とある英雄達の最終兵器
第89話 空気がおいしい
そして日曜となる。
先週の約束通り、今日はレフィーと一緒に龍族のお見合いブチ壊しイベントへ行くこととなっている。
「さて、俺は支度できたけど……。ップ、アンフィスお前のフォーマル姿とか笑えるな。あと何回見れるか分からないからしっかりと目に焼き付けておこう」
目の前にはカッチリとしたフォーマル服を装ってるアンフィスが苦々しい顔で立っていた。隣には厳ついおっさんもいる。
「フハハハハ、アンフィスそうイヤな顔をするな。お前の叔父と従兄弟に会えるんだ。ほら、楽しい気持ちに――」
「なるわきゃないだろうが。はぁ……。どうして俺がこんなことに……。最近なんだか――」
ブツブツとアンフィスが愚痴を零している。今回の視察という名目のお見合いには四龍王でファフニールの弟であるボルトとその副官を務め息子であるミリアンが来る。というわけで龍族の皇族身内挨拶みたいなものとなっているわけだ。そんな中、人族の俺が恋人ですって登場するわけ、超場違いね。
そしてやれ三人でグダグダ話をしていると階段からシンプルで上品な真紅のワンピースを着たレフィーが降りてくる。そしてこちらを見るなり――。
「フフ、アンフィス叔父さん似合っているじゃないか」
いやらしい笑みを浮かべ、そんなことを言ってくる。流石レフィーだ、的確に嫌がる言葉をチョイスしてきている。アンフィスはうんざりした顔で、お前もお似合いだよ姪っ子さんとか言っている。
そしてアンフィスの反撃とも言えない反撃をするりと躱し、レフィーは、ファフニールの前に立つ。
「お爺様お待たせしてすみません。準備ができました。参りましょう。アンフィスとテュールも待たせてすまないな」
「んむ、では行くとするか」
「へいへい……」
「了解ー」
ファフニールを先頭にアンフィス、レフィー、テュールと続く。家の中にはみんなが見送りに玄関まで集まり、ひとしきりアンフィスをからかった後、朗らかな笑顔で送り出してくれる。どこぞのちびっ子はお土産にお菓子がほしいとかとか言ってきたが無視だ。俺は遊びに行くわけじゃない。……セシリアとレーベまでそんな顔をするな。分かった分かったお菓子な……。
「「「アウッ」」」
仕方なくお菓子を買ってくることを約束し、扉を出ようとしたところでポメベロスが駆け寄ってくる。
「すまないな、今日はお留守番だ。いい子で待ってるんだぞ?」
「「「アウッ!」」」
ポメは聞き分けが良く、そう鳴くなりUターンして、ナベリウスの胸まで這い上がり抱えられている。
「いってらっしゃい。私とポメの分のお菓子もよろしく」
ナベリウスは片手でポメを抱え、片手でひらひら手を振りながらそんなことを言ってくる。テュールは苦笑し、了承するとようやく四人は家の外へと踏み出す。
そしてテュールは道すがら、気になったことを隣を歩くレフィーに尋ねる。
「ん? そう言えばそのミリアンってヤツがレフィーを気に入ってるんだろ? 一体いくつなんだ?」
「あぁ、ミリアンは確か……30手前くらいだったかな? 龍族は世襲制ではなく実力主義だからその若さで四竜王副官になったのだからまぁそっち方面は優秀なんだろう」
ほぉー、なるほどね。30手前が15の少女嫁にしたいとかロリコンですやんって言いたいけど、まぁ龍族には龍族の年齢基準がありますもんね……。俺? 気持ちも体も16歳だから……。転生前の年齢なんて飾りですよ飾りハハハ……。
「で……向かう場所ってどこなんだ?」
「ん? なんだそんなことも知らずについてきたのか?」
隣を歩くレフィーが呆れ顔でそうツッコんでくる。言っていい? ついてきたんじゃなくて連れていかれてるんだよ? 君に。
「アンフィス。お前知ってる?」
前を歩くアンフィスも知らないだろうと高をくくり尋ねてみる。当然答えは――。
「あん? んなもん大使館に決まってるだろ」
