とある英雄達の最終兵器
第140話 獅子族は誰だって最強を夢見る
「で? シャルバラ誰なんだよ? お前が好きってヤツは? ん? おい、まさかお前までテュールなんてことは──!」
「い、いえっ、違いますっ!」
「じゃあ、誰かなぁ? アンフィス君? ベリト君? それとも~……テップ君っ!」
「なんでそうなるんですかっ! 違いますっ! ──ッハ!?」
──ニヤリ。
シャルバラを交互にからかい、笑みを浮かべるエリーザとローザ。当然、恋バナ大好きな世界樹ユグドラシルを相手してきた一族だ。二人は応接間に入室した時点でシャルバラが気にかけている人物など分かっていた。
「カカ、まったくあんた達は意地が悪いさねぇ。誰に似たのやら。それにしてもシャルバラ、ヴァナルかい? あんたも厄介なのを好きになっちまったねぇ。あたしもあいつとは何年も住んでるけど、掴みどころがない雲みたいなやつさね。それにあいつはモテるよ」
意地の悪い娘二人を軽い調子で諌めるルチア。誰に似たのかという問いに対しての答えは分かりきっている。そしてそんなルチアは、やはり意地悪く、焚きつけるような言葉を放つ。それを聞いたシャルバラは目を見開き──。
「──!? やっぱりっ!! あの母性をくすぐる可愛らしく整った顔立ち、なのに戦闘では誰をも寄せ付けない強さ……。それに触ってみると意外と身体が引き締まっててゴツゴツしてるんですっ!! あぁ、すごく、男性を感じさせられてしまいました……。そして、テュールさんをからかう時の無垢な笑顔も素敵。あぁ、世のお姉様方が放っておくわけがありませんっ!!」
声を大にして捲し立てる。
「お、おう。熱弁してくれてありがとう。だが、あんまデカい声で喋ると本人に聞こえちまうぞ?」
「……え?」
そんなシャルバラにクイックイッと、後ろを親指でさし、注意するローザ。その言葉に我を取り戻したシャルバラはゆっくりと振り返る。
「あはは……」
苦笑するヴァナルと、爆笑するリリスとテップが目に映った。他の面々も気まずそうに視線を泳がしている。恐らく全員に聞こえてしまったのだろう。
「…………死にたい」
両手で顔を覆い、うずくまろうとするシャルバラ。しかし、両脇をエリーザとローザが抱えたままのため、ズルズルと引きずられていく。
「……ししょー。あの人本当に戦えるの?」
「……まぁ、一応リエース校の主席だし、ユグドラシル一族ならローザさんに鍛えてもらったりしているはずだから……」
「フンッ。シャルバラ様は、エット家当主であるディーズ様から手ほどきを受けている。模擬戦では不覚を取ってしまったが、試合であればヴァナルとかいう者にも負けることなどなかったはずだっ」
レーベが色恋沙汰に浮かれっぱなしのシャルバラを見て、落胆した表情でテュールに愚痴る。テュールも実際にシャルバラの戦闘場面を見たことがないため、現時点ではレーベと対して変わらない評価だ。つまり、ただの年相応の女子学生。だが、それを聞いていた付き人のカレーナは不機嫌な様子でその評価を覆そうとする。しかし──。
「……ふーん。試合であれば、ね」
レーベは多くは語らないが、それは言外によーい、ドンでしか走れない者は所詮スポーツマンでしかないと言っているようだった。
(うん、そうだね。君は地上最強の生物を目指しているんだもんね……)
強さというものに対し、どこまでも真摯に、どこまでも貪欲な少女を生暖かい目で見てしまうテュールであった。
ギィ。
そして、先頭を歩くエリーザとローザがそれぞれ左右の開き戸を押す。つい、先日血の池と化した鍛錬場だ。
チラリとテュールはカグヤの様子を見る。
「ん? なにかなっ?」
「イエ、ナンデモナイデス」
その笑顔を見て、余計なことは言わないでおこうと言葉を飲み込むテュールであった。
