とある英雄達の最終兵器

世界るい

第106話 全国の便利屋さんごめんなさい

 それから山を大きく迂回し、平原を物凄い速度で走り抜けていくベヒーモス車。


 そして――


「あっ」


 っと言う間に――。


「おい、あれリエース共和国じゃないか?」


 見えてきた街をみてテュールがセシリアにそう尋ねる。


「えぇ、そうです。久しぶりの故郷です。お父様とお母様元気でしょうか」


 セシリアは先に見える祖国に思いを馳せる。


「うんうん。んじゃ、セシリアも早く故郷の地を踏みたいだろうから入国するか――」


「「待った(待つのだ)」」


 テュールがさも当然のように言うが、御者席に座る男と、膝の上に座る少女から待ったがかかる。


(はぁー。本気かよ……。このまま入国すれば絶対一番だからいい宿と食事だったのにぃ)


 ダメ元で言ってみたが、やはりダメだったので大人しく他のみんなに従うテュール。


「よーし、ツヨシ。ここらへんでいいだろう。川も近いし、森もある。うんうんキャンプにぴったりだ! さぁお前ら降りろ降りろ!」


 御者が板についたテップが、ツヨシを停め、そう声をかける。一同はそれに従い、車を降り、ツヨシを労う。ツヨシもるふぁるふぁと鳴き満足げな様子だ。


「お、俺も頑張ったのに……」


 ツヨシだけ労われて、手綱を握っていた自分に労いの言葉がないことを大袈裟に嘆くテップ。一同は慌てたようにテップをヨイショする。少女たちの2巡目の慰めで既に笑顔になっているテップのチョロさはもしかしたらロディニア大陸、いや、このアルカディア一かも知れない。


「で、キャンプ隊長、どうするんだ?」


 とりあえずヨイショの間にキャンプ隊長にまで押し上げられたテップにテュールがそう尋ねる。


「いよーし! では、今から隊員諸君に役割を与える! 心して聞けぇぇい!」


 それにしてもこのテップノリノリである。そして、そんな隊長から役割が発表された。


 まずは総監督兼テント設営担当、テップ隊長。調理担当、女子チーム5人。食材調達アンフィス、ヴァナル、ベリト。便利屋テュールとのこと。


(便利……屋?)


「おい、テップ? 俺の便利屋ってなんだ? おい、テップ。おい。…………。隊長、便利屋とはなんでありますか?」


「うむっ! よくぞ聞いてくれた! テュール二等兵よ! 便利屋とは即ちパシリだ! キビキビと我らの手となり足となるのだ! ふぅーはっはっは!」


 テップと呼んでも無視するくらいには隊長が気に入ってる様子のテップが超絶上から目線でテュールにそう申し付ける。


(こんにゃろう……。一発殴るか……!)


 下唇を噛み、握りこぶしを構えたところで、左右からカグヤとセシリアに止められる。


「テュールくん……」


「テュールさん……」


 それ以上は言葉に出さず、ただ頭を左右に振る二人。


 テュールは一つ深呼吸をし、グッと堪える。


(まぁ、確かに俺がテップの立場だったらこれくらいはしたくなるよな……。うん、そう考えたらなんだか余裕が――)


「おい、二等兵! まずはテント設営だ! 骨組みもぱぱぱっと組み立て、ホロをしゅぱぱぱっと掛けるんだ! 当然男女別だから2つだ! 二等兵だけ『一緒に寝て欲しいのだー』とか『一緒に寝る』とか言われても絶対女性テント入室はダメだかんな!! これ以上のラブコメは神が許しても俺が許さんっ!!」


 ゼーハー、ゼーハーと、途中リリスとレーベの声マネを入れつつ、そう捲し立てるキャンプ隊長。テュールは一瞬怒りが再沸騰しそうになるが、あまりの必死さに、一周回って生温かい目――にはならず、ドン引きであった。


 そんなこんなでテュールはテント設営から食材運びから調理下ごしらえまで馬車馬の如く働かされた。ツヨシのブラッシングまでさせられたらどうしようかとも思ったが、そこはテップ隊長が譲らなかった。恍惚の表情でツヨシをブラッシングするテップ。ブラシを奪い取り、私がやるとレーベ。どこにいても賑やかなテュール一行であった。


 そして、夕飯は定番のカレーを作り、食べ終わったら風呂に入る。ちなみに風呂は生成魔法で浴室を作って入った。では、テントもそうすればよいのでは、とテュールがツッコんだがテップやリリスだけでなく他の面々からも風情がないと怒られた。その時のテュールの表情がひどく悲しげだったのは言わないでおこう。


 その後は、焚き火を囲み、星空の下、他愛もない雑談に興じる。瞬く間に時間は過ぎ、日付も変わろうかという辺りで――。


「そろそろ寝ようか」


 テュールがそう提案する。当然、頷かれるはずだと思った。が、しかし――。


「は? お前はアホか? 今から深夜の枕投げタイムだ」


 呆れた声でテップにそう言われる。アホなのはお前だテップ、とテュールはツッコミたかったが、何故か少女達5名の目が輝いていたので言葉を飲み込まざるを得なかった。


(俺か? 俺が空気読めてないのか?)


 そして若干落ち込むのであった。


 そして、枕投げを屋外でやるわけにもいかないため、テントに入ることとする。当然男子テントだ。テント内は無駄にと形容詞がつくほどに広く、10人入ってもかなり余裕があった。


「んじゃ、ルール説明するぞー。バトルロワイヤルな? 枕以外の攻撃はなしだ。んで、最後に立っていたやつは一つお願い事を言える。まぁ個人でもみんなにでも、どちらでも、な。おーけい?」


 隊長の提案に女子5人の目が怪しく光る。少女たちは口では無茶なお願いはダメ、とかエッチなのはダメとか言っているが――。


(あれはヤバイ。女性陣が勝ったらなんかヤバイ気がする)


 何故か背筋に寒気を感じるテュールであった。

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