア王女は夜会のことは知らされていないのだろう、『何か』というあいまいな言葉を使ったのだと、アリアは驚いた。
「もし、あの母親を消すの・・・・・・・・に私が足枷になって・・・・・・・・・いるのでしたら・・・・・・・私ごと消し・・・・・てください・・・・・、お姉さま」
 窓の外を見ながら言われたその言葉に、アリアは固まった。恐らくは夢占いの力でも使ったのか、侍女たちから漏れ聞いたのか。そんな彼女に、ゆっくりと首を横に振りながら、
「ミスティア王女殿下。あなたの母親を断罪することはありましても、罪のない殿下を断罪することはできません」
 アリアはあえて、フレデリカのことを名前でも、今の身分でも呼ばなかった。
「殿下は必ずお守りします」
 彼女は微笑み、そう言い切った。

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