し、知っていた……だと? そして大使館、大使館……。大使館かぁ……。
「大使館か、そんなもんもあったなぁ……」
「フハハハ、そりゃ我らが作った都市だからな。当然大使館のシステムくらい作ってある。ちなみに地球と同じように大使館は治外法権だ。龍族のルールに従ってもらうこととなる。なーに、我がルールみたいなもんだ。フハハハハ!!」
……よくこんなヤバイおっさんが国を治めたな。恐らく四龍王とかいう側近の方々は苦労されたんだろうな……。
「見ろ、アレだ」
そんなことを喋っている間に立派な門が見えてきて、奥には広い庭とこれまたデカい建物が見える。門の近くには鱗と尻尾を持つ半人半竜の竜人が立っており、レフィーが手続きを行う。
そして大使館の建物の方から人族……ではないよなぁ、この流れだと純粋な龍族であろう人が近付いてきて話しかけてくる。
「ようこそおいで下さいました。公龍皇様にレフィー様。そして噂はかねがね聞いております、アンフィス様。お会いできて光栄です。私は大使のヒュペリオンと申します」
どうやらファフニール、レフィーとは会ったことがある様子だ。まぁ大使館で皇族の案内を任さられるような人物なんだ相当お偉いさんなんだろう。そして、そんな人にお会いできて光栄とか言われるウチのアンフィス様……。帰ったらアイツらに報告だな。
「……それで、そちらの方はどなた様でしょうか?」
そんなことを考えているテュールを見てヒュペリオンがチラッと目の奥に訝しげな色を浮かべるが、仮にも皇族の連れなのだ正体が分かるまでは無礼な扱いはできないと一瞬でその色を消す。流石大使。まぁけど、この3人に人族がくっついてきたら驚くよね。
そしてヒュペリオンの質問にレフィーが堂々と――。
「あぁ、紹介しよう。人族で私の恋人であるテュールだ」
言い切る。とにかく話を合わせろとレフィーからのお達しなので――。
「どうも初めまして、人族でレフィーさんの恋人であるテュールです。よろしくお願いします」
とにかく話を合わせる。俺はオウムだ。イエスマンだ。しかし、ただでさえ人族が隣を歩いているのに驚いているのに、その上こんなことまで言われたらヒュペリオンさんビックリして固まっちゃってるじゃん……。
「……そ、そうでございましたか。ハハ、いやはや皇女様を射止めるなど実に幸福な御方ですね……。で、ではボルト様とミリアン様は昨夜到着しており、北龍の間でお待ちしていますのでご案内いたします」
再起動したヒュペリオンさんはかなり無理した笑顔で、上ずった声を出しながら歩き始める。
四人はそれに付いていくように歩き始めるとテュールは隣を歩くレフィーにボソッと耳打ちをする。
(おい、レフィー? 俺のこと知らせてなかったのか?)
(ん? あぁ、事前に言っておくと面倒なことが増えそうでな)
ヒュペリオンの耳が極僅かに動くのを見て、レフィーは話を打ち切る。はぁ、やれやれ。
「さて、着きました。北竜の間になります。……失礼します。公龍皇様一行をお連れしました。……では、どうぞ」
ヒュペリオンがノックをし、来訪を告げ、扉を開ける。そして目の前にはファフニールと同じようなガチムチの厳ついおっさん、恐らくあれがボルトさんだろう。と、金髪でホウキ頭のチャラい兄ちゃんがいた。
「おぉ、兄上久しゅうございます! それにアンフィスとレフィーもちょっと見ない間に大きくなったな!」
厳ついおっさんがそう言う。そして、隣のチャラい兄ちゃんは――。
「公龍皇様久しぶりでございます。アンフィスも久しぶりだな、会うのは10年ぶりだが覚えているか? そーしーて、レフィーたまぁぁあ!! 会いたかったよぅ! 会いたかったよぅ! ここ数ヶ月寂しくて夜も眠れなかったよぉぉおおぶっ、ゴホッ、ゲハッ。失礼……。スゥーーハァーー、あぁ、レフィー様のいる空気が美味しいよぉぉぉおお!!」
頭のおかしい兄ちゃんであった。
