とある英雄達の最終兵器
第06話 少し遊んでみよう☆
「ほれ、テュール起きるんじゃ」
未だリオンに担がれて気絶しているテュールだが、気絶していたのでは話が進まない。ということでモヨモトが少々強引に起こす。
「ったぁぁ!! ハッ!?」
そして、痛みに目を覚ましたテュールはすぐさまリオンの背中から飛び降り、臨戦態勢を取る。よく訓練されたその動きにモヨモトとリオンはとても嬉しそうにウンウンと頷いている。
「フハハハ、面白い坊主だ。アンフィス? お前と友になりたいというものが現れた」
先程までの凄みはどこへ行ったのか、快活に笑いテュールを紹介するファフニール。
「テュールです。よろしくお願いします」
「ふーん、俺はアンフィス! よろしくな!」
元日本人でおっさんだったテュールは、初対面の子供にも丁寧に挨拶をしてしまう。対してアンフィスは実に年相応の元気で可愛げのある挨拶であった。
「ホホ、元気そうなお子よのぅ。うちのテュールと遊んでくれると嬉しいのぅ」
「ガハハハ!! 流石純龍の子だ!! 中々に強いようだな。うちのテュールと良い勝負をしそうだな──」
リオンがわざとニヤけながら二人を交互に見比べる。その言葉にアンフィスの目がやや細くなる。
「……テュールは強いのか?」
「んんー、そうだね。十歳にしてはまぁまぁだと思うよ? まぁ他の子供と比べたことはないから分からないけど」
そして、テュールもちょっとだけ大人げなく挑発してみる。
「父さん……」
「ふむ、全く仕方ないな……。良いだろう。少し遊んでくるんだ。……いや、大いに遊んできていいか」
「ホホ、テュールも楽しんでくるとよい」
「ガハハハ、若さってやつぁいいな!! あ、あと負けたら分かってんな?」
そして、やはりこういう展開が三度の飯より好きな大人連中は止めるどころか煽ってくる。
こうしてテュールとアンフィスは手合わせをすることになり、山を降りて平原に立つ。お互い十m程離れ、向き合う。そこから少し離れたところでワクワクしながら観戦する大人三人。
「審判などいらんじゃろ。気絶するか降参するかしたら負けじゃ。好きなように遊びなさい、ホホホ。んじゃはじめぃ」
気の抜ける開始の合図とともに両者とも真っ向からぶつかる。挨拶代わりにお互いの拳をぶつけ合う。と、言っても拳をぶつけた地点から円状に衝撃波が生まれるくらいには激しい挨拶だが。
そこからは目まぐるしい攻防が続く。身体機能で言えばアンフィスに分があるだろう。子供で人化しているとは言え最強の種族竜種。繰り出される拳や蹴りは暴風と化している。
対するテュールは丁寧に攻撃を捌き、時折重力で部分的に重くした拳を牽制に入れる。ジャブのようだが重力魔法で重さが増し、石など簡単に砕く握力から繰り出される拳は無視できるものではない。
「器用なやつだ──なっ!」
「どうっ──も!」
アンフィスの強烈な回し蹴りを食らいながらも自ら後ろに飛び、威力を殺して距離を取るテュール。そして吹き飛んでいくテュールの両手にはそれぞれ一m程の魔法陣が。
「ほぅ、あの歳で一m級の二重詠唱を使うか……。まして、蹴られながらのこのタイミングでこの構築速度……。鍛えあげているな」
「ホホホ、当然じゃ。わしら四人の訓練に泣き言も言わずついてきているのだからのぅ」
「ガハハハ、死にかけたことも一度や二度ではないからな! 精神的にもタフだぞ! ま、殺しかけるのはいつも俺だがな! ガハハハ!!」
テュールは色々言いたいことはあったが、外野の声は聞き流し、目の前の戦闘に集中をする。
「右手に風、左手に氷。吹き荒れろ暴風雪!!」
テュールの両手にあった魔法陣は、重なりニmの魔法陣となり、発光。そしてアンフィスを強烈な冷気を帯びた竜巻が襲う。
「ぐっ……!!」
アンフィスは竜巻から逃れようとするが、少年の軽い体では当然抗うことはできず、身動きの取れないまま螺旋状に上空へ運ばれていく。
(やったか──!?)
