とある英雄達の最終兵器
第57話 クンジョン!!
地雷を踏み抜いたテュールが師匠5人と一触即発の雰囲気を作ると、そこに大魔王が現れた。
「もう、お祖父様達大人げないですよ?」
大魔王は女神へクラスチェンジを果たした。いつも大魔王って言ってゴメンナサイ。内心でこっそり謝り、うるうるとした目でカグヤを見つめるテュール。
「フフ、私もテュールさん側にまわりますね」
セシリアがニコニコしながらテュールの傍に来る。こっちは毎度天使だ! ありがとう、ありがとう! ファンファーレを鳴らしながら心の中で叫ぶ。
「そうなのだー! テューくんをいじめるのならリリスが相手になるのだ!」
リリスがファイティングポーズをとる。嬉しい、嬉しいけど、あかん、めっちゃ弱そう。
「ししょーのピンチは、弟子が助ける」
レーベがリリスの隣でファイティングポーズをとる。こっちはわりと強そうだけど、向こうのマッチョ二人とこっちの幼女二人を見比べてしまうと……、いや見た目じゃない。異世界は見た目で強さが決まらないんだ。
「フフ、当然私もテュール側だ。そしてもちろん貸しだぞ?」
レフィーもテュールの傍にくる。うん、きっと貸しってのは照れ隠しなんだろう。今後増え続ける感じだし、いざとなれば踏み倒せばいいさ、そう思ってレフィーの貸しを放置するテュール。この選択を後に後悔することになる――かは、分からないが、きっとテュールは苦労する。それだけは間違いない。
そしてそれを見ていたアンフィス達も――
「おーいいぞー、やれやれー、ベリト俺師匠側に一口な」
「ベリトー、ボクも師匠側に一口ねー」
「あ、俺も師匠側で」
ちゃっかりテップも復活し、賭けに参加する。
「うぅむ、困りましたね。テュール様側に賭ける方がいらっしゃらないので不成立ですね。ちなみに皆様引き分けもありますが……?」
「「「いや、それはない」」」
賭けに参加した3名は口々に既に平和的解決がないと断言した。そしてそれに頷く師匠達5人。おい、マッチョだったり、青白いやつだったりしても話し合いで理解し合えるって言ってたじゃねぇか。理性ある生き物はどこへいった。
「ホホ、どうやら雌雄を決しなければ収まらないところまで来てしまったようじゃのぅ……。師匠の偉大さを今一度その身に思い出させてやるかの、ホホ。では行くかの、地下へ」
そう言うと、モヨモトは歩きはじめ、一つの扉を開く。するとその先は、今までの内装と全く違い、岩肌はむき出しで、荒々しく削られただけの、いかにもダンジョン! という感じの階段が現れる。照明もロウソク型のゆらめくタイプになっている。なんという無駄な凝り方……。
師匠5人が先を歩き、テュールと少女たちもそれに続く。ついでに野次馬であるベリト、アンフィス、ヴァナル、テップもついてくる。つまり全員だ。
段数にして40段程であろうか? 一階分にしてはかなり長く感じる。まぁ散々鍛えたテュールからすれば別に苦でもなんでもない。前世だったら40段昇ったら息切れだろうな……。やがて降りきると、そこは地上建物部分より遥かに広大なスペースとなっており、四方を壁に囲まれている以外は何もない空間となっていた。
「ホホ、さて、地下1階に到着じゃ。ここは敵が出ないから安心して、訓練に打ち込めるんじゃ」
「あぁ、そうかそれはあんし――、って、敵? 何を言ってるんだ?」
テュールがついノリツッコミを入れる。
「ガハハハ、ここは俺達が作った訓練ダンジョン、略してクンジョンだ!!」
いや、すげー語呂悪いからな? つーか、さっきまで怒ってたんじゃないのかよ……。ダンジョン紹介ノリノリだな、おい。
「フフ、地下100階まであるから挑戦してみてね? ちなみにクリアすると豪華プレゼントもあるよ~」
「ったく、本当に男ってのはダンジョン、ダンジョンって、いつまでもガキさね……」
あ、すみません。ちょっとウキウキして攻略したくなっちゃってました……。
「フハハハ、ちなみに壁や天井などは防音、耐震、耐衝撃、耐魔法といたれり尽くせりの仕様だ! いくらでも暴れるがよい」
ファフニールが笑う。なんなら竜化してブレスを打ってみようか! などと言い出しそうな勢いだ。
「ホホ、さて、折角のパーティだ。料理を美味しく食べるためにも、ちと運動――みなで軽く闘り合おうかの?」
モヨモトが闘気を全方位に撒き散らす。分かりやすい挑発だ。
「おー!! やるのだー!!」
リリスが燃える。
「望むところ」
レーベも燃える。
