お世辞にもイケメンとは言えない残念幼馴染が異世界で何故か優良物件になってた………え?結婚してくれ?

シフォン

魔法を習得………あれ?おかしいなぁ:6

お、お前は何物だぁ!
突如として前世の名前で私を呼んだよく分からない女の子に、私はそう叫ぼうとした。しかし出来なかった。
叫ぼうとした瞬間に口に手を突っ込まれたのだ。
酷い、酷いよ。さほどなかった女子力も少しずつ成長してきてるおにゃのこの口に手を突っ込むなんて、相手が男だったら手首を噛み切られても文句は言えないよ!?
というか苦しいから早く抜いてくれないとこの手が噛み切れるよりはやく私が事切れちゃう。助けて。

『とりあえず口から手ぇ抜こうね知らないチビッ子ちゃん?【エレクトリシティ】!』

そんなことを考えていると、見かねた精霊王が魔法を発動した。
すると口に手を突っ込んでいた女の子はまるでドアノブに触れてバチッと来た時のように飛びのく。
………あー助かった。サンキューだよ精霊王。

『そりゃどうも、まぁとりあえずどうするよコイツ?殴る?斬る?それとも焼き殺す?私としては宿主サマ都合の良いエサを危うく窒息させかけたコイツにはあえていくつか夜のお供系魔法を永続式で重ね掛けして人族の暮らす街の路地裏へポイ捨てルートがおすすめ』
「なにしれっと怖いこと言っちゃってんのコイツ!?」

感謝したのも束の間、精霊王はすぐに目の前の女の子に、この歳で味合わせるにはいささか、というかどんな年齢だろうがちょっとえげつないんじゃないかなと思うようなことをしようと提案してきた。
えぐい、えぐすぎるよ精霊王!
あまりに酷いので今回はちょっと大声で叫んでツッコミを入れちゃうほどなんだぜ………

「………?かずのん、誰かと話してるの?」

あ、しかも今のツッコミのせいでなんか可哀想なものを見る目で見られちゃったよ。
ちくせう恨んでやる!何をかは分からないけれど恨んでやる!
いきなり初対面(前世の知り合いかもしれないけど)の相手に可哀想な奴扱いされるのは最悪だね。気分的によろしくないんだよ。
精霊王!なんとかこの状況を打破しておくれよ!

『えー?扱い酷くない?私の扱い酷くない?』

でもここまで空気悪いと私うっかりヤバいことしちゃうかもしれないよ?
ついうっかり精霊王を消しちゃうかもしれないよ?

『いやホントに私の扱い酷いね!待遇の改善を………まぁいいや、ひとまず私と話してたのを説明すれば?』

精霊王はしれっとそんなことを言ってくるが、私だってそれが出来れば苦労しない。
でも精霊王と話しているなんて誰が信じるというのだろうか。
少なくとも私は信じられないね。

『大丈夫大丈夫。宿主サマみたいな例外を除けば普通精霊は知ってるから。問題なく理解してくれるはずだから』

………本当なのかね?
まぁ今はこれを信じて精霊王について説明するしかないんだよね。
仕方ない。
私は意を決し、目の前の女の子にそれを説明することにした。
信じてもらえるなんて思っちゃいないけど。

「なんというか………精霊王ってのに取り憑かれてて、それと話してたんだよ。たぶん」
「精霊王?」
「あーうん、そう。読んで字のごとく精霊の王様だよ」
「いやそんなの居るわけないでしょ………四霊王は全員封印されて眠りこけてるし、光と闇の精霊王は殺し合って消滅したんだから」

………でも居るんだよなぁ、頭の中に。精霊王が。
もしかしたら本当に精霊王(自称)じゃないのかという疑惑はあるけれど、居るんだよなぁ。
それにしても四霊王とか光と闇の精霊王ってなんだろ?物凄く厨二病っぽいよ。

『ははは………私って本当に忘れ去られているんだね………四霊王も光も闇も全員私の娘だよ!チクショウなんで子供ばかり有名になってんだコノヤロー!』

あ、説明サンキューだよ精霊王。
てか四霊王も光も闇も私の娘って………それじゃお前が凄いみたいに聞こえるだろ!誤解を招くからそういうのはやめろよ!

