とある英雄達の最終兵器
第66話 身を砕いて、骨を粉々に!そうそれが粉☆骨☆砕☆身
「2ヶ月後に行われる5大国会議とロディニア闘技大会について連絡がある。両者とも3年に一度行われ、場所はここ自由都市リバティで行われるのは知っての通りだ。そしてその際、5大国会議には参加できない……が、できそうなヤツが今年は何人かいたな」
そう言って、カグヤをはじめとした皇女達に視線を配るルーナ。
「コホン、まぁ、普通は参加できない。が、ロディニア闘技大会――こちらは開催地特典か、大会創設者でありハルモニア校開設者の五輝星の贔屓かは知らないが、毎回1枠だけハルモニア校の代表が出られることになっている。……と言ってもロティニア闘技大会はロディニア大陸中の猛者どもが集まるからな、冒険者で言えば最低でもSクラスレベルだ」
「そして、学校で一枠とあるが、3年に一回しかないこのロディニア闘技大会が一学年の時に当たるのはやや不運だったな。過去に一学年から代表戦を勝ち抜いた者はいない。とは言ってもチャンスは平等だ。うちのクラスにもやる気がありそうなのが何名かいるみたいだしな」
そう言って今の話を聞いて目に力がある生徒を見て微笑むルーナ。
「というわけで、今から前期休みが始まるまでの一ヶ月の間、校内での代表戦が行われる。闘技大会はシングル戦とタッグ戦を交互に行っており、今回はタッグ戦だ。参加希望者は二人一組になり名簿に名前を記載しておけ。期日は一週間後だ。クラスで複数希望者がいた場合、クラス内で戦い、クラス代表を決める。その後各クラスの代表同士が戦い、ハルモニア校代表を決める。以上が連絡事項とその説明だ。では、用紙はここに貼っておく」
そう言ってルーナが教室の掲示板に用紙を貼り、ホームルームを終える。
さて、帰るか。ホームルームが終わるとテュールは立ち上がり、伸びをしながら帰ろうとする――ちょいちょい
「ん?」
服の裾が引っ張られる。そこにはちんまい手があり――
「ししょー、私出たい」
「出たい? ……闘技大会に?」
コクリ
テュールに話しかけているということは、テュールと出たいのだろう。
エントリーするだけなら抵抗はないが、エントリーしただけで終わりという訳にはいかない。出るからには、だ。で、あれば理由を聞いてから決めよう、テュールはそう考える。
「何でだ?」
「夢」
「夢?」
ん、と短く返事し、頷くレーベ。
「おじーさまはシングル戦で何度も出場してその度に優勝した。私はタッグとシングルどっちも優勝しておじーさまを越えたい。そしてタッグに出るならししょーって決めている」
「へぇ、リオンがねぇ、なるほど。……って、決めてるんかい」
「……おじーさまに認めてほしいから。ししょーお願いします」
切羽詰まった表情でたどたどしくも懸命に想いを伝えるレーベが、テュールに向け勢い良く頭を下げる。
「……。レーベの人生にとって必要なことか?」
コクリ。瞳に強い意志を宿し、迷うことなく頷くレーベ。
「……ふぅ、了解だ、たまには師匠らしいこともしなきゃ、だしな。出るからには優勝するからな? つーわけで今からの二ヶ月間で今日の俺と同じレベルくらいにはなってもらわないとな。当然二ヶ月後の俺は今日の俺より強いから追いつかせはしないけどな」
そう言って笑いながらテュールはレーベの頭をポンポンと撫でる。
「ありがとうししょー!」
目が輝き、笑顔を見せるレーベ。それを周りで見ていた第一団の皆が微笑ましく――
「レーベ、頑張ってね。けど私だってテュールくんと出たかったんだからね? 優勝しなきゃ少し怒るんだから」
「うむ、私もだ。テュールとなら出てもいいと思ってただけに少しだけ悔しい。その分修行をキツめに手伝ってやろう」
と思ったが少し膨れた顔のカグヤとレフィーが本気とも冗談ともとれる口調でレーベにそんなことを言う。
「ん、絶対に優勝する」
その言葉を真っ向から受け取るレーベ。
「うむ、応援しているのだー!」
「フフ、私も手伝えることがあれば手伝いますからね」
リリスとセシリアも応援してくれている。
「なら」「ボク達も」「手伝おうじゃないか」
ハードモードの修行になることが予測できているため、他対一など不利な状況で戦ったり、魔法や身体能力を制限された上での組手など行うことは知っているアンフィス、ヴァナル、テップまでもがニヤニヤとテュールをイジメるつもりでいる。