「俺はちょっと、お腹が……、その痛いかな? なんて、ハハ、ハハ――。熱っ!? わかりましたっ! わかりましたっ! 参加します! 参加します! 不肖このテップも参加させて下さい!!」
テップも燃えていた。というか燃やされていた、ルチアに。ルチア初対面の他所様の子に容赦ねぇな……。
「ふぅ、やれやれこうなってしまっては仕方ありませんね。身に降る火の粉は払わせてもらいますよ」
クク、と笑う執事。安心しろ、俺らどころか師匠達も含めてお前には手ぇ出さねぇから……。
「ガハハハ、さぁて、心の準備はいいか? なーんて俺が聞くと思ったら大間違いだ!! おら、テュールまずはてめぇだ!! さっきの無礼な態度を反省させてやるよ!!」
こうして闘いのゴングはリオンの拳とそれに合わせたテュールの拳によって鳴らされる。
「あいにくと黙って殴られるような教育は受けてきていないんで、ねっ!!」
リオンとテュールが口角を釣り上げながら殴り合う。そこにモヨモトが魔力刀で切り込み、ルチアとツェペシュがそれら丸ごと吹っ飛ばす魔法を放つ。レフィーが、貸しだからな? と竜化しブレスで魔法を相殺する。それをファフニールまで竜化し、ブレスで押し切ろうとする。
そんなファフニールに笑いながら飛び蹴りをかますアンフィス。ヴァナルはさりげなくモヨモトの刀を受け止めてくれていた。カグヤがモヨモトを背後から突き――って、それ刺したら死んじゃわない? レーベはリオンを殴り、セシリアは全方位に無差別に魔法を撒き散らし、リリスは20m級の魔法陣を暴走させ、あわやのところで師匠達に気絶させられた。
それからも魔法が飛び交い、拳が飛び交い、テップが飛び交う、そんなハチャメチャな闘いが繰り広げられ――
「あれ? 私もしかして仲間はずれです?」
と、ベリトがそう気付く頃には、年齢考えずにはしゃぎすぎた、若いもんと違って無茶はできねぇな、としんどそうな顔で地べたに座る師匠達と、同じく、もう無理……、動けない、と、地べたに転がされている若者たちの姿があった。
それを一通り見回すとやれやれと言った様子でベリトが口を開く。
「フフ、では、私はパーティの準備をしましょうかね」
こうして、無傷の執事は鼻歌混じりに階上へと一人上がり、パーティの準備を全て行うのであった。執事マジ有能……。
「もう、お祖父様達大人げないですよ?」
大魔王は女神へクラスチェンジを果たした。いつも大魔王って言ってゴメンナサイ。内心でこっそり謝り、うるうるとした目でカグヤを見つめるテュール。
「フフ、私もテュールさん側にまわりますね」
セシリアがニコニコしながらテュールの傍に来る。こっちは毎度天使だ! ありがとう、ありがとう! ファンファーレを鳴らしながら心の中で叫ぶ。
「そうなのだー! テューくんをいじめるのならリリスが相手になるのだ!」
リリスがファイティングポーズをとる。嬉しい、嬉しいけど、あかん、めっちゃ弱そう。
「ししょーのピンチは、弟子が助ける」
レーベがリリスの隣でファイティングポーズをとる。こっちはわりと強そうだけど、向こうのマッチョ二人とこっちの幼女二人を見比べてしまうと……、いや見た目じゃない。異世界は見た目で強さが決まらないんだ。
「フフ、当然私もテュール側だ。そしてもちろん貸しだぞ?」
レフィーもテュールの傍にくる。うん、きっと貸しってのは照れ隠しなんだろう。今後増え続ける感じだし、いざとなれば踏み倒せばいいさ、そう思ってレフィーの貸しを放置するテュール。この選択を後に後悔することになる――かは、分からないが、きっとテュールは苦労する。それだけは間違いない。
そしてそれを見ていたアンフィス達も――
「おーいいぞー、やれやれー、ベリト俺師匠側に一口な」
「ベリトー、ボクも師匠側に一口ねー」
「あ、俺も師匠側で」
ちゃっかりテップも復活し、賭けに参加する。
「うぅむ、困りましたね。テュール様側に賭ける方がいらっしゃらないので不成立ですね。ちなみに皆様引き分けもありますが……?」
「「「いや、それはない」」」
賭けに参加した3名は口々に既に平和的解決がないと断言した。そしてそれに頷く師匠達5人。おい、マッチョだったり、青白いやつだったりしても話し合いで理解し合えるって言ってたじゃねぇか。理性ある生き物はどこへいった。
「ホホ、どうやら雌雄を決しなければ収まらないところまで来てしまったようじゃのぅ……。師匠の偉大さを今一度その身に思い出させてやるかの、ホホ。では行くかの、地下へ」