「精霊の祖ならギリギリありえるとしても、アレは今下級精霊以下の存在になってるはずだし………」
『宿主サマ、とりあえずコイツに極大儀式魔法撃ち込んでいいかな?かな?』

しかも今度は普通にえげつないことしようとしてるし!極大儀式魔法ってなんだよ!どう考えても私が巻き込まれるじゃん!ダメな奴じゃん!
つーか今のでキレるってことはお前精霊の祖ってやつなの!?今初めて知ったよ!
なんなんだよこの衝撃の真実ラッシュ………埒が明かない。
私が混乱の極致に追い込まれたとき、タイミングを狙ってたんじゃないかってくらいに女の子が話題を変えてきた。

「………まぁそんなことはどうでもいいや、とりあえず場所変えようよ」
「なんで今更?」
「いや、よく考えたら敵襲かと思ってみんなを復活させちゃってさ………多分さっきよりヤバいのが来るかも」

そう言って女の子は親指で背後を指さした。
そこに居たのはなんというか、完全武装の兵隊と言うか、騎士と言うか………まぁそんな感じのがたくさん。
もしかしてこれ、私を倒すためだけに組まれちゃった部隊とか?
あらやだ私人気者。
ってそんなことを言ってる場合じゃない。
あの騎士っぽい人たちはさっきの神官もどきが持ってた火にそっくりなやつを剣とか槍にまとわせてるし数が段違いだしよく分からないけれど角の生えた馬に乗ってる。
これは確かに、場所を変えた方が良いね………
精霊王!魔法を頼んだよ!

『りょーかい!そんじゃ死なない程度にストレス解消皆殺しだぁ!』

頭の中で精霊王に指示すると、精霊王は魔法を連続で使い始めた。
ボルケーノとか、ライトニングとか、ブリザードとかヤバそうな魔法ばかりだけど、まぁ今はこっちが追い詰められてるし、それに本人も死なない程度にってつけているから大丈夫だろうさ。たぶんね。
私はそう信じて騎士っぽい人たちから目を離して、横の女の子を見た。
すると何やら妙な模様を地面に書いている。
そしてとても角の多いソレを閉じるように最後の一辺を描き終えると、模様が光りはじめる。
えっちょっ、なんで地面に書いた模様が光ってるの?
というか早く逃げないとまずいよね、どう考えても問題しかないよね………
そう思ったのも束の間、女の子は私の腕を掴み、その中に放り込み、自分もその中に入って何かを呟く。

「【父祖の霊よ、我らを汝の眠る地へ、運びたまえ】【ルートフォロー】!」

魔法と思われるものが発動した瞬間、視界が暗転する。
それと同時に強烈な吐き気が襲ってきて、体が浮かんでいるかのように錯覚する。
一体なんだってのさ………
とりあえず混乱しつつも、魔法と言う事はこの状況をなんとかしてくれるんだろうな、と思って吐き気に耐えつつ視界が回復するのを待った。
………そして、大体30秒ほどが経過したとき、不意に視界が回復した。
そこで私の目に入ったのは………

「うさぎ?」

うさぎだった。
さっきまで行動を共にしていた女の子でも、騎士っぽい人たちでもなく、ちょっと普通のやつより数倍大きいうさぎ。
それは真っ白でもふもふな毛並みと真っ赤な目が可愛らしい、完璧にこっちを誘ってること間違いなしの、さいかわなうさぎで………
私はそれに思わず抱き着こうとする。
しかし避けられた。
だがそこで体が反射的に動いて二度目の襲撃を行うも、しかし避けられる。
可愛いのに触れない。なんてことだ。
だが私は諦めない!このもふもふを堪能するためならばどんな苦難も受け入れて見せようじゃないか!
もう一度抱き着くために三度目の襲撃を実行する。
やはり避けられる。
………いや待ってなんでこんなに避けられるのさ!酷いよ!ちょっとくらいモフらせてよ!
前世じゃ勝城が死ぬほど動物に好かれるせいで私の方にまったく寄ってこなかったから元々こういうモフモフ成分には飢えてるってのに、なんでモフらせてくれないんだよ!

「かずのん………あんまりゴンザレスをいじめないでよ?正直私としては微笑ましいからいつまでもやっちまえと思わない訳じゃないけどさ」

うさぎを意地でもモフってやろうと奮闘していると、いつの間にやら背後でテーブルと椅子を用意して座っていたさっきの女の子がそう言ってきた。
どうやらこのうさぎはゴンザレスというらしいね。
フフフ………仕方ない、ゴンザレス、今はお前に価値を譲ってあげるよ!だけど次は私が勝つんだからな!
私は、無駄にどこかのバトル漫画のライバルのようなことを頭の中で言い、テーブルの方に移動して椅子に腰かけた。

「いや、ほんと変わってないよねかずのんは。前世と同じで小動物っぽいし、ちょっとおバカだし、アホの子だし」

そしてなにか大事な話が始まるんじゃないかな、と思っているといきなり心にグサッとくるようなことを言われて精神的に攻撃される。
しかも明確に『前世』と言う言葉を使ってだ。
この子………本当に何物なんだろう?

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