聞こえない僕と見えない君の空想物語

朝比奈 江

8話 男子校なら許される行為

放課後、今日は部活のない日。
冷たい風が、廊下を突き抜け私と絢香の間を通り抜けていく。
お昼に彼から連絡を貰った。
彼の教室に私が迎えに行くことになってるけど、凄く緊張する。
そう考えてるうちに、彼の待つ教室の前についてしまった。

「はぁーーーー‥‥死にそう」
大きなため息と同時に弱音がでた。
すると、隣に立っているお姉ちゃん気質の絢香が一言。
「しゃんとしろ。会いたいんだろ?」
カッコよすぎる。イケメンだ。
「よし!頑張る!」
気持ちを決めて、教室のドアに手をかけた瞬間。

「あーー!クソ!お前強すぎ!」
1年の廊下を木霊していく大きな声がドアの向こうから聞こえた。
「え!?あ、わりぃ。ってか遅いな」

ドアに手をかけたまま、呆然とする私の手を絢香はそっと包み2人でドアをかけた。

「「「あっ‥‥」」」
篠原くん以外、声を揃えて言った。
開けた先には、窓側の席に座って驚いている篠原くん。
やっぱり透き通って見える。見えたらな。

その机には、トランプが並べられていた。
そして、教室のど真ん中で上半身裸で片手にエロ本を持ち、前髪を縛っている1人の男子。

すっと、教室のドアを閉めた。
少したってから、教室のドアが開いた。
『ごめんね、もう大丈夫だよ』
手話をしながら、話しかけてくれるのは篠原くん。
彼に続いて教室に入ると、前髪は縛ったままだが制服をちゃんと着ている。
「先ほどは、お見苦しいものを」
椅子に座りながら頭を下げながら謝られた。
「いえ、ちょっとびっくりしただけです。ね?」
絢香に同意を求め、顔を見る。
「うん、もうやらないで欲しいですけど」
「もちろんです」
彼がきっちり絢香に怒られた後、篠原くん指導で自己紹介が始まった。





放課後、みんながどんどん帰って行くなか春汰と僕は話しながら迎えに来てくれる彼女を待っていた。
話しながらと言っても、LINEでだが。
「メグ、ポーカーやろう」
「僕の名前はケイだ。まぁ、いいけど」
アイツがメグと呼べば僕はハルと呼ぶから。

普通だとつまらないから、野球権も兼ねてやる事にした。
春汰から言っておいて1回も僕に勝てていない。
計6回、負けている。春汰は上半身裸となった。
こうなってくると、男子高校生のテンションは異常だ。
春汰の場合、前髪を縛りだしエロ本を隠し持ってる奴のロッカーをあさり出した。
ここまで来ると笑いが止まらない。声は出ないんだけど。
エロ本を見つけると、片手に持ち読みながら続きを始めた。
笑いながらポーカーを続けた。
春汰は、スリーカード。僕は、フルハウス。
また、僕の勝ちだ。

「あーー!クソ!お前強すぎ!」
教室のど真ん中で、叫んだ。
「ハル、うるさいよ」
かろうじて、指を動かせたが僕の腹筋は崩壊した。
「え!?あ、わりぃ。ってか遅いな」

ガラッ!ドアが開いて向こう側に立っていたのは待ち合わせをしていた彼女がいた。

「「「あっ‥‥」」」
タイミングが最悪だった。そっと、閉められる扉。

もう、僕の腹筋は2度と元には戻らなそうだ。
いつぶりだろうか、こんなに笑ったのは。
久しぶりの笑いは僕の心をまた少し開いたのだった。

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