とある英雄達の最終兵器
第63話 オマケっていうパワーワード
「ただいまなのだー!」
リリスがそわそわしながら玄関の扉を開く。
「おかえりなさい、ってみんな荷物すごいね……」
カグヤがリビングにいたようでパタパタと駆け寄り出迎えてくれる。そして帰ってきた4人の持っている見舞いの品々を見て驚いたようだ。
「カグヤ? レフィーなんだが大丈夫そうか?」
見舞い品を家の中に置くと、まずは一番気になっているレフィーの状態を尋ねるテュール。
「うん、大丈夫そうだよ。先生からは疲れみたいなものって言われたし、戻ってくる時は顔色も良くなってしっかり歩けてたから」
「そうか、良かった……。今は?」
「部屋で休んでるよ。食事は食べられそうだから呼んでって」
「そっか、ありがとう」
ふぅと一息つき、ソファーに腰掛けるテュール。ようやく本当に安心できた、とテュールはついウトウト――
「……くん、……ールくん、テュールくんっ!」
「んぁ? ……。あぁ、寝ちゃって――ん?」
座ったままで寝たから太ももが痺れているな、と下を見てみると、レーベとリリスがテュールの太ももを仲良く一本ずつ分け合い枕にしていた。
「フフ、3人とも疲れていたんだね。気持ちよさそうに寝てたよ。そろそろ夕食だけど……?」
「あぁ、いただくよ。こいつらも起こさなきゃな。おいリリス、レーベ?」
二人に声を掛けながらゆっくりと体を揺らすテュール。
「むにゃ、じゃんじゃんぱふぇー。ガブッ」
痛ぇよ、太もも噛むな。あと涎ベッタベタだな、おい……。
一方のレーベは――
ムクリ
「お、レーベおはよ」
ぱちぱち、パタリ
「くー……、くー……」
まばたきしましたよね? まぁ、仕方ない……。
「すまない、もう少しここで枕やってるから準備任しちゃっていいか?」
「フフ、はいはい」
そう言ってカグヤはキッチンへ戻り、支度を進める。
そして料理も完成し、いい匂いが漂ってくると……
バッ!! バッ!!
「むぉー! ご飯なのだー!」
「お腹空いた」
睡眠欲から食欲へ華麗にシフトチェンジを済ませたレーベとリリスが目を覚ますのであった。
――――――
そして全員が集まったところで夕食となる。カグヤがレフィーを呼びにいき――
「みな、心配かけたな。すまない。色々と助けてくれてありがとう。実は成龍になってから時折めまいや気分不快があったのだが、動けなくなるほどのものは今日が初めてでな。恐らく成龍の状態が不安定なせいだとは思うが、これからは無理をしないでおく。本当にすまない」
「フフ、レフィーさん? そんな気にしないで下さい~。でもちゃんと相談はして下さいね? 私達は一緒の家に住む家族なんですから」
「そうなのだー! えぇと、臭いのだ! ほら、なんとか臭いのだ!」
「みず」
レーベがボソっとツッコむ。
「それだ! 水臭いのだ!」
何かと思ったら……。いきなり臭い呼ばわりされたレフィーがキョトンとしちゃったじゃんか。
「フフ、そうだな。ありがとう。頼らせてもらうよ」
そう言ってリリスの頭を撫でるレフィー。
「だな、だな、だな! ったく、男連中だって隣に住んでいるんだ。家族とは言えなくても親戚だ、親戚! というわけで困ったらじゃんじゃんテュールを頼れ!」
おい、俺だけかい!