先週の約束通り、今日はレフィーと一緒に龍族のお見合いブチ壊しイベントへ行くこととなっている。
「さて、俺は支度できたけど……。ップ、アンフィスお前のフォーマル姿とか笑えるな。あと何回見れるか分からないからしっかりと目に焼き付けておこう」
目の前にはカッチリとしたフォーマル服を装ってるアンフィスが苦々しい顔で立っていた。隣には厳ついおっさんもいる。
「フハハハハ、アンフィスそうイヤな顔をするな。お前の叔父と従兄弟に会えるんだ。ほら、楽しい気持ちに――」
「なるわきゃないだろうが。はぁ……。どうして俺がこんなことに……。最近なんだか――」
ブツブツとアンフィスが愚痴を零している。今回の視察という名目のお見合いには四龍王でファフニールの弟であるボルトとその副官を務め息子であるミリアンが来る。というわけで龍族の皇族身内挨拶みたいなものとなっているわけだ。そんな中、人族の俺が恋人ですって登場するわけ、超場違いね。
そしてやれ三人でグダグダ話をしていると階段からシンプルで上品な真紅のワンピースを着たレフィーが降りてくる。そしてこちらを見るなり――。
「フフ、アンフィス叔父さん似合っているじゃないか」
いやらしい笑みを浮かべ、そんなことを言ってくる。流石レフィーだ、的確に嫌がる言葉をチョイスしてきている。アンフィスはうんざりした顔で、お前もお似合いだよ姪っ子さんとか言っている。
そしてアンフィスの反撃とも言えない反撃をするりと躱し、レフィーは、ファフニールの前に立つ。
「お爺様お待たせしてすみません。準備ができました。参りましょう。アンフィスとテュールも待たせてすまないな」
「んむ、では行くとするか」
「へいへい……」
「了解ー」
ファフニールを先頭にアンフィス、レフィー、テュールと続く。家の中にはみんなが見送りに玄関まで集まり、ひとしきりアンフィスをからかった後、朗らかな笑顔で送り出してくれる。どこぞのちびっ子はお土産にお菓子がほしいとかとか言ってきたが無視だ。俺は遊びに行くわけじゃない。……セシリアとレーベまでそんな顔をするな。分かった分かったお菓子な……。
「「「アウッ」」」
仕方なくお菓子を買ってくることを約束し、扉を出ようとしたところでポメベロスが駆け寄ってくる。
「すまないな、今日はお留守番だ。いい子で待ってるんだぞ?」
「「「アウッ!」」」
ポメは聞き分けが良く、そう鳴くなりUターンして、ナベリウスの胸まで這い上がり抱えられている。
「いってらっしゃい。私とポメの分のお菓子もよろしく」
ナベリウスは片手でポメを抱え、片手でひらひら手を振りながらそんなことを言ってくる。テュールは苦笑し、了承するとようやく四人は家の外へと踏み出す。
そしてテュールは道すがら、気になったことを隣を歩くレフィーに尋ねる。
「ん? そう言えばそのミリアンってヤツがレフィーを気に入ってるんだろ? 一体いくつなんだ?」
「あぁ、ミリアンは確か……30手前くらいだったかな? 龍族は世襲制ではなく実力主義だからその若さで四竜王副官になったのだからまぁそっち方面は優秀なんだろう」
ほぉー、なるほどね。30手前が15の少女嫁にしたいとかロリコンですやんって言いたいけど、まぁ龍族には龍族の年齢基準がありますもんね……。俺? 気持ちも体も16歳だから……。転生前の年齢なんて飾りですよ飾りハハハ……。
「で……向かう場所ってどこなんだ?」
「ん? なんだそんなことも知らずについてきたのか?」
隣を歩くレフィーが呆れ顔でそうツッコんでくる。言っていい? ついてきたんじゃなくて連れていかれてるんだよ? 君に。
「アンフィス。お前知ってる?」
前を歩くアンフィスも知らないだろうと高をくくり尋ねてみる。当然答えは――。
「あん? んなもん大使館に決まってるだろ」
し、知っていた……だと? そして大使館、大使館……。大使館かぁ……。