「当然私もテュール様のため粉骨砕身の思いで修行を手伝わせていただきます」
……ねぇ、それ誰が粉骨砕身するの? ベリト? ベリトが精一杯頑張るっていう話だよね? 言葉通り砕く気じゃないよね? 俺にじゃないよね? ねぇ、笑ってないで答えて? ねぇ。
こうして、第一団からはテュールとレーベが出場することとなる。そうと決まればと、レーベが急いでエントリー用紙に名前を書きに走り、焦るあまり名前を間違えて書いてしまってあたふたと直しているのが微笑ましかった。
「さて、それじゃ帰ったら修行、修行、修行だぞ」
「ん」
「よし、んじゃ帰るかー」
こうして10人は歩き出し、校内を降り正門から出る。そこで――
「じゃあ私達は買い物に行ってくるね」
「フフ、疲れを吹き飛ばして、元気いっぱいになるようなお菓子にしますので待ってて下さいね」
カグヤとセシリアの二人が別行動を取る。
……この流れで忘れてくれないかなぁとちょっと期待したのは内緒だ。
そして8人で下校し、男連中は一度自分たちの家に荷物を置いた後、モヨモト邸へと向かう。
リビングにはモヨモト達がいたため、ロディニア闘技大会に出る旨を伝える。
「ほぅ、ロディニア闘技大会か、懐かしいな。俺はシングル戦しか出たことはないが無敗だからなガハハハ!! 個の頂点なんていう大袈裟な二つ名はそん時についたもんだ。んで、おめぇらが出るってんなら当然優勝以外許さねぇからな?」
「ホホ、当然じゃのぅ、わしら5人が育てて優勝できませんでしたじゃ情けなくてまたヒキコモリに逆戻りじゃわい」
「そうさね、だが、そんな簡単な話でもないよ。シングル戦で言えば今のテュールだとSSSクラスには良くて引き分け――。当然レーベじゃまず無理だ」
ピクッ。レーベが無表情のまま少し身体を強張らせる。
「ガハハハ、そうだな。今のお前らがタッグ戦で優勝できる可能性はゼロだ。タッグ戦は同種族同士で組むのが普通だが、今のSSSクラスどもも仲が良くてな、恐らく組んでくる。各種族の強さの頂点であるSSSクラス同士が組むんだ、瞬殺だよ、瞬殺。だが、幸い二ヶ月も時間がある。しかも前期休みを挟むしな」
「ホホ、そうじゃな。二ヶ月あれば十分じゃ。身体が出来上がった15歳じゃ、ヘルモードの修行でええじゃろ。ついでじゃ、他のもんも同じように鍛えてやるかの、ホホホ」
チラッと周りをみると、テップとリリスは巻き込まれたことが決定事項だと理解できてしまったのか、既に両手両膝を床につき、うなだれていた。ちなみにリリスはぶつぶつとまだ成長する……、まだ成長するとうわ言のように繰り返していた。そこかよ。
アンフィスとヴァナルはこうなることは予想できていたらしく、まぁこうなるよなと苦笑しながらも受け入れいてる。流石イルデパン島出身というところだ。
ベリトはいつも通りのどこ吹く風でニコニコと静観している。そしてテュールの隣にいるレーベは静かに闘志の炎を目に宿していた。
「……ッフ、いい目だ。我はこの目に――」
「あ、父さん」
いつのまにかヴァナルの父親である神獣王フェンリルが立っており、レーベの瞳を見ながらそんなことを言い始めていた。疑問に思ったヴァナルは父親に問いかける――
「どうしたの? 急に?」
「コホン、いや、なに、こっちの世界の者たちはどうしているのかと――」
と、言い終わる前に時空が割れ、巨大な獣の手が裂け目から生える。
「アーナーター? 話は終わってないわよー?」
裂け目からは女性の声が聞こえ――
「あ、母さん」
ヴァナルがそれに気付き、一言零す。
「「「「「母さん……?」」」」
急展開についていけない皆は呆気にとられながらただただオウムのように言葉を返すだけだ。
「ん? あら、ヴァナルもそこにいるの? 元気かしら? あなたもたまにはこっちに顔出しなさいね? じゃあちょっと私はこのおバカさんと話しがあるからまたね。あ、きちんと歯磨きしなさいよー?」
そう言って、空間の裂け目から飛び出た巨大な手はフェンリルを鷲掴みし、スルスルと吸い込まれていった。この光景を子供が見たらトラウマになるだろうなー、と、そんなことをぼんやり考えるテュールであった。現にリリスがものすごい青ざめてドン引きした表情で固まっている。
「ハッ、コホンッ! さて、では早速今から修行を始める! ついてくるんじゃ!」