テュールは盛大にやっていないフラグを建てながら上空を見つめる。そこには百m以上打ち上げられ、竜巻から放り出されたアンフィスがいる。着ている服はボロボロになり、その暴風と氷によって幾重もの赤い線が体に刻まれている。
そして、打ち上がる速度がゼロになり、自由落下を──。
ニヤッ。
オマエツヨイナ。
はじめた時──そう口を動かした。そしてその直後、空中には体長七m程の黒い鱗を持った飛竜が翼をはためかせていた。
(うげっ、竜化!? そんなんありか!?)
テュールはバッと振り返り、大人三人を見る。師匠二人は目を輝かせてサムズアップしている。ファフニールは目を逸らし口笛を吹いていた。
(続行ですね……わかります)
一応様子は窺ったものの、当然これしきのことで手合わせが中止になるとは思っていないテュールは両手で頬を叩き、気合を入れ直す。
「っしゃ!! ドラゴンがなんぼのもんじゃいっ!! かかってこいやぁ!!」
そんなヤケになって叫んたテュールにアンフィスは堂々と応える。
「グルアァァッッ!!」
そして、その口の先には五m程の魔法陣が現れる。
(うっそーん……。ブレス放つ雰囲気だけどブレスって幻想級レベルなの?)
テュールは今度はちょっとばかし本気で止めてくれるのを期待し、大人三人を見る。三人はどこからか持ってきたちゃぶ台の上で茶をしばき談笑している。
「じょ、上等だ!! 竜種のブレス、防ぎきれるかやってやろうじゃねぇか! 右手に障壁ッ、左手に重力ッ、重力場の盾!!」
テュールの両手にはそれぞれニ枚の一m級魔法陣が光り、それが重なりニmの魔法陣が両手に生まれる。そして更にそれを重ね、四mの魔法陣を作り出すとアンフィスのブレスに備える。
「ほぅ、本当に驚かされる。一m級の三重詠唱まで使えるとは。末恐ろしいな……」
「ホホ、そうじゃろ、そうじゃろ。もっと褒めるんじゃ」
「ガハハハ、すげーだろ? な? うちのすげーだろ?」
(観客サイド楽しそうですねっ!)
そして、百m程離れているだろうか、アンフィスの魔法陣が一瞬強く輝くと、視認できない速度で黒い光の奔流が到達する。
ベゴンッッ──!!
「んがっ……!! おもっっ!! キツっっ!! ムリムリムリムリ!! む、むーりーだけどぉぉぉむりじゃぬわぁぁぁいい!!」
質量を持った光を受け止めた瞬間、テュールの足元にすり鉢状のクレーターができる。
「こ──こなくそぉぉッッ!!」
テュールの両手は赤熱し、グラビトンシールドの周りの地面は高熱で溶け始めている。そして永遠にも感じる時間、あるいは一瞬と錯覚するような攻防の末、遂にブレスが止まる。
「はぁはぁ……、耐えきっ──」
土煙が晴れ、テュールの視界が開かれた先に見えたものは黒い何かであった。
ズバンッ──。
アンフィスの尻尾がテュールの胴を強かに打ち、テュールは凄まじい速度で吹き飛ばされ、そこで意識が途絶えた。
パシッ。
「うーし、ここまでだ。中々面白かったぞ! ただし、テュールおめぇ負けたから帰ったらちと訓練を厳しくするぞー。ガハハハ!!」
吹き飛んでいくテュールをリオンがキャッチし、聞こえるか聞こえないかはさておき、そう宣言する。恐らく聞こえていない方が幸せであろう。
「アンフィスもよくやった。ただし、竜化でのブレスはやりすぎだな。まぁだがコヤツならお前の良き友人となってくれるだろう。今後も仲良くやりなさい」
それを聞くとアンフィスは、人化し、頷く──と、同時に意識を失い、地面へと倒れ込む。
「ホホホ、仲良きことは美しき哉、重畳重畳、ホホホ」
こうして、強烈な出会いを果たすニ人であった。
未だリオンに担がれて気絶しているテュールだが、気絶していたのでは話が進まない。ということでモヨモトが少々強引に起こす。
