とある英雄達の最終兵器
第120話 もう禁眼が主人公でいいじゃんbyテュール
「カカッ、仕方ないさ。禁眼は情報が伏せられているからな。あいつはまぁ特殊な出自だからなぁ。その名の通りヤッバイ眼――災厄の魔眼を持ってるからな」
(災厄の魔眼か……。開眼したが最後、本人もろとも街の一つ二つを吹き飛ばす災厄の魔眼……。その爆発の中心地は何もかもが消し飛び、眼球だけが落ちているとか……。そもそも開眼例もそんなに多くはないが、現在、過去を通して、開眼した際、生きているのは禁眼のみ、か)
テュールはギルドから公に開示されている禁眼と呼ばれる女性とその名の由来であるカラミティサイスの情報を思い出す。しかし、情報規制がされているため、その他の情報は眉唾ものの噂だけである。
テュールがうんうん唸りながらそんなことを考えていると、その横でテップが緊張感の欠片もない声でローザに問う。
「んで、そのカラミティサイスとかいう物騒な眼は、もう大丈夫なのか?」
「ん? あぁ、完璧にコントロールできているから暴走の心配もないな。ただ、そうは言っても過去を遡れば何百例に及ぶカラミティサイスの爪痕は簡単には人々の心から拭えない。正体が知られれば迫害されるのは目に見えているからな。それに――」
ローザはそこまで言いかけて、バツの悪そうな顔をして頭を掻く。
「あぁー、お前らにはここまでは言っていいだろ、あたしが教えたって言うと怒られるから黙っとけよ? カラミティサイスが開眼する年齢は不明だ。というか誰が開眼したかなど分からない。調査しても眼以外何も残ってないんだ。そして10年前に起きた開眼による爆発当時、生き残った禁眼は5歳だ。つまりヤツはお前らと同年代で最年少SSSランクホルダーだよ。な? そんないたいけな少女が迫害されるなんて忍びないだろ?」
「――っ!!」
それを聞いたレーベの目が僅かに見開かれる。獣人最強、世界最強を目指す彼女にとって同年代で既に種族の頂点に立っている禁眼に驚きを隠せないのであろう。
「いや、でも冒険者って登録は15歳からじゃ……それにSランク以上は実績がうんたらかんたらって……」
「はぁ……、あんたは本当にそういうのに興味ないんだねぇ。あんたの歳くらいで冒険者になったらみんなSSSランク目指すって目が輝いているってのに、枯れちまってるさねぇ」
テュールがツッコもうとすると、ルチアが深い溜め息をつき、できの悪い息子を叱るようにそう発言する。
「テュールさん……SSSランクだけは特別な枠ですから……」
「だねっ。SSSランクの条件は一つだよ?」
「ん。種族の中で誰よりも強ければいい」
そして、他の者は当然知っており、テュールに畳み掛けるように説明をする。
(あぁ、そうか。なら15歳になった瞬間SSSランクでもおかしくないのか……。いや、おかしいけどな。どんな強さだよ、その禁眼って子は……)
そんな納得のいかなそうな顔をしているテュールを見て、ローザが愉快そうに笑い、言葉を続ける――。
「カカッあいつは強いよ。カラミティサイスは使ってみて驚きの最強の魔眼だったからね。あいつが生きている限り世界一の魔法使いの座は変わることがないだろうよ」
その言葉には親しみが込もっており、テュールは、SSSランク同士何かしらの繋がりがあるのだろうと予測する。
「なんかローザはその禁眼と仲良さそうなのだ」
そして、同じことを思ったのであろう幼女は、躊躇なくストレートを放る。実にいい性格である。
「カカッ。あぁ、あいつはあたしが育てた」
「ブッ!! ――けほっけほっ。育ての親かよ!?」
ついつい相手が王族に連ねる者だということを無視し、ツッコんでしまうテュール。
「ん? あぁ、いや正確にはあたしも育ての親の一人ってとこだ。カカッ、あたしと絶氷と土兎の美人3人組で育てたんだ。そりゃ強く美しく育つってもんさ」