「大使館か、そんなもんもあったなぁ……」
「フハハハ、そりゃ我らが作った都市だからな。当然大使館のシステムくらい作ってある。ちなみに地球と同じように大使館は治外法権だ。龍族のルールに従ってもらうこととなる。なーに、我がルールみたいなもんだ。フハハハハ!!」
……よくこんなヤバイおっさんが国を治めたな。恐らく四龍王とかいう側近の方々は苦労されたんだろうな……。
「見ろ、アレだ」
そんなことを喋っている間に立派な門が見えてきて、奥には広い庭とこれまたデカい建物が見える。門の近くには鱗と尻尾を持つ半人半竜の竜人が立っており、レフィーが手続きを行う。
そして大使館の建物の方から人族……ではないよなぁ、この流れだと純粋な龍族であろう人が近付いてきて話しかけてくる。
「ようこそおいで下さいました。公龍皇様にレフィー様。そして噂はかねがね聞いております、アンフィス様。お会いできて光栄です。私は大使のヒュペリオンと申します」
どうやらファフニール、レフィーとは会ったことがある様子だ。まぁ大使館で皇族の案内を任さられるような人物なんだ相当お偉いさんなんだろう。そして、そんな人にお会いできて光栄とか言われるウチのアンフィス様……。帰ったらアイツらに報告だな。
「……それで、そちらの方はどなた様でしょうか?」
そんなことを考えているテュールを見てヒュペリオンがチラッと目の奥に訝しげな色を浮かべるが、仮にも皇族の連れなのだ正体が分かるまでは無礼な扱いはできないと一瞬でその色を消す。流石大使。まぁけど、この3人に人族がくっついてきたら驚くよね。
そしてヒュペリオンの質問にレフィーが堂々と――。
「あぁ、紹介しよう。人族で私の恋人であるテュールだ」
言い切る。とにかく話を合わせろとレフィーからのお達しなので――。
「どうも初めまして、人族でレフィーさんの恋人であるテュールです。よろしくお願いします」
とにかく話を合わせる。俺はオウムだ。イエスマンだ。しかし、ただでさえ人族が隣を歩いているのに驚いているのに、その上こんなことまで言われたらヒュペリオンさんビックリして固まっちゃってるじゃん……。
「……そ、そうでございましたか。ハハ、いやはや皇女様を射止めるなど実に幸福な御方ですね……。で、ではボルト様とミリアン様は昨夜到着しており、北龍の間でお待ちしていますのでご案内いたします」
再起動したヒュペリオンさんはかなり無理した笑顔で、上ずった声を出しながら歩き始める。
四人はそれに付いていくように歩き始めるとテュールは隣を歩くレフィーにボソッと耳打ちをする。
(おい、レフィー? 俺のこと知らせてなかったのか?)
(ん? あぁ、事前に言っておくと面倒なことが増えそうでな)
ヒュペリオンの耳が極僅かに動くのを見て、レフィーは話を打ち切る。はぁ、やれやれ。
「さて、着きました。北竜の間になります。……失礼します。公龍皇様一行をお連れしました。……では、どうぞ」
ヒュペリオンがノックをし、来訪を告げ、扉を開ける。そして目の前にはファフニールと同じようなガチムチの厳ついおっさん、恐らくあれがボルトさんだろう。と、金髪でホウキ頭のチャラい兄ちゃんがいた。
「おぉ、兄上久しゅうございます! それにアンフィスとレフィーもちょっと見ない間に大きくなったな!」
厳ついおっさんがそう言う。そして、隣のチャラい兄ちゃんは――。
「公龍皇様久しぶりでございます。アンフィスも久しぶりだな、会うのは10年ぶりだが覚えているか? そーしーて、レフィーたまぁぁあ!! 会いたかったよぅ! 会いたかったよぅ! ここ数ヶ月寂しくて夜も眠れなかったよぉぉおおぶっ、ゴホッ、ゲハッ。失礼……。スゥーーハァーー、あぁ、レフィー様のいる空気が美味しいよぉぉぉおお!!」
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