「そうですね。テュール様はレフィー様に貸しが既に28つ程貯まっておりますので――」
「あぁ、今日ので一つ返してもらったから差し引いておいてくれ」
レフィーがそう言葉を挟む。
「では、27つ程ですね」
どうやら俺の貸し借りは有能な執事によってきちんと管理されているみたいだ……。
「そうなのか。俺が成龍になった時はあんまりそういうのはなかったな……」
「フフ、アンフィスが成龍になった時は魔力空っぽになるまで暴れ尽くしたからじゃなーい?」
そんなもんか、ま、困ったら俺や親父に言えばいいさ、とアンフィス。
「レフィー? あたしゃ女の大先輩だ。どんなことだっていい、困ったら相談するんだよ? ここではあんたの母親さね」
「え、ババアの間違――モゴモゴッ!!」
モヨモトとツェペシュがリオンが吹き飛ばされる前にその口を塞いでしまう。
「フフ、みんな本当にありがとう」
「レフィー、当然我もお前のことは何よりも大事に思っている。いつでも我はお前の味方であり力になろう。それだけ覚えておいてくれればよい」
ファフニールの言葉を最後にそこからは、みんなで談笑しながら食事を進める。
そして、そんな折にモヨモトの口から――
「あー、そう言えばおんしらが狩っているゾンビじゃが、どんな様子じゃ?」
「ん? どういう様子って、別に変わらないぞ? まぁただ少しずつ数は増えてきているみたいだが」
テュールがそう答える。
「ふむ、増えてきておるか……。厄介じゃのう……」
「アレが何かモヨモトは知っているのか?」
「……うむ、そうじゃの。アレを最後に見たのは70年前じゃがの。当時ワシらはレベル1と呼んでおった」
「「「「レベル1?」」」」
「1って、それじゃ……」
「そうじゃ、ワシらの時はあやつらが増え始めるとレベル2が出始めたの。レベル2は人と獣の中間のような格好をしておっての、4つ足で駆けてきて、その速度はレベル1の比ではない。皮膚は硬く、力も強い。そして大きさも異なる。最も小さいタイプで5m程。ワシらが見た中では20mを越えるのもおったの。まぁおんしらなら油断しなければ遅れをとる相手ではないが、他の冒険者はそうもいかん。出ないことを願うが……」
「そうか……。その、レベル3はいるのか?」
「……おる。が、今の段階ではレベル3はまず現れんじゃろ。まぁワシらの方でも少し探ってみる。おんしらには苦労をかけるが、レベル1の駆除を頼むの」
そこからは少し空気が重くなり、会話少なく食事を終え、各自部屋に戻る。
テュールは先ほどうたた寝をしてしまったせいで眠れそうにない。
(身体でも動かすかぁ)
その方がよく眠れるだろうと考え地下ダンジョンへ潜り、訓練を行う。
数時間程訓練を続けると心地よい疲れを感じる。訓練を終えると温泉へ向かい、汗を流し、湯船に浸かり、極楽、極楽っと。ふぁ〜、眠気が徐々に……っぷ!!
そのまま眠気に身を任せていたかったが、湯船で溺死するわけにもいかないのでいそいそと切り上げて自室へと戻る。
深夜3時、当然既にみんな寝ているため、どちらの屋敷も静かなものだ。さて、俺も寝よう。そう思うと――
トンットンッ
窓がノックされる。
ん? なんだ? とテュールはカーテンを開け、窓をひらく。
心地よい風が部屋に吹き込む。辺りを見渡すと当然起きてるヤツなんか――いた。あれはレフィーの部屋か。
明かりがついているレフィーの部屋の窓がひらき、カーテンが――
「ぶっっっ!! おま、なんちゅう――」
しーっ。人差し指を立て、静かにするよう注意するレフィー。身に着けているのは肌を隠すという大事な役目を忘れてしまったようなキワどいベビードールだけだ。
そして、何かを放り投げると、カーテンをサッと閉め、窓を閉じてしまう。すぐに明かりも消えた。
なんなんだ? と訝しげなテュールも窓を閉め、放り込まれたものを確認する。
――ありがとう、テュール。今のは今日の礼だ。貸し一つにオマケってとこだ。また、何かあったら頼っていいかな? 私のナイト様――
レフィーのからかう顔が目に浮かぶ。
「ったく、からかいやがって……」
そう言って悪態をつくテュールの顔はニヤけていたが、幸いにも誰にも見られずに済んだようだ。
リリスがそわそわしながら玄関の扉を開く。
「おかえりなさい、ってみんな荷物すごいね……」
カグヤがリビングにいたようでパタパタと駆け寄り出迎えてくれる。そして帰ってきた4人の持っている見舞いの品々を見て驚いたようだ。
「カグヤ? レフィーなんだが大丈夫そうか?」
見舞い品を家の中に置くと、まずは一番気になっているレフィーの状態を尋ねるテュール。
「うん、大丈夫そうだよ。先生からは疲れみたいなものって言われたし、戻ってくる時は顔色も良くなってしっかり歩けてたから」
「そうか、良かった……。今は?」
「部屋で休んでるよ。食事は食べられそうだから呼んでって」
「そっか、ありがとう」
ふぅと一息つき、ソファーに腰掛けるテュール。ようやく本当に安心できた、とテュールはついウトウト――
「……くん、……ールくん、テュールくんっ!」
「んぁ? ……。あぁ、寝ちゃって――ん?」
座ったままで寝たから太ももが痺れているな、と下を見てみると、レーベとリリスがテュールの太ももを仲良く一本ずつ分け合い枕にしていた。
「フフ、3人とも疲れていたんだね。気持ちよさそうに寝てたよ。そろそろ夕食だけど……?」
「あぁ、いただくよ。こいつらも起こさなきゃな。おいリリス、レーベ?」
二人に声を掛けながらゆっくりと体を揺らすテュール。
「むにゃ、じゃんじゃんぱふぇー。ガブッ」
痛ぇよ、太もも噛むな。あと涎ベッタベタだな、おい……。
一方のレーベは――
ムクリ
「お、レーベおはよ」
ぱちぱち、パタリ
「くー……、くー……」
まばたきしましたよね? まぁ、仕方ない……。
「すまない、もう少しここで枕やってるから準備任しちゃっていいか?」
「フフ、はいはい」
そう言ってカグヤはキッチンへ戻り、支度を進める。
そして料理も完成し、いい匂いが漂ってくると……
バッ!! バッ!!