(な、なんだよ、そのサラブレット。SSSランクでしかも美人な3人に育てられて、最強の魔眼まで持ってるなんて! で、最年少SSSランク? どんな主人公属性だよ……)
と、嘆くテュールであるが、彼も世界を救った英雄とも呼べる元SSSランク5人に育てあげられ、五大国プリンセスパーティのリーダーをやっているのだから主人公属性では負けていない。が、隣の芝は青く見えるものである。
「と、紹介が長くなっちまったが、そんなやつらが各々の国を守っているんだ、安心して自分の国だけに専念できるってもんさ。まぁ万が一自分だけで手に負えないような時はあたしたちが駆けつけるがな。言葉や約束にしなくとも肚は同じさ。さて、それじゃお前たちの行動指針だが――」
そして、ローザが話を改めようとした――そんなタイミングで、小さな少女がその体躯に似つくわしくない尊大で挑発的な言葉を放った。
「絶氷と禁眼の強さは聞いた。土兎の強さは知っている。じゃあ、あなたは強い?」
ピシリッ。
聞こえるわけがない、聞こえるわけがないのだが確かにそこに座っていた皆の耳には空気がひび割れる音が聞こえた。
「…………カカッ! 種族差別をするつもりは一切ないのだが、やはり獣人族ってヤツラは最高にバカで最高だ。ちなみに、あたしは平和主義者だから無用な争いは好きじゃない。それに立場もあるから普段であれば売られた喧嘩など買うことはないのだが――」
(((……嘘だ)))
そう言うローザは非常に好戦的な笑みを浮かべ、目が爛々と輝いてしまっているため、誰しもが先の言葉が単なるフリでしかないことを悟る。そして現に――。
「お前たちを戦力とみなすと言ったんだ、実力を確認するという目的で仕方なーく買ってやろう。まぁママ達に育てられて弱いってことはないだろうからな、くれぐれもあたしを失望させるなよ? ――さて、じゃあ小さなライオンさん?」
どうやら茶番じみた長い前フリが終わったようだ。ローザは、レーベを真っ直ぐ見つめ――。
「お稽古の時間だ。SSSランクに喧嘩を売るってのがどういうことか教えてやろう」
獰猛な牙を覗かせるのであった――。
(災厄の魔眼か……。開眼したが最後、本人もろとも街の一つ二つを吹き飛ばす災厄の魔眼……。その爆発の中心地は何もかもが消し飛び、眼球だけが落ちているとか……。そもそも開眼例もそんなに多くはないが、現在、過去を通して、開眼した際、生きているのは禁眼のみ、か)
テュールはギルドから公に開示されている禁眼と呼ばれる女性とその名の由来であるカラミティサイスの情報を思い出す。しかし、情報規制がされているため、その他の情報は眉唾ものの噂だけである。
テュールがうんうん唸りながらそんなことを考えていると、その横でテップが緊張感の欠片もない声でローザに問う。
「んで、そのカラミティサイスとかいう物騒な眼は、もう大丈夫なのか?」
「ん? あぁ、完璧にコントロールできているから暴走の心配もないな。ただ、そうは言っても過去を遡れば何百例に及ぶカラミティサイスの爪痕は簡単には人々の心から拭えない。正体が知られれば迫害されるのは目に見えているからな。それに――」
ローザはそこまで言いかけて、バツの悪そうな顔をして頭を掻く。
「あぁー、お前らにはここまでは言っていいだろ、あたしが教えたって言うと怒られるから黙っとけよ? カラミティサイスが開眼する年齢は不明だ。というか誰が開眼したかなど分からない。調査しても眼以外何も残ってないんだ。そして10年前に起きた開眼による爆発当時、生き残った禁眼は5歳だ。つまりヤツはお前らと同年代で最年少SSSランクホルダーだよ。な? そんないたいけな少女が迫害されるなんて忍びないだろ?」
「――っ!!」
それを聞いたレーベの目が僅かに見開かれる。獣人最強、世界最強を目指す彼女にとって同年代で既に種族の頂点に立っている禁眼に驚きを隠せないのであろう。
「いや、でも冒険者って登録は15歳からじゃ……それにSランク以上は実績がうんたらかんたらって……」
