転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 アリアは母親に今後の予定を軽く打ち合わせた後、夕食の時間には少し早かったので、自室に戻り、王宮へ行く前に書き始めていたノートを取り出し、再び思い出した内容を書き始めた。


 攻略対象は6人であり、2人ずつ”組み合わせ”があり、この”組み合わせ”では、身分的などの要素が共通もしくは正反対になっており、互いのルートで重要なカギとしてもう片方の人物が出てくるという仕組みになっていた。

 1人目は、クリスティアン・フロイア。
 国王の第1王子で、黒髪碧眼。”清廉潔白”を謳う正統派王子。アリアとヒロインベアトリーチェと同い年である。のちに、私が彼の婚約者候補筆頭となるものの、悪事やらなんやらで公衆の面前で断罪ざまぁされるルートだ。
 エンディングは全ルート共に3つずつあり、彼のハッピーエンドは一伯爵令嬢であるヒロインが王妃になる通称”シンデレラエンド”。2つ目であるトゥルーエンドは政略結婚から逃れられないという王太子という身分が苦しく、ヒロインと駆け落ちする”駆け落ちエンド”。そして、バッドエンドは政略結婚で公爵家の娘と結ばれるのだが、相手はもちろんアリアではない。そして、ヒロインは引き続き王太子付きの上級侍女として働くことになる。

 ちなみに、このヒロインの役職名である『上級侍女』。中貴族以上の女性はたいてい自分より身分が上の貴族の侍女として”花嫁修業”する。こういった場合では、貴人のそばでの仕事となり、着付けや化粧などと言った業務や貴人の話し相手となる。一方、『下級侍女』は、没落貴族や裕福な商人の娘が生計を立てるために働いたり、上級侍女となるためには少し身分が足りない場合になる役職である。このため、上級侍女と比較して、貴人の側にいる時間は少なく、上級侍女には逆らうことはできない。また、場合によっては、下女や下働きと同じ扱いをされることもある。

 王太子の対となる攻略対象の2人目は、クロード・コレンスという隣国――セリチア国の王子だ。彼は、金髪茶眼の持ち主で、異母兄である王太子に疎まれ、外交官で我が国リーゼベルツに派遣、という左遷島流しに遭っている。彼はアリアの3つ上で、リーゼベルツとセリチアとの関係も相まって、”四面楚歌”とあらわされている。自由基質な王太子と異なり、伝統を重んじる傾向がある。このルートでは、アリアはその過程では名前のみの登場で、妹のリリスが悪役となる。このルートでのハッピーエンドは、ヒロインと結婚し、異母兄とも和解し隣国へ行き、そこで暮らすという”和解エンド”。トゥルーエンドは、2国の関係が悪化し、外交官として第3国へ行き、そこで慎ましく暮らすというエンドだ。彼の、バッドエンドは、戦争が起こったものの、セリチアが敗北したことから、リーゼベルツに内通したとして、処刑されるというエンドだ。

 2対目、3人目の攻略対象はユリウス・デュートというヒロインの幼馴染の騎士だ。彼は厄介な立場でもあり、王族の令嬢であるエレノアと政略結婚した父親――マグナムだったが、ある日、息抜きに、と針子の娘に手を出してしまったのだ。彼女に惹かれた父親は、その後も何回も通ったのだ。その娘が生んだのがウィリアムで、彼はヒロインの実家の隣に住む息子で、王立騎士をしている。アリアたちと同じく栗毛で、瞳は蒼い。アリアから見て5つ下で、物腰が柔らかくとても”優柔不断”とあらわされていた。彼のハッピーエンドは、実家スフォルツァ家の一件も自ら切り捨て、自国リーゼベルツで出世する。トゥルーエンドは、実家のごたごたに巻き込まれたものの、悪事には手を出していないだろう、ということで、ほとぼりが冷めるまで『他国へ剣の技術を磨くために留学』となるエンド。バッドエンドは、実家のごたごたに巻き込まれ、彼もほかの一家同様、他国へ追放され、ヒロインに別れをつけるのだ。