「で、えーっと。なんだ? シャルバラがヴァナルとくっつくためには、テュールを倒さねぇといけなくて、そのテュールに挑戦するにはレーベを倒さなきゃいけねぇのか。カカ、シャルバラお前も面白れぇ道を選んだな」
「ローザ様っ、お願いしますっ。そんなはっきりと言わないで下さい……」
「んっ? あぁ悪い悪い」
全然悪びれる様子のないローザに半ば諦めつつも懇願するシャルバラ。ヴァナルにいたっては紅茶屋からここまで苦笑しっぱなしである。当然、アンフィスとベリトは困っているヴァナルを見て、とても嬉しそうだ。
「……ん、いってくる」
そして、空気を全く読む気のないレーベは一人、鍛錬場の中央へと歩いていく。シャルバラの横を通り過ぎる時も特に気負った様子はない。というより、まるで無視して目もくれない。
(おーい、レーベちゃんやい。気持ちは分かるけど、それじゃあまりにもシャルバラさんが可哀想だ……。シャルバラさん頑張ってね……)
ここ数話、テップよりシャルバラの方が痛いな、と思ってしまったテュールは、そっと心の中でエールを送るのであった。
「カカ、レーベは相変わらずだねぇ。ほら、ローザ、エリーザ、あんた達もおふざけはそこまでにするさね。さっ、シャルバラ超えるべきハードルは高いよ。あたしはディーズのように甘い鍛え方はしてないからね。うちのちっちゃなライオンは、一日目を離すだけで進化しちまうのさ」
「……ふぅ。上等です。生まれて初めて、自分のためだけの目標ができました。それにルチア様からの教えを忘れたことはありませんから。強くなるのに必要なものは、恋です」
シャルバラは表情を引き締め、レーベを睨む。そして、ルチアの脅しに対しても、フッと自然な表情で笑ってそう言い返す。
「ふむ。いい顔だ。あたしはレーベの面倒も見ているが、今日はあんたの味方さね。がんばりな」
「はいっ!」
そして、頃合いを見計らったようにローザが審判をすると申し出る。
「カカッ。んじゃ、あたしが審判をやってやろう。お前ら二人のどっちかが死にそうになったら止めてやるよ」
「はいはーい! 死ななければ治しますので安心してねー」
そして、エリーザは救護班として待機することとなった。
「「…………」」
二人は静かに睨み合う。
「んじゃ……、開始めいッッ!!」
ローザが開始の合図を告げると同時に、シャルバラは自身最大の攻撃魔法を描く。実に五メートルもの魔法陣を最速で描くためシャルバラはルーティーンとも言える詠唱をする。
「黄昏よりも昏きも──えっ?」
「……ふざけてるの?」
だが、レーベがそんな隙を許すはずもない。シャルバラは当然、レーベの動きを見て、逃げながら魔法陣を描くつもりだった。だが実際にシャルバラがレーベを知覚できたのは、既に身体の下にもぐりこまれた後であった。
レーベの煌々と蒼く光る拳が胸目掛けて、無慈悲に振るわれる──。
「……ふぅ。カカ、レーベお前とんでもないな。よくこの短期間でマナをこんだけ上手く扱えるようになるもんだ。見ろ、あたしの掌の骨、ぜーんぶ折れちまった。カカカッ。とりあえずこれ受けたら今のシャルバラじゃ死ぬから止めたぞ。で、シャルバラ、まずは一本だが、どうする?」
レーベの拳に対し何も反応できなかったシャルバラの胸の前で、凄まじい破裂音と衝撃波が起こる。髪が風圧でバサリと持ち上げられ、シャルバラは後ろへ数歩たたらを踏む。
直撃していたらどうなっていたか分からない拳はローザに止められていた。そして笑いながらプラプラと手を振るローザを見れば、受け止めた手の指は全てあらぬ方向へと曲がっていた。
「…………」
放心してしまったシャルバラは顔から血の気が引き、口唇が震えだす。一方レーベはテュールへと振り返り、つまらなそうな声で訴える。
「……ししょー。もう無理そうだよ?」
「……たぁぁいむっっ!!」