「むぉー! ご飯なのだー!」
「お腹空いた」
睡眠欲から食欲へ華麗にシフトチェンジを済ませたレーベとリリスが目を覚ますのであった。
――――――
そして全員が集まったところで夕食となる。カグヤがレフィーを呼びにいき――
「みな、心配かけたな。すまない。色々と助けてくれてありがとう。実は成龍になってから時折めまいや気分不快があったのだが、動けなくなるほどのものは今日が初めてでな。恐らく成龍の状態が不安定なせいだとは思うが、これからは無理をしないでおく。本当にすまない」
「フフ、レフィーさん? そんな気にしないで下さい~。でもちゃんと相談はして下さいね? 私達は一緒の家に住む家族なんですから」
「そうなのだー! えぇと、臭いのだ! ほら、なんとか臭いのだ!」
「みず」
レーベがボソっとツッコむ。
「それだ! 水臭いのだ!」
何かと思ったら……。いきなり臭い呼ばわりされたレフィーがキョトンとしちゃったじゃんか。
「フフ、そうだな。ありがとう。頼らせてもらうよ」
そう言ってリリスの頭を撫でるレフィー。
「だな、だな、だな! ったく、男連中だって隣に住んでいるんだ。家族とは言えなくても親戚だ、親戚! というわけで困ったらじゃんじゃんテュールを頼れ!」
おい、俺だけかい!
「そうですね。テュール様はレフィー様に貸しが既に28つ程貯まっておりますので――」
「あぁ、今日ので一つ返してもらったから差し引いておいてくれ」
レフィーがそう言葉を挟む。
「では、27つ程ですね」
どうやら俺の貸し借りは有能な執事によってきちんと管理されているみたいだ……。
「そうなのか。俺が成龍になった時はあんまりそういうのはなかったな……」
「フフ、アンフィスが成龍になった時は魔力空っぽになるまで暴れ尽くしたからじゃなーい?」
そんなもんか、ま、困ったら俺や親父に言えばいいさ、とアンフィス。
「レフィー? あたしゃ女の大先輩だ。どんなことだっていい、困ったら相談するんだよ? ここではあんたの母親さね」
「え、ババアの間違――モゴモゴッ!!」
モヨモトとツェペシュがリオンが吹き飛ばされる前にその口を塞いでしまう。
「フフ、みんな本当にありがとう」
「レフィー、当然我もお前のことは何よりも大事に思っている。いつでも我はお前の味方であり力になろう。それだけ覚えておいてくれればよい」
ファフニールの言葉を最後にそこからは、みんなで談笑しながら食事を進める。
そして、そんな折にモヨモトの口から――
「あー、そう言えばおんしらが狩っているゾンビじゃが、どんな様子じゃ?」
「ん? どういう様子って、別に変わらないぞ? まぁただ少しずつ数は増えてきているみたいだが」
テュールがそう答える。
「ふむ、増えてきておるか……。厄介じゃのう……」
「アレが何かモヨモトは知っているのか?」
「……うむ、そうじゃの。アレを最後に見たのは70年前じゃがの。当時ワシらはレベル1と呼んでおった」
「「「「レベル1?」」」」
「1って、それじゃ……」
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「そうか……。その、レベル3はいるのか?」
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その方がよく眠れるだろうと考え地下ダンジョンへ潜り、訓練を行う。
数時間程訓練を続けると心地よい疲れを感じる。訓練を終えると温泉へ向かい、汗を流し、湯船に浸かり、極楽、極楽っと。ふぁ〜、眠気が徐々に……っぷ!!
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明かりがついているレフィーの部屋の窓がひらき、カーテンが――
「ぶっっっ!! おま、なんちゅう――」
しーっ。人差し指を立て、静かにするよう注意するレフィー。身に着けているのは肌を隠すという大事な役目を忘れてしまったようなキワどいベビードールだけだ。
そして、何かを放り投げると、カーテンをサッと閉め、窓を閉じてしまう。すぐに明かりも消えた。
なんなんだ? と訝しげなテュールも窓を閉め、放り込まれたものを確認する。
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黒川ルキ
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