お世辞にもイケメンとは言えない残念幼馴染が異世界で何故か優良物件になってた………え?結婚してくれ?

シフォン

世界最強クラスの魔力を全力で無駄にするエルフさん

目覚めた時、そこには知らない天井が広がって………いなかった。
そこにはただ、梨生奈ちゃんの顔が青い空を背景にあるだけで、それ以外には何もない。
どうやら膝枕されているみたいだね。これが勝城ならきっと『膝枕………ロマンだな』とか言うと思う。
私?膝枕にそこまでのロマンは感じないよ?この状態が楽で心地いいのは一切否定しないけれども。
膝枕って下手な低反発枕(前世での愛用品)より寝心地良いし、なんか安心するし。
こんなに良いものなら確かにロマンがあるとか言っちゃうのも納得だよね。正直何故これをロマンと言い換えたかにはかなりの謎があるからあえてなにも言わないけどさ。

………閑話休題。
今私の目の前には梨生奈ちゃんの顔があるとは言ったね。あれは本当だ。
だがもう1つ言わねばならないことがある。
梨生奈ちゃんは今、完全に眠っている。そりゃあもう見事なまでに緩み切った表情で。
ただ、口を開けたまま寝ているせいで、ヨダレが私の顔に垂れてきているんだ。
目が覚めたばかりでちょっと頭が働いていないせいか(これはいつものことだけどね)さほど気にならないけれど、ちょっと顔がべとべとしている………気がする。
目覚めていきなり同性のヨダレで顔がべとべとしてるなんて罰ゲームかよ。それをやって許されるのはわんことわんこ系イケメンとショタだけなんだぞ!
私は心が広いからそれに加えてロリっ娘も許すけど。心が広いから(大事な事なので二回言った)ね。
だからお前はダメだ、梨生奈ちゃん。
膝枕してくれたことには一応感謝するけれど、でもヨダレはアウトだぜ梨生奈ちゃん。
仮にも女の子なんだから色々アウト。しかも相手が(見た目は)12歳の幼女ってんだから完璧にアウトだ。
だから、私はここで迷わず行動しようと思う。

「そいやぁ!」
「へぶしっ」

迷いなく梨生奈ちゃんの額に手を伸ばして、全力のデコピン。
なんかいつもより強めにやれた気がするけれども、まぁとにかく今は起こせればいいんだよ。

「おはよう、梨生奈ちゃん」

私は額への強烈なデコピンで目が覚めた梨生奈ちゃんに白々しくおはようを言いつつ、怒った顔をして見せた。
私は顔にヨダレたらされた被害者なんだから、少しは怒っても許されるよね?

「いきなりデコピンなんて、かずのんの愛が痛すぎるよ………でもなんか顔中粘液まみれになってるかずのんが可愛いから許すぜ!」
「この惨状の犯人に言われるとイラつくだけだなぁまったく!」

だが、梨生奈ちゃんはデコピンを意に介していないようだ。
コイツ、人の顔をヨダレまみれにしやがって………恨むぞ。ちょっと恨むぞ。こっそりと恨んでいつかわんこに顔面舐めさせてやる………!
私はこの仕返しに地味な嫌がらせをいつか喰らわせてやろうと画策した。
余談だけど、わんこに顔面を舐めさせるという嫌がらせの考案者は勝城だ。小学校のときドーベルマンに顔を舐められて危うくファーストキスを奪われかけた………とか言ってた。
その時は大笑いしてバカにしたものだけど、自分がそれをやる側になると………うん、いかにそれがえげつないものか分かるよね。

「ま、とりあえず顔を洗いなよ。この近くには水源があるからさ」

梨生奈ちゃんは、わたしが頭の中で思い描く無駄に恐ろしくてえげつない嫌がらせの計画の事など露知らず、近くの不自然に空いたスペースを指さした。
そういやここって屋外だったね………
でも何もないよ。梨生奈ちゃんが指さしたスペースにあるのは3つ。地面と空間と、穴。
それしかない場所でどうやって顔を洗うというんだね、え?言ってみろよ言ってみせろよ。

「何もないよね、そこ」

私はなんの遠慮もなく思ったことを口にした。
何もないところで顔を洗うなんて、今時芸人でもやらないよ。落語家は知らないけどさ。

「ん?あぁ………かずのん、あれは魔法で水を吸い上げるタイプの奴だよ?」
「せめて井戸か何かを作っておいてよ………」
「ははは、前世でそんな重労働をしたこともない上に井戸の作り方を知らない凡人に掘れるわけがないでしょ?」

