とある英雄達の最終兵器
第05話 巣など減るもんではない、いえ減ります。
そして更に五年の月日が流れテュールは十歳となる。
テュールは体つきも徐々にしっかりしてきており、当然師匠たちの修行はますます厳しさを増す。
さて、それによってこの五年でどう変わったか──。
まず、九歳の時にモヨモトを斬り合いにて一歩動かすことを達成。それからはモヨモトも攻撃してくるようになり、ようやく斬り合いとなる。ちなみに一撃を入れることは叶えられていない。
リオンとは殴り合いをできるようになった。と言ってもリオンが身体機能を1/100まで制限してだが。そしてクリーンヒットを入れられれば1/75、1/50、1/25、1/10、1/5……と上がっていくとのこと。先は長い。
魔法の方は、両手でのニ重詠唱ができるようになった。そして現在は片手でのニ重詠唱を練習中。右手左手それぞれにニ重詠唱を行い両手で合わせると三重詠唱となるのだが、この三重詠唱は難易度が高く、一m級の魔法陣を重ねるのはできるが、ニm級を重ねていくことは未だできてない。更に片手ずつに三重詠唱し、それを両手で合わせると四重詠唱となる。……こちらも先は長い。
そして、ルチアは魔法の知識について色々と教えてくれた。効率的な魔素の動かし方、魔法陣の意味、書き方。そして実践での修行──ルチアとの戦闘はとにかく一方的だ。魔法の構築スピードがテュールとは違いすぎる。ダブルキャストやトリプル、カルテットの要領で下級魔法を少しずつずらして描き、絶え間なく魔法を降り注がせる。ルチアの攻撃が始まってしまえば何も出来ない。攻略できる日は来るのだろうか? 先は長い。長い長い。
さて、そんな訓練を続けているテュールだが最近になって少し同年代の友達が欲しくなってきた。もちろんこの屋敷に住む四人は優しく、楽しく、大好きな家族なのだが、やはり一緒の目線の友達が欲しくなるものだ。というわけで──。
「この島に、その、俺と同じくらいの歳の子というのはいるの……?」
前世と合わせ数十年生きるテュールにとって、友達欲しいはちょっと恥ずかしいので遠回しに探りをいれてみる。
「ホホホ、そうじゃのそうじゃの。同じ歳か……、友達の一人も欲しいよのう。あい分かった! ちょうどいいのがいるのぅ!」
「そうだな、ガハハハ!! そろそろ友達を貰いにいくのにも程よい強さだな!! よし、出発するか!!」
そして、困らせると思った提案は意外にも前向きに検討される。と言うより即実行に移される。
「んー、じゃあボクは家で待ってるねー」
「あたしも家で待ってるよ。ちゃんとテュールを連れて帰ってくるんだよ?」
「ホホホ、ではテュール、あの山の山頂を目指すぞ。ちょうどおまいさんくらいの歳の子がいる」
モヨモトはこの島の中央にそびえる大きな火山を指差しそう告げる。
「普通に行ってもつまらねぇなー。うっし、競争な? 重力一倍で身体強化魔法ありだ。俺達は四十秒後に出発する。そしてテュール、お前を見つけ次第攻撃するぞー。ガハハハ!! よーい、どんっ! いーちっ!! にーっ!!」
急な展開に目を白黒させていたテュールだが、今ここで──。
(考えている暇はない! リオンはやると言ったらやる! そしてモヨモトもホホホとか言いながらノリノリで乗っかってくる! まずは重力魔法解除、かーらーの身体強化魔法をダブルキャストでかけて、と。急げっ!!)
「さーんっ!!」
この間一秒弱で頭を切り替え、テュールは風となる。目標物である山は見えているのだ。最短とはつまり一直線──目の前に広がる森林の木の上を駆ける。
(飛行魔法? そんなちんたらした魔法は使わないね)
テュールは大気を蹴る。ただひたすらに強化した五体を使い、空を駆けていく。
「ホホホー、山頂までの距離は十km程かのう。今のテュールなら一分程でついてしまうのぅ。差し引き二十秒というところかの……。あくびが出てしまうのぅ、ホホホホ」
「よーんじゅー!!」
ズバンッ!!