「ったぁぁ!! ハッ!?」
そして、痛みに目を覚ましたテュールはすぐさまリオンの背中から飛び降り、臨戦態勢を取る。よく訓練されたその動きにモヨモトとリオンはとても嬉しそうにウンウンと頷いている。
「フハハハ、面白い坊主だ。アンフィス? お前と友になりたいというものが現れた」
先程までの凄みはどこへ行ったのか、快活に笑いテュールを紹介するファフニール。
「テュールです。よろしくお願いします」
「ふーん、俺はアンフィス! よろしくな!」
元日本人でおっさんだったテュールは、初対面の子供にも丁寧に挨拶をしてしまう。対してアンフィスは実に年相応の元気で可愛げのある挨拶であった。
「ホホ、元気そうなお子よのぅ。うちのテュールと遊んでくれると嬉しいのぅ」
「ガハハハ!! 流石純龍の子だ!! 中々に強いようだな。うちのテュールと良い勝負をしそうだな──」
リオンがわざとニヤけながら二人を交互に見比べる。その言葉にアンフィスの目がやや細くなる。
「……テュールは強いのか?」
「んんー、そうだね。十歳にしてはまぁまぁだと思うよ? まぁ他の子供と比べたことはないから分からないけど」
そして、テュールもちょっとだけ大人げなく挑発してみる。
「父さん……」
「ふむ、全く仕方ないな……。良いだろう。少し遊んでくるんだ。……いや、大いに遊んできていいか」
「ホホ、テュールも楽しんでくるとよい」
「ガハハハ、若さってやつぁいいな!! あ、あと負けたら分かってんな?」
そして、やはりこういう展開が三度の飯より好きな大人連中は止めるどころか煽ってくる。
こうしてテュールとアンフィスは手合わせをすることになり、山を降りて平原に立つ。お互い十m程離れ、向き合う。そこから少し離れたところでワクワクしながら観戦する大人三人。
「審判などいらんじゃろ。気絶するか降参するかしたら負けじゃ。好きなように遊びなさい、ホホホ。んじゃはじめぃ」
気の抜ける開始の合図とともに両者とも真っ向からぶつかる。挨拶代わりにお互いの拳をぶつけ合う。と、言っても拳をぶつけた地点から円状に衝撃波が生まれるくらいには激しい挨拶だが。
そこからは目まぐるしい攻防が続く。身体機能で言えばアンフィスに分があるだろう。子供で人化しているとは言え最強の種族竜種。繰り出される拳や蹴りは暴風と化している。
対するテュールは丁寧に攻撃を捌き、時折重力で部分的に重くした拳を牽制に入れる。ジャブのようだが重力魔法で重さが増し、石など簡単に砕く握力から繰り出される拳は無視できるものではない。
「器用なやつだ──なっ!」
「どうっ──も!」
アンフィスの強烈な回し蹴りを食らいながらも自ら後ろに飛び、威力を殺して距離を取るテュール。そして吹き飛んでいくテュールの両手にはそれぞれ一m程の魔法陣が。
「ほぅ、あの歳で一m級の二重詠唱を使うか……。まして、蹴られながらのこのタイミングでこの構築速度……。鍛えあげているな」
「ホホホ、当然じゃ。わしら四人の訓練に泣き言も言わずついてきているのだからのぅ」
「ガハハハ、死にかけたことも一度や二度ではないからな! 精神的にもタフだぞ! ま、殺しかけるのはいつも俺だがな! ガハハハ!!」
テュールは色々言いたいことはあったが、外野の声は聞き流し、目の前の戦闘に集中をする。
「右手に風、左手に氷。吹き荒れろ暴風雪!!」
テュールの両手にあった魔法陣は、重なりニmの魔法陣となり、発光。そしてアンフィスを強烈な冷気を帯びた竜巻が襲う。
「ぐっ……!!」
アンフィスは竜巻から逃れようとするが、少年の軽い体では当然抗うことはできず、身動きの取れないまま螺旋状に上空へ運ばれていく。
(やったか──!?)