モヨモトが放心状態から立ち直り、今の光景をなかったことにして地下ダンジョンへと歩き始める。そして固まったまま動かないリリスを小脇に抱えたテュール以下第一団の面々もそれに続くのであった――。
そう言って、カグヤをはじめとした皇女達に視線を配るルーナ。
「コホン、まぁ、普通は参加できない。が、ロディニア闘技大会――こちらは開催地特典か、大会創設者でありハルモニア校開設者の五輝星の贔屓かは知らないが、毎回1枠だけハルモニア校の代表が出られることになっている。……と言ってもロティニア闘技大会はロディニア大陸中の猛者どもが集まるからな、冒険者で言えば最低でもSクラスレベルだ」
「そして、学校で一枠とあるが、3年に一回しかないこのロディニア闘技大会が一学年の時に当たるのはやや不運だったな。過去に一学年から代表戦を勝ち抜いた者はいない。とは言ってもチャンスは平等だ。うちのクラスにもやる気がありそうなのが何名かいるみたいだしな」
そう言って今の話を聞いて目に力がある生徒を見て微笑むルーナ。
「というわけで、今から前期休みが始まるまでの一ヶ月の間、校内での代表戦が行われる。闘技大会はシングル戦とタッグ戦を交互に行っており、今回はタッグ戦だ。参加希望者は二人一組になり名簿に名前を記載しておけ。期日は一週間後だ。クラスで複数希望者がいた場合、クラス内で戦い、クラス代表を決める。その後各クラスの代表同士が戦い、ハルモニア校代表を決める。以上が連絡事項とその説明だ。では、用紙はここに貼っておく」
そう言ってルーナが教室の掲示板に用紙を貼り、ホームルームを終える。
さて、帰るか。ホームルームが終わるとテュールは立ち上がり、伸びをしながら帰ろうとする――ちょいちょい
「ん?」
服の裾が引っ張られる。そこにはちんまい手があり――
「ししょー、私出たい」
「出たい? ……闘技大会に?」
コクリ
テュールに話しかけているということは、テュールと出たいのだろう。
エントリーするだけなら抵抗はないが、エントリーしただけで終わりという訳にはいかない。出るからには、だ。で、あれば理由を聞いてから決めよう、テュールはそう考える。
「何でだ?」
「夢」
「夢?」
ん、と短く返事し、頷くレーベ。
「おじーさまはシングル戦で何度も出場してその度に優勝した。私はタッグとシングルどっちも優勝しておじーさまを越えたい。そしてタッグに出るならししょーって決めている」
「へぇ、リオンがねぇ、なるほど。……って、決めてるんかい」
「……おじーさまに認めてほしいから。ししょーお願いします」
切羽詰まった表情でたどたどしくも懸命に想いを伝えるレーベが、テュールに向け勢い良く頭を下げる。
「……。レーベの人生にとって必要なことか?」
コクリ。瞳に強い意志を宿し、迷うことなく頷くレーベ。
「……ふぅ、了解だ、たまには師匠らしいこともしなきゃ、だしな。出るからには優勝するからな? つーわけで今からの二ヶ月間で今日の俺と同じレベルくらいにはなってもらわないとな。当然二ヶ月後の俺は今日の俺より強いから追いつかせはしないけどな」
そう言って笑いながらテュールはレーベの頭をポンポンと撫でる。
「ありがとうししょー!」
目が輝き、笑顔を見せるレーベ。それを周りで見ていた第一団の皆が微笑ましく――
「レーベ、頑張ってね。けど私だってテュールくんと出たかったんだからね? 優勝しなきゃ少し怒るんだから」
「うむ、私もだ。テュールとなら出てもいいと思ってただけに少しだけ悔しい。その分修行をキツめに手伝ってやろう」
と思ったが少し膨れた顔のカグヤとレフィーが本気とも冗談ともとれる口調でレーベにそんなことを言う。
「ん、絶対に優勝する」
その言葉を真っ向から受け取るレーベ。
「うむ、応援しているのだー!」
「フフ、私も手伝えることがあれば手伝いますからね」
リリスとセシリアも応援してくれている。
「なら」「ボク達も」「手伝おうじゃないか」
ハードモードの修行になることが予測できているため、他対一など不利な状況で戦ったり、魔法や身体能力を制限された上での組手など行うことは知っているアンフィス、ヴァナル、テップまでもがニヤニヤとテュールをイジメるつもりでいる。
「当然私もテュール様のため粉骨砕身の思いで修行を手伝わせていただきます」
……ねぇ、それ誰が粉骨砕身するの? ベリト? ベリトが精一杯頑張るっていう話だよね? 言葉通り砕く気じゃないよね? 俺にじゃないよね? ねぇ、笑ってないで答えて? ねぇ。