地面がえぐれ、煙が立ち昇る。モヨモトとリオンは大人げなく全力でテュールを追うのであった。
(おい! 分かってたけど、師匠たち全力じゃねぇか……! 後ろからすごいプレッシャー感じるんですけど!!)
山の麓までたどり着いた時に、背後から強烈な存在感が物凄い速さで近づいてくるのが分かる。そして八合目にたどり着いた時──遂に追いつかれる。
「ぬぉらッッ!!」
テュールから離れること百m──空中でリオンが拳を振るう。その風圧だけでテュールは吹き飛ばされる。そして吹き飛んだ先には──。
「ホホホホ、ほいっ、ほいっと」
モヨモトが待ち構えており、木剣を振るう。かろうじてその木剣を躱すも──。
「モヨモトの剣をよく躱したな、褒美だ、受け取れぃぃい!!」
一瞬で距離を詰めてきたリオンの巨大な拳に胸の真ん中を貫かれる。
ノーガードでリオンの拳を受けたテュールは錐揉み状に回転しながら山の山頂付近へ突き刺さる。遠目からでも分かる程のクレーターができていた。
「ガハハハ!! やりすぎたか!!」
「ホホホー。まぁテュールだから大丈夫じゃろい」
人の生身でクレーターを作るという惨事を起こしておきながら、どこまでも呑気なニ人であった。だが、呑気ではない者もいた──。
「誰じゃーーー!! 我の巣に穴を空けようとする大莫迦者はーー!!」
姿は見えずとも山頂付近からとてつもない怒声を発する者。しかし、これに対しても師匠陣は──。
「ガハハハ!! 俺だー!!」
「ホホホー。わしじゃー!」
やはり呑気であり、テュールはと言えば──。
「お、俺ではないッス……」
最後にそう言い残し、かろうじて繋ぎ止めていた意識を手放したのであった。
「あ、気絶してしもうたわ」
「ガハハハ、おいファフニール邪魔するぞー」
「あ、コラ勝手に、おい!」
「ホホ、まぁええじゃろ? 巣など減るもんでもなし、邪魔するぞい」
こうしてモヨモトとリオンは気絶したテュールを抱えて声の主がいるであろう山頂へと向かう。
「それで? 我の巣になんのようだ?」
そこで待ち構えていたのは黒い鱗を持つ巨大な飛竜。ギロリと来訪者を睨むと腹の底に響くような声で凄む。
「あー、それな。お前んとこに子供いたろ? ちっこいの。そろそろデカくなったろ?」
「アンフィスか、まぁようやく人化の術も覚えて喋れるようにもなったし、狩りもできるようになったな。それで、アンフィスに何か用か? ……いや、そもそもその坊主は何だ?」
「ホホ、訳あって預かっている子じゃよ。と言ってもわしらは家族だと思っているがのぅ。そしてこの子、テュールというのじゃが、テュールが友達が欲しいと言ってきてのぅ。おぉー、そう言えばファフニールのとこの子もちょうど同じ歳くらいじゃと思いだしたところなんじゃよ」
凄む飛竜に対し、ナイスアイデアじゃろ? と言わんばかりに明るく言葉を返すモヨモト。
そこでファフニールと呼ばれた飛竜は少し黙った後、体を発光させる。光が晴れた後現れたのは人──と言っても身長・体格はリオンと同じ程度なのでモヨモトと比べれば同じ人とは思えない。
「ふむ、話は分かった。いいだろう。アンフィスにも様々な種族と交流を持って欲しいし、ましてや同年代の友人というのは大切だ。アンフィスー! アンフィスー! 来なさい!」
「……父さん、呼んだ?」
そしてファフニールが巣の奥へと声を投げるとテュールと同じ黒い髪をした目つきの鋭い少年が現れるのであった。
テュールは体つきも徐々にしっかりしてきており、当然師匠たちの修行はますます厳しさを増す。
さて、それによってこの五年でどう変わったか──。
