絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

気楽に

 リーフェさんの件に関しては捜索隊が出されることとなった。
 俺も協力を申し出たが、王様が息子の尻拭いをするのが親の役目だからと譲らなかったので渋々諦めることにした。

 そして俺は今、屋敷のリビングにいる。
 会議机のような長方形のテーブルの席には、この屋敷に住んでいる皆が座っている。
 俺が呼んで揃ってもらった。

 今から、俺の全てを話す。

「皆に集まってもらったのは他でもない。俺が今まで隠してきた秘密を、俺の全てを話したいと思う」
「なによ真剣な顔して。似合わないわよ?」

 そこのぺったん娘、うるさいぞ。
 咳払いを一つして、話を続ける。
 ……俺の思考を読んだのか、カレンが思いっきり睨みつけてくるが、気にしない。
 恐怖で声、震えたりしないかな?大丈夫だよね?

「真剣な話だからだ。今後の俺達の関係にも関わるような」
「リリィちゃん最近お肌ツルツルになってきてるよね」
「本当ですね、何か使ってるのでしょうか?」
「……白いドロっとした美容液。……むふふ」

 ミーナさん?リーゼさん?リリィさん?俺の話聞いてる?真剣な話するって言ってるんだよ?
 というかリリィ、その美容液ってアレじゃないよね?違うよね?

「取り敢えず聞いてほしい。実は俺……転生者ってやつなんだ」
「む、少し身体が重い気がするな」
「疲れが溜まってるのではないか?」
「アリス、明日の早朝訓練は休んだ方がいいですよ」

 あの、アリスにソフィ先輩にシャルさんや?俺かなりすごいこと言ってるんですけど?無反応どころか話すら聞いてませんよね?

「なぁ……俺の話聞いてる?」
「「「全然」」」
「聞いてんじゃねぇか!ていうか息ピッタリだな!」

 なんなんだよ……窓際でぽかぽか陽気に包まれながら気持ちよさそうに寝てるクーと一緒に俺も寝たくなってきたよ……

「で、なんだったかしら? レオンが転生者で《想いの加護》を持っててヘタレって話だったような気がするわね」
「合ってる! けど合ってると認めたくない!」

 ヘタレだけど……確かにヘタレだけども!
 ……ん?

カレン絶壁さんや、なんで《想いの加護》を知ってるんだい?」 
「なんか凄く不快な呼び方された気がするんだけど……ダルクさんに教えてもらったわよ」

 クソ親父か……

「どーせ俺なんかと本当にいてもいいのか? とか聞くつもりだったんでしょ」
「……そんなに俺って分かりやすいか?」
「そうよ。ねぇ、皆?」

 問いかけるようにして、カレンは他の皆へと視線を投げかける。

「レオンは私よりも顔に出るからな」
「……顔に出してもいいよ?」
「僕はその、あはははは……」
「夫の気持ちを汲み取るのも妻の役目だからな」
「レオンくん、ツッコミが上手くなりましたね」
「最近付き合い出した私でも、まあ……」

 うん、なんか色々とカオスだ。しょうがないから一つずつ対応していこう。

 まずはアリス、君がベストオブ普通の答えだ。アリスも考えてることが割と顔に出やすいタイプだからな。

 次にリリィ、なんかスイッチ入ってません?筆者の趣味でそういう属性になったけど、本当にこれで良かったのか不安になってきてるからね?

 次はミーナ。うん、俺のことを気遣って、笑って誤魔化してくれたね。後で尻尾もふっていい?

 お次はソフィ先輩だ。あなたはやたらと「良き妻」になろうとしていますよね。素直に嬉しいです。

 そしてシャルよ、俺も自分のツッコミスキルが上がっているのを今現在実感しているよ。

 最後にリーゼさん。最近付き合い出したって言う時の恥じらう顔はグッドでした。

 うん、とにかくこれだけは言わせてくれ。

「カオスすぎるだろ!!」

 そして、そのやり取りを楽しそうに眺めていたカレンが口を開いた。

「まあ茶番はこれくらいにして、私からレオンに一言」

 茶番って自分から言うのか……
 そんなカレンが、先ほどの俺と同じような真剣な眼差しでこちらを見てくる。

「例えあんたがどんな存在であろうと、私達は受け入れる。受け入れてみせる。だから無駄に肩肘張らずに気楽に、ね?」

 微笑みを浮かべるカレン。

「これもダルクさんから聞いたけど、私達とイチャつけばあんたは強くなるんでしょ? なら遠慮せずしましょ? 拒む人なんてここには誰一人いないわよ」

 他の皆が頷く。

「これで万事解決ね。うじうじしてるレオンなんて見たくなかったし、早く終わって良かったわ」
「なんとういうか、その、色々とすまん」
「惚れた弱みってやつよ」

 心配してた俺が馬鹿みたいだな。
 ここにいる誰もが最高に素敵な女性だってことを忘れていたみたいだ。
 視界が滲んでくる。
 せめてこれだけは、どうしても伝えよう。

「ありがとう」

 皆から返ってくるのは「どういたしまして」の言葉。
 俺は目から溢れ出るものを堪えることがもう、出来なかった。


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