テュールはこの状況を見て、タイムを掛ける。そして、チョイチョイとレーベを呼び寄せる。そして、近付いてきたレーベに小声で話しかける。
「おい、レーベ。あれはダメだ。君はどうもこの作品をガチバトルモノにしたい傾向があるが、あくまでもコミカルさを忘れてはいけない。分かるな?」
「……ん? うん?」
「そこで、だ。これはリオンからの教えだが、万全じゃない状態を想定して戦う訓練をしろ、と俺はよく言われた。実際、色々と制限をかけられ、全力の師匠たちにフルボッコにされたもんだ。君にもこれをしてもらう」
頭に疑問符を浮かべるレーベに対し、そのままテュールは畳み掛けるように指示を出す。
「……わかった」
「よし、とりあえずマナ使っての攻撃禁止な。獣王拳も禁止。あと、君の両足首から下だけ重力二百倍ね。んで、当然蹴りもなしだ。やれるね?」
テュールは、茫然自失となり魂の抜けかけているシャルバラを見ながら、レーベとの戦力差を予測しハンデを課す。
「……ん」
そして、レーベは素直にテュールの指示に従う。テュールは素早く魔法陣を重ね、重力魔法を使う。それが問題なく成功したことを確認するとローザへと叫ぶ。
「あっ、ローザさん! タイム終わりです! もう一度試合をお願いしますっ! よし、いってこい」
「……ん、いってくる」
その場でピョンピョン垂直飛びし、調子を確認するレーベ。着地する度にズシンズシン響いて揺れるものだから、皆もそのシュールな絵に引き攣った笑いを浮かべている。
「カカ、あいよ。ほら、シャルバラ、呆けるな! お前が初めて持った目標はこんなもんで折れちまうのか?」
ローザは未だ放心状態のシャルバラの頬を両手で打ち付け、喝を入れる。
「……はぅっ! お、折れませんっ……。折れませんっ。もう一度お願いしますっ!」
その目にもう一度闘志が宿る。こうして、様々なハンデを背負ったレーベと恋に恋するシャルバラの第二幕が上がる。
「い、いえっ、違いますっ!」
「じゃあ、誰かなぁ? アンフィス君? ベリト君? それとも~……テップ君っ!」
「なんでそうなるんですかっ! 違いますっ! ──ッハ!?」
──ニヤリ。
シャルバラを交互にからかい、笑みを浮かべるエリーザとローザ。当然、恋バナ大好きな世界樹ユグドラシルを相手してきた一族だ。二人は応接間に入室した時点でシャルバラが気にかけている人物など分かっていた。
「カカ、まったくあんた達は意地が悪いさねぇ。誰に似たのやら。それにしてもシャルバラ、ヴァナルかい? あんたも厄介なのを好きになっちまったねぇ。あたしもあいつとは何年も住んでるけど、掴みどころがない雲みたいなやつさね。それにあいつはモテるよ」
意地の悪い娘二人を軽い調子で諌めるルチア。誰に似たのかという問いに対しての答えは分かりきっている。そしてそんなルチアは、やはり意地悪く、焚きつけるような言葉を放つ。それを聞いたシャルバラは目を見開き──。
「──!? やっぱりっ!! あの母性をくすぐる可愛らしく整った顔立ち、なのに戦闘では誰をも寄せ付けない強さ……。それに触ってみると意外と身体が引き締まっててゴツゴツしてるんですっ!! あぁ、すごく、男性を感じさせられてしまいました……。そして、テュールさんをからかう時の無垢な笑顔も素敵。あぁ、世のお姉様方が放っておくわけがありませんっ!!」
声を大にして捲し立てる。
「お、おう。熱弁してくれてありがとう。だが、あんまデカい声で喋ると本人に聞こえちまうぞ?」
「……え?」
そんなシャルバラにクイックイッと、後ろを親指でさし、注意するローザ。その言葉に我を取り戻したシャルバラはゆっくりと振り返る。
「あはは……」
苦笑するヴァナルと、爆笑するリリスとテップが目に映った。他の面々も気まずそうに視線を泳がしている。恐らく全員に聞こえてしまったのだろう。
