転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 その黒髪の女性――エンマ・ツィタ・エル・ベディコア・フォンデンブリアはその女性にそう言った。
「わ、私は叛意など…」
 真っ赤にした顔から真っ青にして、口ごもった。そんな彼女に対して、エンマは冷たく言った。
「エレノアお姉さまが降嫁されたのは、名門であるスフォルツァ家が王族に近い立場であったことだけでなく、ここ数代の当主が無能だったからよ」
 そういうと、彼女は大広間を見渡して誰か・・を探し出していた。
「だから、よからぬことを考える連中もいるのだし、それによって均衡が保たれていた政治の世界のバランスを崩すことにもなっていたのよ」
 その誰かを見つけたらしく、エンマが苦虫をつぶしたような顔をしたのにアリアは気づいた。
「だから、手綱を引き締めるという意味で、昔から有能であったエレノアお姉さまが降嫁し、スフォルツァ家を更生させる、という役割があったのよ」
 エンマは血がつながっているのかと疑いたくなるような、あまりに似ていない姉の方を向いた。
「誰かさんのせいで、おとなしくしていたみたいだったけれど、最近はアリアちゃんのおかげでエレノアお姉さまも十分動けるようになったみたいだし」
 と、エンマはアリアに近づき、頭を撫でた。アリアは相変わらず、転生チートによって運命を変えています、なんて言えず、何とも気まずい思いをしていた。
「エンマ」
 そんな気まずいアリアの気持ちを遮るかのように、エレノアが妹に呼び掛け、書類の束を渡した。
「お姉さま」
 エンマは差し出された書類を受け取り、中身をその場・・・で確認した。その後、すぐに踵を返し、国王の元へ持っていった。
「お母様、あれは?」
 アリアはなんとなく思い当たることがあったが、具体的にはわからなかったので、母親に尋ねた。
「あれは、セリチアへ干渉している貴族の名簿よ」
 とマグエム侯爵夫人の方を見ながら言った。

 ゲーム内において攻略対象の一人の外交官王子クロードの出身国では、ゲーム内においてもアリアがデビュタントする頃から、内紛のにおいが漂ってきていた。アリアは母の言葉に対して、どう考えてもおかしいと思ってしまったが、すぐに思い当たることがあった。よくある母親の実家の影響というものなのだろう。確か、現王太子の母親は何代か遡るとリーゼベルツの血が混じっている公爵の令嬢だったはずだが、後から生まれた第二王子クロードの母親は、セリチアの現王の又従姉だったはずだ。今は、第一王子が王太子の座についているが、純粋な血統を望むセリチア王家や保守派の貴族は彼を廃して第二王子を王太子の座につけたい、という事で最近勢いが強まってきているらしい。それに加えて、第一王子の母親の実家であるリーゼベルツこちらの貴族としては、隣国でも影響を与えたい、という馬鹿が多いため、かなり援助しに行く貴族が多いはずだ。ということは、彼女の実家、ないしは嫁ぎ先がその派閥に入っているという事なのだろう、とアリアは自力で考えた。
 母親の言葉に、大広間にいた貴族はざわめき始めた。

「エレノア」
 ざわめき始めた大広間に、国王の声が響いた。
「何でしょう、国王陛下」
 彼女は自分の従兄の側に自分の妹がおり、彼女がかなり親しくしている様子を周囲の者が知っている身とは雖も、きちんと・・・・臣下としての例をとった。国王夫妻もエンマもそれを、エレノアからしてみれば当たり前にとる行動だと思っていたので、特に問題は起こらなかった。
「其方の働き、見事と申す。これからも、貴族界を束ねていくのに重要な役割を担ってほしい」
「承知いたしました」
 その言葉に、大広間にいた人は先ほどとは正反対に、静かになった。

「そして、アリア・スフォルツァ」
 アリアは自分が名前を呼ばれるとは思っていなかったので、かなり驚いた。母親に背中を押され、周囲の視線を感じながら前に進み出て、再び礼をとった。
「其方も、今回大いなる働きをしてくれたみたいだな」
 その言葉に、さらにざわめきが大きくなったのを感じたが、無視することに決めた。まだ、アリアには誰が味方になって誰が敵になるのか判断がつかなかったためである。
「恐れ多いことでございます」
「私には、君はとても良い巡り合わせをしたものと思っている」
「すべては母のおかげでございます」
 ここでもエレノアを立てた。
「ハハ。その謙虚さは美徳だな」
「そうですわね。エレノア様の娘ですので、謙虚さも聡明さも持ち合わせているのでしょう」
 王妃はさっきと打って違って、にこやかに国王と話した。
「うむ、確かに」
 国王も、自分の従妹の娘の聡明さに感心していた。しかし、アリアは本日何度か目になる

(うわぁ。これ本当に実は『転生』しています。だから、ハチャメチャだった黒歴史昔の性格の時代について母親が隠ぺいしてくれて助かったわ)

 とひとりごちていた。

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