テュールは盛大にやっていないフラグを建てながら上空を見つめる。そこには百m以上打ち上げられ、竜巻から放り出されたアンフィスがいる。着ている服はボロボロになり、その暴風と氷によって幾重もの赤い線が体に刻まれている。
そして、打ち上がる速度がゼロになり、自由落下を──。
ニヤッ。
オマエツヨイナ。
はじめた時──そう口を動かした。そしてその直後、空中には体長七m程の黒い鱗を持った飛竜が翼をはためかせていた。
(うげっ、竜化!? そんなんありか!?)
テュールはバッと振り返り、大人三人を見る。師匠二人は目を輝かせてサムズアップしている。ファフニールは目を逸らし口笛を吹いていた。
(続行ですね……わかります)
一応様子は窺ったものの、当然これしきのことで手合わせが中止になるとは思っていないテュールは両手で頬を叩き、気合を入れ直す。
「っしゃ!! ドラゴンがなんぼのもんじゃいっ!! かかってこいやぁ!!」
そんなヤケになって叫んたテュールにアンフィスは堂々と応える。
「グルアァァッッ!!」
そして、その口の先には五m程の魔法陣が現れる。
(うっそーん……。ブレス放つ雰囲気だけどブレスって幻想級レベルなの?)
テュールは今度はちょっとばかし本気で止めてくれるのを期待し、大人三人を見る。三人はどこからか持ってきたちゃぶ台の上で茶をしばき談笑している。
「じょ、上等だ!! 竜種のブレス、防ぎきれるかやってやろうじゃねぇか! 右手に障壁ッ、左手に重力ッ、重力場の盾!!」
テュールの両手にはそれぞれニ枚の一m級魔法陣が光り、それが重なりニmの魔法陣が両手に生まれる。そして更にそれを重ね、四mの魔法陣を作り出すとアンフィスのブレスに備える。
「ほぅ、本当に驚かされる。一m級の三重詠唱まで使えるとは。末恐ろしいな……」
「ホホ、そうじゃろ、そうじゃろ。もっと褒めるんじゃ」
「ガハハハ、すげーだろ? な? うちのすげーだろ?」
(観客サイド楽しそうですねっ!)
そして、百m程離れているだろうか、アンフィスの魔法陣が一瞬強く輝くと、視認できない速度で黒い光の奔流が到達する。
ベゴンッッ──!!
「んがっ……!! おもっっ!! キツっっ!! ムリムリムリムリ!! む、むーりーだけどぉぉぉむりじゃぬわぁぁぁいい!!」
質量を持った光を受け止めた瞬間、テュールの足元にすり鉢状のクレーターができる。
「こ──こなくそぉぉッッ!!」
テュールの両手は赤熱し、グラビトンシールドの周りの地面は高熱で溶け始めている。そして永遠にも感じる時間、あるいは一瞬と錯覚するような攻防の末、遂にブレスが止まる。
「はぁはぁ……、耐えきっ──」
土煙が晴れ、テュールの視界が開かれた先に見えたものは黒い何かであった。
ズバンッ──。
アンフィスの尻尾がテュールの胴を強かに打ち、テュールは凄まじい速度で吹き飛ばされ、そこで意識が途絶えた。
パシッ。
「うーし、ここまでだ。中々面白かったぞ! ただし、テュールおめぇ負けたから帰ったらちと訓練を厳しくするぞー。ガハハハ!!」
吹き飛んでいくテュールをリオンがキャッチし、聞こえるか聞こえないかはさておき、そう宣言する。恐らく聞こえていない方が幸せであろう。
「アンフィスもよくやった。ただし、竜化でのブレスはやりすぎだな。まぁだがコヤツならお前の良き友人となってくれるだろう。今後も仲良くやりなさい」
それを聞くとアンフィスは、人化し、頷く──と、同時に意識を失い、地面へと倒れ込む。
「ホホホ、仲良きことは美しき哉、重畳重畳、ホホホ」
こうして、強烈な出会いを果たすニ人であった。
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ペンギン
ホンマに強烈な出会いやわw