「…………死にたい」
両手で顔を覆い、うずくまろうとするシャルバラ。しかし、両脇をエリーザとローザが抱えたままのため、ズルズルと引きずられていく。
「……ししょー。あの人本当に戦えるの?」
「……まぁ、一応リエース校の主席だし、ユグドラシル一族ならローザさんに鍛えてもらったりしているはずだから……」
「フンッ。シャルバラ様は、エット家当主であるディーズ様から手ほどきを受けている。模擬戦では不覚を取ってしまったが、試合であればヴァナルとかいう者にも負けることなどなかったはずだっ」
レーベが色恋沙汰に浮かれっぱなしのシャルバラを見て、落胆した表情でテュールに愚痴る。テュールも実際にシャルバラの戦闘場面を見たことがないため、現時点ではレーベと対して変わらない評価だ。つまり、ただの年相応の女子学生。だが、それを聞いていた付き人のカレーナは不機嫌な様子でその評価を覆そうとする。しかし──。
「……ふーん。試合であれば、ね」
レーベは多くは語らないが、それは言外によーい、ドンでしか走れない者は所詮スポーツマンでしかないと言っているようだった。
(うん、そうだね。君は地上最強の生物を目指しているんだもんね……)
強さというものに対し、どこまでも真摯に、どこまでも貪欲な少女を生暖かい目で見てしまうテュールであった。
ギィ。
そして、先頭を歩くエリーザとローザがそれぞれ左右の開き戸を押す。つい、先日血の池と化した鍛錬場だ。
チラリとテュールはカグヤの様子を見る。
「ん? なにかなっ?」
「イエ、ナンデモナイデス」
その笑顔を見て、余計なことは言わないでおこうと言葉を飲み込むテュールであった。
「で、えーっと。なんだ? シャルバラがヴァナルとくっつくためには、テュールを倒さねぇといけなくて、そのテュールに挑戦するにはレーベを倒さなきゃいけねぇのか。カカ、シャルバラお前も面白れぇ道を選んだな」
「ローザ様っ、お願いしますっ。そんなはっきりと言わないで下さい……」
「んっ? あぁ悪い悪い」
全然悪びれる様子のないローザに半ば諦めつつも懇願するシャルバラ。ヴァナルにいたっては紅茶屋からここまで苦笑しっぱなしである。当然、アンフィスとベリトは困っているヴァナルを見て、とても嬉しそうだ。
「……ん、いってくる」
そして、空気を全く読む気のないレーベは一人、鍛錬場の中央へと歩いていく。シャルバラの横を通り過ぎる時も特に気負った様子はない。というより、まるで無視して目もくれない。
(おーい、レーベちゃんやい。気持ちは分かるけど、それじゃあまりにもシャルバラさんが可哀想だ……。シャルバラさん頑張ってね……)
ここ数話、テップよりシャルバラの方が痛いな、と思ってしまったテュールは、そっと心の中でエールを送るのであった。
「カカ、レーベは相変わらずだねぇ。ほら、ローザ、エリーザ、あんた達もおふざけはそこまでにするさね。さっ、シャルバラ超えるべきハードルは高いよ。あたしはディーズのように甘い鍛え方はしてないからね。うちのちっちゃなライオンは、一日目を離すだけで進化しちまうのさ」
「……ふぅ。上等です。生まれて初めて、自分のためだけの目標ができました。それにルチア様からの教えを忘れたことはありませんから。強くなるのに必要なものは、恋です」
シャルバラは表情を引き締め、レーベを睨む。そして、ルチアの脅しに対しても、フッと自然な表情で笑ってそう言い返す。
「ふむ。いい顔だ。あたしはレーベの面倒も見ているが、今日はあんたの味方さね。がんばりな」
「はいっ!」
そして、頃合いを見計らったようにローザが審判をすると申し出る。
「カカッ。んじゃ、あたしが審判をやってやろう。お前ら二人のどっちかが死にそうになったら止めてやるよ」
「はいはーい! 死ななければ治しますので安心してねー」
