とある英雄達の最終兵器

世界るい

第74話 校内戦がはっじまるよー!

 ハルモニア校内闘技大会の応募期限である本日の帰りのホームルーム。ルーナが用紙に目を落とし、喋り始める――


「さて、今日が期限日なわけだが、このクラスからは……、ふむ。テュール、レーベ組だけか……。他の者はいいのか? 折角栄えあるロディニア闘技大会に出れるチャンスがあるんだぞ?」


 そう言ってから確認の意味を込めてクラス内を見渡すルーナ――


「…………ふむ、どうやらいないみたいだな。ではこのクラスの代表はテュール、レーベ組だ」


 テュールは少し意外に思う。クルードあたりが出てくると思ったがどうやら参加しないみたいだ。それにアイリス親衛隊のみんなもアイリスとペアを組むために日夜血で血を洗う闘争を繰り返していたが、どうやらこれはアイリスに断られたみたいだな。まぁいつも通り自分たちだけで盛り上がってしまってアイリスの意向などハナから聞いていなかったんだろう……。


「……ール! テュール! 聞いているのか!」


「は、はい! なんでありましょうか!?」


 いかんいかん、ボーっとしていた。どうやらルーナ女史の言葉は続いていたみたいだ。


「ハァ……。いいか? お前とレーベには期待している。しっかり校内戦を勝ち抜いて、本戦でも結果を残してこい。たーだーし! くれぐれもハルモニア校の生徒として節度ある態度、行動を心がけろ。いいか? 闘技大会と言うが政治的な側面も多分に孕んでいるんだ。問題は起こさないでくれ。テュール分かったか?」


 なぜ俺だけ? とは過去の問題を思い返せば言い出せなくなるテュールであった。


「では、他のクラス代表は来週までに決まる。そして、ちょうど二週間後が校内闘技大会トーナメントだ。この日は一日使って闘技大会を行う。観戦はオープンで、街の方々や父兄の方々が来たりする。というわけで、いいな? くれぐれも問題は起こすなよ?」


「……はい」


 視線はずっとテュールを向いたままだったのでそう返事をするテュール。その答えにルーナは満足したようだ。


「よし、では解散」


 こうしてホームルームが終了し、ルーナが教室から退室する。


「フフ、テュールくん随分先生に目を付けられちゃったね。って言ってもそれも仕方ないけど」


 笑いながら……いや、苦笑気味にカグヤが話しかけてくる。


「あぁ、俺も胸に手を置いて考えたら何も言い返せなかったよ」


「なに!? 胸に手を!? 誰のだ!? 誰の胸だ!! セシリ――ふぎゅらっ」


 とりあえず後ろから急に現れた変態を拳で黙らせる。それを見たカグヤは乾いた笑いを浮かべ、しかし放置したまま話を続ける。


「アハハ……、そう言えば校内トーナメントの方は観戦する人がいるんだね」


「あぁ、驚きだな。父兄まで見に来るのか……。まぁウチは呼べないだろうし、呼びたくはないしな」


 やや困った顔でカグヤはそれに同意する。

 
 しかしこの時テュールは気付かなかった。暗く暗く静かに笑うアンフィスとヴァナルに……。

 
 そして瞬く間に二週間は過ぎ去る。

 
 この二週間、平日は学校と修行。休日はゾンビ狩りと修行。遊んでいる時間? そんなものはない。だがテップに言わせればお姫様五人に囲まれて生活してるんだから遊んでいるようなもんだと。いや、何度も言うけどテップお前も同じ条件だからな。まぁそう言うとなぜか毎回可哀想な子を見る目で見てくるからもう言わないけど。


 そして俺の主な修行相手は相変わらず悪魔族の公爵の皆様だ。日夜殴り殴られては、斬り斬られを繰り返し、ルチアに一命を取り留めて貰いながら地獄の訓練を続けた……。

 
 いやぁなんで悪魔ってあんなにSっ気が強いのかねぇ。おかげで大分強くなれましたけども……。ん? ポメべロス? ケルベロスモードの時も含めようやく躾けられたよ……。

 
 レーベはレーベで師匠達から容赦のない修行を受けていた。元々強さに対してはストイックだったし、今回の件は昔からの夢だったのだからモチベーションは高い。泣き言一つ言わずに乗り切っている。

 
 他の皆もつられるように修行に励み、第一団は更に強くなってきている。あのテップでさえ少し根性と体力がついてきたようだ。まぁ相変わらず修行からあの手この手で逃げようとはするけど。

 
 ……セシリア? ……彼女との関係は大きな変化はない。相変わらずセシリアは優しく、健気に、甲斐甲斐しく俺の面倒を見てくれようとする。しかし、少なくともこの闘技大会が終わって落ち着くまでは考えないようにしている。レーベの夢でもある闘技大会に今は全力で当たりたい。だって俺今セシリアと恋人になったら絶対修行サボってイチャイチャしちゃうもん……。童貞舐めんなよ? というわけでヘタレチキンではない。大事なことなので二回言っておくがヘタレチキンではないからな。

 
 さて、そんなわけで今日は校内闘技大会トーナメントだ。普段から志しの高いハルモニア校の生徒は授業も真面目に受けているがやはり学生。授業がなくなって一日お祭り騒ぎの本日は皆浮き足立っている。


 校内を見渡すと観戦者であろう外部の人々が多く見られる。どうやら出店まで出ているようだ。校内を歩く人々の手には食べ物や飲み物が握られている。

 
「さて、レーベいよいよだな。サクッと優勝してロディニア闘技大会の切符手に入れようぜ?」


「ん」


 テュールの言葉に短く返事をするレーベ。しかしその声と目には闘志が燃え滾っていた。
 二人は拳を一度コツンと合わせ、会場へと入っていく――
 

 テュールは会場内に入るとまず観戦席に驚く。学生同士の試合なのだからそんなに集まらないだろうと予測していたが観戦席は既に大部分が埋まっている。そこには様々な種族が老若男女問わず同じ空間で同じ空気を楽しもうと集まっていたのだ。


 そして、そんな人々の多さに圧倒されながら会場内を見回していると、不自然な場所を見つける。その観戦席は観戦するにはもってこいのポジションでまず最初に埋まりそうな場所なのに、ある一団・・・・が座っているだけでその周りは誰も座っておらず、まるで周囲からそこだけ切り取られたかのように浮いている集団だ。


 興味が湧いたテュールは目を凝らしてその集団を見つめる。


「…………おいおい、なんだよあれは」


 そこには――

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