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とある英雄達の最終兵器

世界るい

第113話 エフィルは二度ぷぎゃーする

 トコトコトコ――。


 テュール達はセシリアを先頭にして歩く。そして歩きながらテュールはつい先程ルーナから注意されたことを頭で反芻し、両隣を歩くテップとレーベに声をかける。


「おい、テップ」


「んぁ?」


 まずはテップに話しかける。当のテップは後ろに流れていくエルフのお姉さん方を横目で見ており、テュールのことなど全く意識していなかったようだが。


「いいか、よく聞け。セシリアの家には冒険者ランクSSSの茨姫がいる。くれぐれも失礼なことをするなよ? あと、間違ってもエリーザさんや茨姫やもしかしたらいるかも知れないメイドさんをナンパするなよ?」


「茨姫……ローザかぁ。大丈夫だ。君子危うきに近寄らずだからな……。心配すんな、言われても近づかねぇよ……。ま、向こうが――いやなんでもないわ」


「……? ならいいけど」


 なんとなく含みのある言い方をするテップ。テュールは普段の調子とは違う口調を訝しげに思うが、大人しくしてくれると言うのだからわざわざ混ぜ返すこともない、そう考え話を打ち切る。


「で、レーベ。聞いてたか?」


「ん。言いたいことは分かってる」


 レーベにジト目で問いかけると、自信満々の返事が返ってくる。確かに見た目は小さいが、ここにいる面々は皆同じ歳なのだ。ましてレーベも王族だ。礼節、マナーといったものは一通り教育されてるであろう。テュールはホッと胸を撫で下ろす。


「そうか、分かってくれてたか。いやー、ハハハ、良かったよ。どうしたもんかと思い悩んでいたところだったからさ」


 テュールは、表情を柔らかくしテップとレーベの問題が片付いたことについつい声色まで明るくなる。


「ん。茨姫相手でも私は逃げない。心配しないで」


「おう、そうか。良かった良か――え?」


「ん?」


 テュールはつい右側を歩くレーベを凝視してしまう。それにつられてレーベもテュールを見つめる。


「違う違う違う違う。ぜんっぜん違う。あり得ないから! 人様のおうちにお邪魔して初対面でいきなり試合申し込むとか、王族としてだけじゃなく人としてもおかしいから!」


「……え? 私のところでは普通だった」


「「…………」」


(そうか……、リオンの作った国だもんな。毎日道場破りならぬ、おうち破りがあってもおかしくないよな……。そうだ、レーベは悪くない、悪いのはあの脳筋ジジイなんだ……)


 しばし価値観の違いについて考え込むテュール。そして出した答えは少女に非はない、だ。しかし、セシリア家でおうち破りしていいかどうかはまた別問題である。


「あー、レーベ。まぁ、そのなんだ。実はおうち破りにも作法がある。……そう! それは師匠が挨拶し、試合を提案し、了承を貰わなければならないんだ!」


 テュールは我ながら上手いことを考えたものだと内心ドヤりながら早口でまくし立てる。


「……ん。確かに。じゃあししょーお願いします」


「任せたまえ」


 どうやら納得したらしくレーベが頭を下げ、頼み込んでくる。これに対しテュールはちょっと渋い顔をして了承をする。


(ふぅ。ひとまずこれで最悪の事態は避けられるだろう。茨姫とやらの性格を把握してからやんわりと流してもらおう。エリーザさんの妹で、セシリアの叔母だろ? ぜってー優しい人だもんなー)



 こうして一級フラグ建築士であるテュールは、茨姫、ローザを優しくおっとりした人と決めつけた。そうこうしている内に――。


「見えました~。あれが私の家です。フフ、なんだかちょっぴり恥ずかしいですね」


 少し照れくさそうに建物を指差すセシリア。その指の先には、城――とまではいかないが、流石はエルフ族を代表する一族の住まいと言える立派な屋敷があった。そして、玄関先には――。


「おかえりなさいませ、セシリア様。それに皆様もようこそいらっしゃいました。お久しぶりです」


「エフィル! ただいま! エルフからすればほんの少しの時間なのに、なんだかすごく長く感じて……はいっ」


 エフィルが出迎えに待っていた。そしてセシリアは駆け寄ると両手を広げる。


「フフ、セシリア様? それではまるで恋人ですよ――なんて私が言ったらクビになりかねませんので聞かなかったことにして下さい。ですが私もお会いしたかったです」


 照れくささを誤魔化すように茶化しながらエフィルはそう答え、セシリアとハグを交わす。
 
 
(それでセシリア様? テュール殿とはその後どうですか?)