そして、エリーザは救護班として待機することとなった。
「「…………」」
二人は静かに睨み合う。
「んじゃ……、開始めいッッ!!」
ローザが開始の合図を告げると同時に、シャルバラは自身最大の攻撃魔法を描く。実に五メートルもの魔法陣を最速で描くためシャルバラはルーティーンとも言える詠唱をする。
「黄昏よりも昏きも──えっ?」
「……ふざけてるの?」
だが、レーベがそんな隙を許すはずもない。シャルバラは当然、レーベの動きを見て、逃げながら魔法陣を描くつもりだった。だが実際にシャルバラがレーベを知覚できたのは、既に身体の下にもぐりこまれた後であった。
レーベの煌々と蒼く光る拳が胸目掛けて、無慈悲に振るわれる──。
「……ふぅ。カカ、レーベお前とんでもないな。よくこの短期間でマナをこんだけ上手く扱えるようになるもんだ。見ろ、あたしの掌の骨、ぜーんぶ折れちまった。カカカッ。とりあえずこれ受けたら今のシャルバラじゃ死ぬから止めたぞ。で、シャルバラ、まずは一本だが、どうする?」
レーベの拳に対し何も反応できなかったシャルバラの胸の前で、凄まじい破裂音と衝撃波が起こる。髪が風圧でバサリと持ち上げられ、シャルバラは後ろへ数歩たたらを踏む。
直撃していたらどうなっていたか分からない拳はローザに止められていた。そして笑いながらプラプラと手を振るローザを見れば、受け止めた手の指は全てあらぬ方向へと曲がっていた。
「…………」
放心してしまったシャルバラは顔から血の気が引き、口唇が震えだす。一方レーベはテュールへと振り返り、つまらなそうな声で訴える。
「……ししょー。もう無理そうだよ?」
「……たぁぁいむっっ!!」
テュールはこの状況を見て、タイムを掛ける。そして、チョイチョイとレーベを呼び寄せる。そして、近付いてきたレーベに小声で話しかける。
「おい、レーベ。あれはダメだ。君はどうもこの作品をガチバトルモノにしたい傾向があるが、あくまでもコミカルさを忘れてはいけない。分かるな?」
「……ん? うん?」
「そこで、だ。これはリオンからの教えだが、万全じゃない状態を想定して戦う訓練をしろ、と俺はよく言われた。実際、色々と制限をかけられ、全力の師匠たちにフルボッコにされたもんだ。君にもこれをしてもらう」
頭に疑問符を浮かべるレーベに対し、そのままテュールは畳み掛けるように指示を出す。
「……わかった」
「よし、とりあえずマナ使っての攻撃禁止な。獣王拳も禁止。あと、君の両足首から下だけ重力二百倍ね。んで、当然蹴りもなしだ。やれるね?」
テュールは、茫然自失となり魂の抜けかけているシャルバラを見ながら、レーベとの戦力差を予測しハンデを課す。
「……ん」
そして、レーベは素直にテュールの指示に従う。テュールは素早く魔法陣を重ね、重力魔法を使う。それが問題なく成功したことを確認するとローザへと叫ぶ。
「あっ、ローザさん! タイム終わりです! もう一度試合をお願いしますっ! よし、いってこい」
「……ん、いってくる」
その場でピョンピョン垂直飛びし、調子を確認するレーベ。着地する度にズシンズシン響いて揺れるものだから、皆もそのシュールな絵に引き攣った笑いを浮かべている。
「カカ、あいよ。ほら、シャルバラ、呆けるな! お前が初めて持った目標はこんなもんで折れちまうのか?」
ローザは未だ放心状態のシャルバラの頬を両手で打ち付け、喝を入れる。
「……はぅっ! お、折れませんっ……。折れませんっ。もう一度お願いしますっ!」
その目にもう一度闘志が宿る。こうして、様々なハンデを背負ったレーベと恋に恋するシャルバラの第二幕が上がる。
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コメント
黒川ルキ
もう更新しない感じですか?
楽しみに待ってます…