とある英雄達の最終兵器

世界るい

第119話 大体強い人たちのコミュニティってのは固まる

 それからルチア、エリーザ、ローザの3人からテュール達に現状が説明される。


「……ということは、まだ猶予があるのか」


 テュールは、説明の中にあったラグナロクがリエース共和国で召喚に踏み切るのは早くとも1年後という言葉を聞き、そう漏らす。


「いや、あまり楽観視はできないさね。ラグナロクは意図して誤った情報を流し、操作するのも常套手段さ。計画を立案するのは幹部のみ、末端はその情報を疑うことなく遂行する。故にどれだけ尋問してもそれが正しいか確かめようがないさね」


「なるほど……。では、お祖母様、今回の情報はどこからなのでしょうか?」


「……あたしの信頼する筋からさね。ただそいつも情報の精度については常に疑ってくれと言っていたね。もしかしたらリエース共和国は陽動で、実際に狙われる代償は他国ということもあり得る」


 セシリアとルチアの問答が終わると、場には重苦しい空気が残る。出口の見えない迷路に迷い込んだように皆は明るくない先行きに表情を暗くした。そんな中、ローザが大きく覇気のある声で喋り始める。


「カカカッ。こういうのは攻め手が有利なんだよ。守る側はいつだって後手後手だ。だからあんま悩みすぎんな、単純に考えろ。うちはユグドラシルを守り、リエースを守る。攻められなかったらラッキーだったな、だ。他国? っふん、あいつらがいればなんとかなるさ」


(あいつら……?)


 ローザが安心しきった顔で、他国を任せられると言ったあいつらが気になるテュール。それはテュール達一行の他の面々も同様のようでその顔に疑問符を浮かべている。それを見たローザは――。


「ん? あぁ、あいつらってのは現SSSランクのやつらだよ。龍族の絶氷、魔族の破剣、獣人族の土兎、そして人族の禁眼だな。知り合いもいるだろ?」


 そう言って、各国のお姫様方、それにアンフィスに視線を配る。


「……まぁ、龍族のとは知り合いだな」


 仕方なく、そう返答するアンフィス。


「へぇ、アンフィス龍族のSSSランクと知り合いだったのか。で、どんな人なんだ?」


 今までSSSランク冒険者の噂や二つ名は聞いていたが、いまいち興味を持っていなかったテュールが、ここにきて話の流れからアンフィスにそう尋ねる。


「……姉貴だ」


「へ?」


 その答えに目を丸くしたテュールは、直ぐ様レフィーへと顔を向ける。


「あぁ、私の叔母にあたる方だな。まぁ、間違っても叔母様などと呼ぶと凍らされるがな。私はお姉様と呼び、慕っているぞ」


 レフィーは、なんでもない親戚の紹介のようにそう説明する。そしてそれに付け加えるようにローザが説明を足す。


「ちなみに絶氷は身体能力だけで言えば現存する人々の中で世界一じゃないか?」


「カカカ、そうさね、今のファフニールより強いかも知れないねぇ。それに強いと言えば、あの子が反抗期の時はひどかったさね。ファフニールとの親子喧嘩で山がいくつ吹き飛んだか……。それを止めに入った母親もいつの間にかヒートアップしちまうし、結局あたしらが総出で止めに入ったものさ、いや懐かしい」


 微笑ましい話のように懐かしむルチアであるが――。


(いや、山いくつもふっ飛ばしてるからな? つーか龍族ってそんなんばっかかよ……)


「俺は違うからな?」


 頭を抱えるテュールを見て、察したのかそう断言するアンフィスであった。


「あとは破剣がツェペシュ公と仲が良いな」


 ローザがそんなやり取りに笑みを浮かべながら話を引き戻し、リリスに話しかける。


「ん? ハケン? そんなやつは知らないのだ」


 が、リリスには全く響いていなかった。


「ん? ツェペシュ公の城に住んでいる筈だぞ?」


 しかし、負けじとローザも食い下がる。これに対しリリスはむむむと唸りながら首を回し――。


「あぁ、トンチンカンのことなのだ?」


「「「トンチンカン?」」」


 その奇っ怪な呼び名にテュール達一同マヌケ面でそう聞き返す。ルチアやローザ、エリーザも目を丸くしている。


「そうなのだ。いっつもいっつも、城の中でトンチンカン! って剣を打ってるからトンチンカンなのだ」


 あぁ~なるほど――。


 皆が納得しかける。が、しかし、それが本当に破剣なのかいまいち信じられない一同はローザへと振り返る。


「あ、あぁ。そいつが破剣に違いないな。あいつは生成魔法も一流だが、自分で打った武器で戦うのをモットーとしているからな。それにしてもトンチンカンか。カカッ、いいあだ名だ。次に会った時はそう呼んでやろう」


 ローザはそう言って、実に意地悪な笑みを浮かべるのであった。


「あとは――」


 そして、ローザはひとしきりニヤニヤした後、表情を戻し、レーベへと顔を向ける。


「ん。獅子は兎を狩る時だけ本気を出せる。白兎族は獅子族のライバル。当然何度もお家へ遊びにいった」


(……獅子と本気でやりあう兎ってどんなんやねん。あと遊びにいったって表現は正しくないな。殴り込みにいった、だろうな……)


 獅子族と白兎族は交互にSSSランク冒険者になっており、こちらの世界では獅子と兎は同格の存在であるという常識はテュールも知っているが、それでも尚心の中でツッコまずにはいられなかった。


(それにしても、お姫様方はみんなSSSランクと知り合いか、ということはカグヤも――?)


 自然と皆の視線がカグヤに集まる。しかし、カグヤは困った顔で――。


「あははっ。みんなごめんなさい。実は、私は禁眼さんと会ったことがないだんだよね……」


 そう答えるのであった。

「とある英雄達の最終兵器 」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く