「はぁ……、あんたは本当にそういうのに興味ないんだねぇ。あんたの歳くらいで冒険者になったらみんなSSSランク目指すって目が輝いているってのに、枯れちまってるさねぇ」
テュールがツッコもうとすると、ルチアが深い溜め息をつき、できの悪い息子を叱るようにそう発言する。
「テュールさん……SSSランクだけは特別な枠ですから……」
「だねっ。SSSランクの条件は一つだよ?」
「ん。種族の中で誰よりも強ければいい」
そして、他の者は当然知っており、テュールに畳み掛けるように説明をする。
(あぁ、そうか。なら15歳になった瞬間SSSランクでもおかしくないのか……。いや、おかしいけどな。どんな強さだよ、その禁眼って子は……)
そんな納得のいかなそうな顔をしているテュールを見て、ローザが愉快そうに笑い、言葉を続ける――。
「カカッあいつは強いよ。カラミティサイスは使ってみて驚きの最強の魔眼だったからね。あいつが生きている限り世界一の魔法使いの座は変わることがないだろうよ」
その言葉には親しみが込もっており、テュールは、SSSランク同士何かしらの繋がりがあるのだろうと予測する。
「なんかローザはその禁眼と仲良さそうなのだ」
そして、同じことを思ったのであろう幼女は、躊躇なくストレートを放る。実にいい性格である。
「カカッ。あぁ、あいつはあたしが育てた」
「ブッ!! ――けほっけほっ。育ての親かよ!?」
ついつい相手が王族に連ねる者だということを無視し、ツッコんでしまうテュール。
「ん? あぁ、いや正確にはあたしも育ての親の一人ってとこだ。カカッ、あたしと絶氷と土兎の美人3人組で育てたんだ。そりゃ強く美しく育つってもんさ」
(な、なんだよ、そのサラブレット。SSSランクでしかも美人な3人に育てられて、最強の魔眼まで持ってるなんて! で、最年少SSSランク? どんな主人公属性だよ……)
と、嘆くテュールであるが、彼も世界を救った英雄とも呼べる元SSSランク5人に育てあげられ、五大国プリンセスパーティのリーダーをやっているのだから主人公属性では負けていない。が、隣の芝は青く見えるものである。
「と、紹介が長くなっちまったが、そんなやつらが各々の国を守っているんだ、安心して自分の国だけに専念できるってもんさ。まぁ万が一自分だけで手に負えないような時はあたしたちが駆けつけるがな。言葉や約束にしなくとも肚は同じさ。さて、それじゃお前たちの行動指針だが――」
そして、ローザが話を改めようとした――そんなタイミングで、小さな少女がその体躯に似つくわしくない尊大で挑発的な言葉を放った。
「絶氷と禁眼の強さは聞いた。土兎の強さは知っている。じゃあ、あなたは強い?」
ピシリッ。
聞こえるわけがない、聞こえるわけがないのだが確かにそこに座っていた皆の耳には空気がひび割れる音が聞こえた。
「…………カカッ! 種族差別をするつもりは一切ないのだが、やはり獣人族ってヤツラは最高にバカで最高だ。ちなみに、あたしは平和主義者だから無用な争いは好きじゃない。それに立場もあるから普段であれば売られた喧嘩など買うことはないのだが――」
(((……嘘だ)))
そう言うローザは非常に好戦的な笑みを浮かべ、目が爛々と輝いてしまっているため、誰しもが先の言葉が単なるフリでしかないことを悟る。そして現に――。
「お前たちを戦力とみなすと言ったんだ、実力を確認するという目的で仕方なーく買ってやろう。まぁママ達に育てられて弱いってことはないだろうからな、くれぐれもあたしを失望させるなよ? ――さて、じゃあ小さなライオンさん?」
どうやら茶番じみた長い前フリが終わったようだ。ローザは、レーベを真っ直ぐ見つめ――。
「お稽古の時間だ。SSSランクに喧嘩を売るってのがどういうことか教えてやろう」
獰猛な牙を覗かせるのであった――。
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