まず、九歳の時にモヨモトを斬り合いにて一歩動かすことを達成。それからはモヨモトも攻撃してくるようになり、ようやく斬り合いとなる。ちなみに一撃を入れることは叶えられていない。
リオンとは殴り合いをできるようになった。と言ってもリオンが身体機能を1/100まで制限してだが。そしてクリーンヒットを入れられれば1/75、1/50、1/25、1/10、1/5……と上がっていくとのこと。先は長い。
魔法の方は、両手でのニ重詠唱ができるようになった。そして現在は片手でのニ重詠唱を練習中。右手左手それぞれにニ重詠唱を行い両手で合わせると三重詠唱となるのだが、この三重詠唱は難易度が高く、一m級の魔法陣を重ねるのはできるが、ニm級を重ねていくことは未だできてない。更に片手ずつに三重詠唱し、それを両手で合わせると四重詠唱となる。……こちらも先は長い。
そして、ルチアは魔法の知識について色々と教えてくれた。効率的な魔素の動かし方、魔法陣の意味、書き方。そして実践での修行──ルチアとの戦闘はとにかく一方的だ。魔法の構築スピードがテュールとは違いすぎる。ダブルキャストやトリプル、カルテットの要領で下級魔法を少しずつずらして描き、絶え間なく魔法を降り注がせる。ルチアの攻撃が始まってしまえば何も出来ない。攻略できる日は来るのだろうか? 先は長い。長い長い。
さて、そんな訓練を続けているテュールだが最近になって少し同年代の友達が欲しくなってきた。もちろんこの屋敷に住む四人は優しく、楽しく、大好きな家族なのだが、やはり一緒の目線の友達が欲しくなるものだ。というわけで──。
「この島に、その、俺と同じくらいの歳の子というのはいるの……?」
前世と合わせ数十年生きるテュールにとって、友達欲しいはちょっと恥ずかしいので遠回しに探りをいれてみる。
「ホホホ、そうじゃのそうじゃの。同じ歳か……、友達の一人も欲しいよのう。あい分かった! ちょうどいいのがいるのぅ!」
「そうだな、ガハハハ!! そろそろ友達を貰いにいくのにも程よい強さだな!! よし、出発するか!!」
そして、困らせると思った提案は意外にも前向きに検討される。と言うより即実行に移される。
「んー、じゃあボクは家で待ってるねー」
「あたしも家で待ってるよ。ちゃんとテュールを連れて帰ってくるんだよ?」
「ホホホ、ではテュール、あの山の山頂を目指すぞ。ちょうどおまいさんくらいの歳の子がいる」
モヨモトはこの島の中央にそびえる大きな火山を指差しそう告げる。
「普通に行ってもつまらねぇなー。うっし、競争な? 重力一倍で身体強化魔法ありだ。俺達は四十秒後に出発する。そしてテュール、お前を見つけ次第攻撃するぞー。ガハハハ!! よーい、どんっ! いーちっ!! にーっ!!」
急な展開に目を白黒させていたテュールだが、今ここで──。
(考えている暇はない! リオンはやると言ったらやる! そしてモヨモトもホホホとか言いながらノリノリで乗っかってくる! まずは重力魔法解除、かーらーの身体強化魔法をダブルキャストでかけて、と。急げっ!!)
「さーんっ!!」
この間一秒弱で頭を切り替え、テュールは風となる。目標物である山は見えているのだ。最短とはつまり一直線──目の前に広がる森林の木の上を駆ける。
(飛行魔法? そんなちんたらした魔法は使わないね)
テュールは大気を蹴る。ただひたすらに強化した五体を使い、空を駆けていく。
「ホホホー、山頂までの距離は十km程かのう。今のテュールなら一分程でついてしまうのぅ。差し引き二十秒というところかの……。あくびが出てしまうのぅ、ホホホホ」
「よーんじゅー!!」
ズバンッ!!