こうして、第一団からはテュールとレーベが出場することとなる。そうと決まればと、レーベが急いでエントリー用紙に名前を書きに走り、焦るあまり名前を間違えて書いてしまってあたふたと直しているのが微笑ましかった。
「さて、それじゃ帰ったら修行、修行、修行だぞ」
「ん」
「よし、んじゃ帰るかー」
こうして10人は歩き出し、校内を降り正門から出る。そこで――
「じゃあ私達は買い物に行ってくるね」
「フフ、疲れを吹き飛ばして、元気いっぱいになるようなお菓子にしますので待ってて下さいね」
カグヤとセシリアの二人が別行動を取る。
……この流れで忘れてくれないかなぁとちょっと期待したのは内緒だ。
そして8人で下校し、男連中は一度自分たちの家に荷物を置いた後、モヨモト邸へと向かう。
リビングにはモヨモト達がいたため、ロディニア闘技大会に出る旨を伝える。
「ほぅ、ロディニア闘技大会か、懐かしいな。俺はシングル戦しか出たことはないが無敗だからなガハハハ!! 個の頂点なんていう大袈裟な二つ名はそん時についたもんだ。んで、おめぇらが出るってんなら当然優勝以外許さねぇからな?」
「ホホ、当然じゃのぅ、わしら5人が育てて優勝できませんでしたじゃ情けなくてまたヒキコモリに逆戻りじゃわい」
「そうさね、だが、そんな簡単な話でもないよ。シングル戦で言えば今のテュールだとSSSクラスには良くて引き分け――。当然レーベじゃまず無理だ」
ピクッ。レーベが無表情のまま少し身体を強張らせる。
「ガハハハ、そうだな。今のお前らがタッグ戦で優勝できる可能性はゼロだ。タッグ戦は同種族同士で組むのが普通だが、今のSSSクラスどもも仲が良くてな、恐らく組んでくる。各種族の強さの頂点であるSSSクラス同士が組むんだ、瞬殺だよ、瞬殺。だが、幸い二ヶ月も時間がある。しかも前期休みを挟むしな」
「ホホ、そうじゃな。二ヶ月あれば十分じゃ。身体が出来上がった15歳じゃ、ヘルモードの修行でええじゃろ。ついでじゃ、他のもんも同じように鍛えてやるかの、ホホホ」
チラッと周りをみると、テップとリリスは巻き込まれたことが決定事項だと理解できてしまったのか、既に両手両膝を床につき、うなだれていた。ちなみにリリスはぶつぶつとまだ成長する……、まだ成長するとうわ言のように繰り返していた。そこかよ。
アンフィスとヴァナルはこうなることは予想できていたらしく、まぁこうなるよなと苦笑しながらも受け入れいてる。流石イルデパン島出身というところだ。
ベリトはいつも通りのどこ吹く風でニコニコと静観している。そしてテュールの隣にいるレーベは静かに闘志の炎を目に宿していた。
「……ッフ、いい目だ。我はこの目に――」
「あ、父さん」
いつのまにかヴァナルの父親である神獣王フェンリルが立っており、レーベの瞳を見ながらそんなことを言い始めていた。疑問に思ったヴァナルは父親に問いかける――
「どうしたの? 急に?」
「コホン、いや、なに、こっちの世界の者たちはどうしているのかと――」
と、言い終わる前に時空が割れ、巨大な獣の手が裂け目から生える。
「アーナーター? 話は終わってないわよー?」
裂け目からは女性の声が聞こえ――
「あ、母さん」
ヴァナルがそれに気付き、一言零す。
「「「「「母さん……?」」」」
急展開についていけない皆は呆気にとられながらただただオウムのように言葉を返すだけだ。
「ん? あら、ヴァナルもそこにいるの? 元気かしら? あなたもたまにはこっちに顔出しなさいね? じゃあちょっと私はこのおバカさんと話しがあるからまたね。あ、きちんと歯磨きしなさいよー?」
そう言って、空間の裂け目から飛び出た巨大な手はフェンリルを鷲掴みし、スルスルと吸い込まれていった。この光景を子供が見たらトラウマになるだろうなー、と、そんなことをぼんやり考えるテュールであった。現にリリスがものすごい青ざめてドン引きした表情で固まっている。
「ハッ、コホンッ! さて、では早速今から修行を始める! ついてくるんじゃ!」
モヨモトが放心状態から立ち直り、今の光景をなかったことにして地下ダンジョンへと歩き始める。そして固まったまま動かないリリスを小脇に抱えたテュール以下第一団の面々もそれに続くのであった――。
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