そう言うと、モヨモトは歩きはじめ、一つの扉を開く。するとその先は、今までの内装と全く違い、岩肌はむき出しで、荒々しく削られただけの、いかにもダンジョン! という感じの階段が現れる。照明もロウソク型のゆらめくタイプになっている。なんという無駄な凝り方……。
師匠5人が先を歩き、テュールと少女たちもそれに続く。ついでに野次馬であるベリト、アンフィス、ヴァナル、テップもついてくる。つまり全員だ。
段数にして40段程であろうか? 一階分にしてはかなり長く感じる。まぁ散々鍛えたテュールからすれば別に苦でもなんでもない。前世だったら40段昇ったら息切れだろうな……。やがて降りきると、そこは地上建物部分より遥かに広大なスペースとなっており、四方を壁に囲まれている以外は何もない空間となっていた。
「ホホ、さて、地下1階に到着じゃ。ここは敵が出ないから安心して、訓練に打ち込めるんじゃ」
「あぁ、そうかそれはあんし――、って、敵? 何を言ってるんだ?」
テュールがついノリツッコミを入れる。
「ガハハハ、ここは俺達が作った訓練ダンジョン、略してクンジョンだ!!」
いや、すげー語呂悪いからな? つーか、さっきまで怒ってたんじゃないのかよ……。ダンジョン紹介ノリノリだな、おい。
「フフ、地下100階まであるから挑戦してみてね? ちなみにクリアすると豪華プレゼントもあるよ~」
「ったく、本当に男ってのはダンジョン、ダンジョンって、いつまでもガキさね……」
あ、すみません。ちょっとウキウキして攻略したくなっちゃってました……。
「フハハハ、ちなみに壁や天井などは防音、耐震、耐衝撃、耐魔法といたれり尽くせりの仕様だ! いくらでも暴れるがよい」
ファフニールが笑う。なんなら竜化してブレスを打ってみようか! などと言い出しそうな勢いだ。
「ホホ、さて、折角のパーティだ。料理を美味しく食べるためにも、ちと運動――みなで軽く闘り合おうかの?」
モヨモトが闘気を全方位に撒き散らす。分かりやすい挑発だ。
「おー!! やるのだー!!」
リリスが燃える。
「望むところ」
レーベも燃える。
「俺はちょっと、お腹が……、その痛いかな? なんて、ハハ、ハハ――。熱っ!? わかりましたっ! わかりましたっ! 参加します! 参加します! 不肖このテップも参加させて下さい!!」
テップも燃えていた。というか燃やされていた、ルチアに。ルチア初対面の他所様の子に容赦ねぇな……。
「ふぅ、やれやれこうなってしまっては仕方ありませんね。身に降る火の粉は払わせてもらいますよ」
クク、と笑う執事。安心しろ、俺らどころか師匠達も含めてお前には手ぇ出さねぇから……。
「ガハハハ、さぁて、心の準備はいいか? なーんて俺が聞くと思ったら大間違いだ!! おら、テュールまずはてめぇだ!! さっきの無礼な態度を反省させてやるよ!!」
こうして闘いのゴングはリオンの拳とそれに合わせたテュールの拳によって鳴らされる。
「あいにくと黙って殴られるような教育は受けてきていないんで、ねっ!!」
リオンとテュールが口角を釣り上げながら殴り合う。そこにモヨモトが魔力刀で切り込み、ルチアとツェペシュがそれら丸ごと吹っ飛ばす魔法を放つ。レフィーが、貸しだからな? と竜化しブレスで魔法を相殺する。それをファフニールまで竜化し、ブレスで押し切ろうとする。
そんなファフニールに笑いながら飛び蹴りをかますアンフィス。ヴァナルはさりげなくモヨモトの刀を受け止めてくれていた。カグヤがモヨモトを背後から突き――って、それ刺したら死んじゃわない? レーベはリオンを殴り、セシリアは全方位に無差別に魔法を撒き散らし、リリスは20m級の魔法陣を暴走させ、あわやのところで師匠達に気絶させられた。
それからも魔法が飛び交い、拳が飛び交い、テップが飛び交う、そんなハチャメチャな闘いが繰り広げられ――
「あれ? 私もしかして仲間はずれです?」
と、ベリトがそう気付く頃には、年齢考えずにはしゃぎすぎた、若いもんと違って無茶はできねぇな、としんどそうな顔で地べたに座る師匠達と、同じく、もう無理……、動けない、と、地べたに転がされている若者たちの姿があった。
それを一通り見回すとやれやれと言った様子でベリトが口を開く。
「フフ、では、私はパーティの準備をしましょうかね」
こうして、無傷の執事は鼻歌混じりに階上へと一人上がり、パーティの準備を全て行うのであった。執事マジ有能……。
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