地面がえぐれ、煙が立ち昇る。モヨモトとリオンは大人げなく全力でテュールを追うのであった。
(おい! 分かってたけど、師匠たち全力じゃねぇか……! 後ろからすごいプレッシャー感じるんですけど!!)
山の麓までたどり着いた時に、背後から強烈な存在感が物凄い速さで近づいてくるのが分かる。そして八合目にたどり着いた時──遂に追いつかれる。
「ぬぉらッッ!!」
テュールから離れること百m──空中でリオンが拳を振るう。その風圧だけでテュールは吹き飛ばされる。そして吹き飛んだ先には──。
「ホホホホ、ほいっ、ほいっと」
モヨモトが待ち構えており、木剣を振るう。かろうじてその木剣を躱すも──。
「モヨモトの剣をよく躱したな、褒美だ、受け取れぃぃい!!」
一瞬で距離を詰めてきたリオンの巨大な拳に胸の真ん中を貫かれる。
ノーガードでリオンの拳を受けたテュールは錐揉み状に回転しながら山の山頂付近へ突き刺さる。遠目からでも分かる程のクレーターができていた。
「ガハハハ!! やりすぎたか!!」
「ホホホー。まぁテュールだから大丈夫じゃろい」
人の生身でクレーターを作るという惨事を起こしておきながら、どこまでも呑気なニ人であった。だが、呑気ではない者もいた──。
「誰じゃーーー!! 我の巣に穴を空けようとする大莫迦者はーー!!」
姿は見えずとも山頂付近からとてつもない怒声を発する者。しかし、これに対しても師匠陣は──。
「ガハハハ!! 俺だー!!」
「ホホホー。わしじゃー!」
やはり呑気であり、テュールはと言えば──。
「お、俺ではないッス……」
最後にそう言い残し、かろうじて繋ぎ止めていた意識を手放したのであった。
「あ、気絶してしもうたわ」
「ガハハハ、おいファフニール邪魔するぞー」
「あ、コラ勝手に、おい!」
「ホホ、まぁええじゃろ? 巣など減るもんでもなし、邪魔するぞい」
こうしてモヨモトとリオンは気絶したテュールを抱えて声の主がいるであろう山頂へと向かう。
「それで? 我の巣になんのようだ?」
そこで待ち構えていたのは黒い鱗を持つ巨大な飛竜。ギロリと来訪者を睨むと腹の底に響くような声で凄む。
「あー、それな。お前んとこに子供いたろ? ちっこいの。そろそろデカくなったろ?」
「アンフィスか、まぁようやく人化の術も覚えて喋れるようにもなったし、狩りもできるようになったな。それで、アンフィスに何か用か? ……いや、そもそもその坊主は何だ?」
「ホホ、訳あって預かっている子じゃよ。と言ってもわしらは家族だと思っているがのぅ。そしてこの子、テュールというのじゃが、テュールが友達が欲しいと言ってきてのぅ。おぉー、そう言えばファフニールのとこの子もちょうど同じ歳くらいじゃと思いだしたところなんじゃよ」
凄む飛竜に対し、ナイスアイデアじゃろ? と言わんばかりに明るく言葉を返すモヨモト。
そこでファフニールと呼ばれた飛竜は少し黙った後、体を発光させる。光が晴れた後現れたのは人──と言っても身長・体格はリオンと同じ程度なのでモヨモトと比べれば同じ人とは思えない。
「ふむ、話は分かった。いいだろう。アンフィスにも様々な種族と交流を持って欲しいし、ましてや同年代の友人というのは大切だ。アンフィスー! アンフィスー! 来なさい!」
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