(やっぱり、これは彼女何にも悪くないじゃない)
 そう、『涼音』だったころの彼女は、ゲームを重ねるにつれてそう思った。

 そんな彼と対になるのが、アラン・バルティアという赤髪碧眼の公爵家嫡男の騎士だ。彼は王族を守る近衛騎士の一人で、スフォルツァ家と同等のをもつ家格バルティア家の長男であるため、王太子とも親しい。アリアより2つ下で”悠々自適”とあらわされる。見た目もチャラく、自他ともに認める遊び人なのだが、剣の技術だけ・・は超一流だ。彼とのハッピーエンドは、近衛将軍へ出世し、貴族の最高位として暮らすというものだ。トゥルーエンドは、発狂したアリアから王太子を守れなかったとして、平民に落とされ、ヒロインがけなげに通いつめ、最初は拒否していたが、結局絆されて結婚するというエンド。『涼音』は、このエンドを気に入っていた。そして、このゲーム中、『ヒロインにとって』最も悲惨なエンドと称されるのが、彼のバッドエンドで、遊び人の称される彼、近衛騎士団を追放され、王太子が追い落とされたのも相まって、自棄になり、多くの女性を囲い始めてそのうちの一人とされるエンドだ。『涼音』だけでなく、このゲームをプレイした女性は、このエンドを見た後、男性不信になる者が続出し、ゲーム発売直後は、他の乙女ゲームの売り上げが増加したという。ちなみに、このバッドエンドでは、リリスもまた、愛人の一人になっている。

 さらに1対、5人目の攻略対象者はウィリアム・ギガンティアという平民出身の宰相補佐である。彼はアリアの1つ上で、16歳の時に公開謁見の時に王妃に認められ、取り立てられたという経緯を持つ。『平民』出身をよく思わない貴族たちと、日々相手しなければならなかったため、”油断大敵”とあらわされていた。灰色の髪で、蒼眼をしていて、とても神秘的な印象があり、攻略対象の中では一番好きなタイプだった。ただ、中身は当然とんでもなく策士なのだ。彼とのハッピーエンドは、15年後の未来が描かれていて、宰相夫人となるエンド、トゥルーエンドは婚約までおこなったが、ウィリアムが処刑されるというエンドだった。ちなみに、こちらのエンドも多くのファンが嘆き悲しみ、ゲーム発売から数年たった後も処刑された日の『命日』には、特に推していた人から『誕生日の祭壇』ならぬ『本物の祭壇』が出来上がっていた。バッドエンドは、反対する貴族の筆頭であるフレデリカ・スフォルツァに雇われた暗殺者プロにより暗殺されるというエンドだ。

 そして最後、アリアから見て2歳上のマクシミリアン・フェティダ。彼は没落しかけの公爵子息で、”虎視眈々”とあらわされていた。紺髪碧眼の持ち主で、性格は相当エグイ。ハッピーエンドは結局中央では、職を得ることができず、領地での田舎暮らし。トゥルーエンドでは、公爵家立て直し後、ヒロインは侍女として仕えるというエンド。バッドエンドは内乱を起こしたものの、失敗して処刑されるというエンドでもあった。


 これがすべての攻略対象者であり、王太子と幼馴染騎士、宰相のルートではアリアが、外交官と遊び人のルートでは妹のリリス、公爵子息ルートでは従妹のミスティア王女が悪役となる。すでにアリアには『涼音』としての記憶が戻っているので、真っ逆さまの人生は歩みたくないし、公爵子息ルートで悪役となるミスティア王女も変えていかなければならない、と思っている。できることならば、全員で助かりたいと思うが、おそらく叔母フレデリカは難しいだろう。また、リリスは彼女に心酔している感じなので、リリスは切り捨てればよいと思っている。


 アリアは一通り攻略者たちの情報を書き終えて、ふう、と一息ついた。ちょうど、夕食の準備が整ったらしく、メイドが呼びに来た。
 彼女はこの部屋から一歩出ることが、まるで今から戦いに行くような気持ちを込めて足を踏み出した。

 その日の夕食は、父親もいた。
「お父様ぁ。叔母様におねだりするのお姉さまにダメって言われてしまったのよぉ」
 リリスは、アリアが叔母に強請るのを禁じたのを、根に持っていた。彼女がアリアと同じ転生者でもなければ根に持つのはわかっていたのだが、父親に言われるのはかなりまずい事態となった。案の定、母親エレノアを見ると思いっきり顔をしかめていた。
「分かった、リリス。欲しいものって何だい?」
 マグナムは、リリスに甘かった。もちろん、覚醒前のアリアにも甘かったが、一晩経ってそれはなくなったようだった。おそらくはフレデリカから聞かされたのだろうと確信した。
 アリアは軽く頭痛を覚えながら夕食を過ごした。

 その晩、布団にもぐりこんだ後、アリアは、
(絶対に運命には従わない。私は勝ってみせる。そのためには、どういったことも惜しまない。たとえ身内を切ることになっても)
 と、改めて決意を胸にした。

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