 ハグの最中セシリアの耳元で小さくエフィルが呟く。
 
 
(もぅ、エフィルったらからかわないで)


(ハハハ、すみま――)


 そんなやりとりを二人がしているとレフィーと手を繋いで歩いていたウーミルがトコトコとテュールの元まで歩き、パパだっこーと甘えはじめる。当然パパは言われた通り甘やかす。しかし、それを見たエフィルはピキリと固まる。
 
 
 そして、ゆらーり、ゆらーり。
 
 
「エ、エフィル? どうしたの?」


 セシリアから離れ幽鬼の如くテュールに近づいていくエフィル。
 
 
「テュ、テュール殿……。その子の父親と母親の名前を教えてもらってよいでしょうか?」


「え? あ、あぁ……、その、えっとだな?」


 妙な迫力で問いかけてくるエフィルに尻込みをするテュール。しかし抱きかかえた我が子はいとも簡単に――。
 
 
「うーはパパと! ママのコ!」


 ズビシッとテュールとレフィーを指差す。
 

 それを聞いたエフィルは――。
 
  
「ふ……」


「ふ……?」


「ふわぁ~……」


 ガクッ。
 
 
 白目を剥き、膝から崩れ落ち――。


「ハッ!? 今、渡ってはいけない川が見えたような……。まぁ、いいです。ところで、それは本当なのですかテュール殿……?」


 そうになったが、意識をなんとか取り戻し、テュールに詰め寄る。


「え、あぁ、まぁ」


「そ、そうですか……」


 はたから見ても明らかに落胆したのが分かる表情と肩の角度になるエフィル。


 その後、エフィルはトボトボとセシリアのところまで戻り、セシリアをギュッと抱きしめ――。


「セシリア様……、私はいつまでもセシリア様の味方です。今夜は朝まで付き合いますよ」


 精一杯作った笑顔でそう言う。しかし当のセシリアは――。


「え、あ、うん。エフィルありがとうね? フフフ、でも大丈夫よ。ユグドラシル家の女性は強かですから。テュールさんもレフィーさんも気にしないで下さいね? エフィルは一直線で純情な子なので……、さ、エフィル? 家に皆さんを案内してくれる?」


 少し困ったような笑顔でそう言うのであった。


「あっ、はい! これは失礼しました! では、皆様――ぷぎゃっ」


「何を人の玄関先でやっとるんだい。早く入ってきな。ん? エフィルはなに遊んでるんだい、まったく」


 そして、エフィルが扉を開こうと手を伸ばしたところで玄関が開き、ルチアが顔を覗かせそんなことを言う。


「はいっ! 申し訳ありませんでした! では、改めて皆様どうぞユグドラシル家へ!」


 テュールであれば遊んでいるわけじゃないと言い返すところであるが、流石はエフィルである。文句一つ顔に出さず、直ぐ様立ち直りテュール達の案内を始める。そして、その目に涙が溜まり、鼻先が赤かったことは誰もが気付いたが、その健気な姿勢に誰もツッコめる者はいなかった。


「おねーたん、おハナまっか――もごもごご」


 と、思ったが、ウーミアだけはエフィルを指さし、大声でツッコンでいた。その口を素早くテュールとレフィーの手が塞いだのは言うまでもない。


「ハハハ……、では、皆さん荷物をお預かりします。まずは、現当主であるエリーザ様にご挨拶しますので、広間へと向かいますね。その後はそれぞれの客室へと案内いたします。それから夕飯までは少し時間がありますのでご自由にお過ごし下さい。時間になったらお呼びに行きます。では、こちらが広間です」


 テュール達は玄関で荷物を預け、廊下を歩きながらエフィルの説明を聞く。そして、広い屋敷内を歩き回り、一際大きな扉の前で立ち止まる。そしてエフィルが扉に手をかけると――。


 バンッ!!


「ぷぎゃっ」


 扉が勢い良く開かれ――。


「クハハハハ!! 良く来たな!! おぉ~久しいなセシリア!! またお前は乳ばかりデカくなって、ん~? 前会った時より色っぽくなったじゃないか! なんだ、いっちょまえに恋でもしたのか? んん~?」


「叔母様、お久しぶりです。ただいま戻りました。えぇ、恋をすると乙女は強く綺麗になれると叔母様から教えられましたから。あと、足をどかして頂けると嬉しいです。その……エフィルが苦しそうですので」


 エフィルを踏みながら駆け寄ってきたのは、セシリア、エリーザとそっくりな美形のエルフ、中身はややおっさん臭い茨姫――ローザであった。

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