いやそれもそうだけどさ、私は水を吸い上げる魔法なんて知らないんですが。
………とりあえず行ってみれば出来る?
私はバカだからこその私なんだぜ、そんな奴が行っただけで出来るわけがないじゃない。
やれたら奇跡なんてもんじゃないよ。
私は、そんな風に文句を言いつつも梨生奈ちゃんが指し示したスペースに向かってみる。
するとそこには………

【風よ、空を突く竜巻となりて吸い上げよ】

そんな一文が、穴を囲むようにうっすらと書かれた魔法陣と一緒に地面に記されていた。
あれか、もしかしてこれを唱えたら魔法が発動するって奴か。
安い、安すぎるぜ魔法。
呪文か単純で、安直で、簡単すぎるんだ。こんな単純な呪文で魔法が発動するなんて、恥ずかしくないのかね異世界よ。
私の脳味噌のつくりもかなり単純だから人、いや呪文?のことは言えないけれどね。
まぁ、とりあえずこんな呪文でもきっと魔法は発動するはずだし、唱えてみましょうか………

「【風よ、空を突くたちゅ】………コホン。【竜巻となりて吸い上げよ】!」

私は、途中でうっかり噛んでしまいつつ、とりあえず呪文を全部唱えた。
無論呪文なんてものは噛んだら発動するはずがないので、目の前に水は現れない。
ただ、なんかその代わりに地面からものっそい音が………しかもなんとも言えないくらいにヤバ気な音がしてきていて………
あ、これはなんか逃げないとダメなやつかも。
私は地中から聞こえてくる音に危機感を覚え、ひとまずその場から避難しようとした。

するとどうだろう、私が避難した直後魔法陣があったあたりの地面がひび割れた。
そのひび割れは段々と周囲へと広がっていき、ついに私の足元に………来そうになるも、割とギリギリながらひび割れを回避する。
でもその代わり、ちょっと気が抜けたのかつい足がもつれ、転んでしまった。
まずい、まずいよ。
私は急いで体を起こし、少しでもひび割れから離れようとする。だが転んだ拍子に足首を痛めてしまったのか、力が入らない。
しかもそうしてダウンしている間にも、音は少しずつ大きくなって………

「かずのん、一体なにをして………えぁうぇ!?」

私が窮地に追い込まれて少しパニックを起こしそうになったとき、この音を聞いて梨生奈ちゃんが駆け付けた。
よし、梨生奈ちゃんに私を運んでもらおう。
そう考えて助けを求めようとするが。

「梨生奈ちゃん、ちょっと足を挫いちゃって………」
「ぇと、その………ぁぅ」

頼みの綱の梨生奈ちゃんは、想定外すぎる光景に放心してしまっている。
あぁもう、こうなったら精霊王に力を借りようか?
私は、脳内で軽く精霊王を脅しつけて力を借りようとしてみるが、しかし返事はない。
完全におねむのようだ。仮にも精霊の王様なんだから規則正しい生活しろっての………
精霊王は理由次第じゃあとでお仕置きだな。
そんなことを考えつつ、私は自分の力でこの状況をどうにかしないといけないと考え、どう動くべきかを考える。
でもそんな都合の良い方法なんて私は知らない。
魔法を使えれば話は別なんだろうけども、さっきの魔法をどうにかする魔法なんて………

あ、そうだ。
魔法を中断する魔法的なやつを教えてもらってたの思い出したよ。
あれのせいで気絶しちゃった嫌な思い出もあるけれど、このパニック必死な状況をなんとかするためには使うしかないよね。
今度は噛まないように気をつけて………

「【終えよ歪理ことわり、魔を戒め、あるべき姿を取り戻せ】!」

先程の魔法陣に向かってビーム的なものが飛んでいくイメージで唱えてみた。
そして、普段は記憶力が壊滅的な私が珍しく寸分の狂いなく記憶していた呪文を唱えたことで魔法が発動、その効果を遺憾なく発揮し、音の発生源のようなものを停止させた。
………だが。
残念ながら今回停止させた魔法の効果は『水を生み出す』ではなく『元からある水を吸い上げる』だ。
当然ながら、元々ある水は先程の魔法で加速されたまま、更なる加速だけがなされず地表に出てきて………

「あヴぇしっ」

私たちは、思いっきり水を被ってしまうのだった。

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