絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

首都観光

 獣人国の第一王女様が見つかるまで待っていてほしいと言われたが、いつまで待つのか分からなかったため、街に出てもいいかと頼み込んで許可を貰った。
 その際に国賓用のカードが入った名札付きのストラップを渡された。首に掛けていれば決闘は挑まれないみたいだ。これは助かる。

 そんなわけで俺はシャルと二人で獣人国の首都、ケルディスの街中を歩いていた。
 ……国名といい首都名といい、格好いい名前だな。
 しかし、新しい場所ってのはワクワクするな。あまり人族と文化的に違いはないが、雰囲気などはやはり独特のものがある。視線が少し気になるが。

「ふふっ」
「急に笑ってどうしたんだ? シャル」
「いえ、レオン君が目をキラキラさせていて、まるで子供みたいだなーと思いまして」

 俺の心情が態度に出ていたのか、シャルにくすくすと笑われてしまった。
 前世とは全く違う文化だからなぁ。どれもこれもが新鮮で興味が湧く。

「おっ、あれ美味そう。買ってきてもいいか?」
「どうぞ」

 俺は特性スパイスの串焼き肉だぞ☆とかいうポップなのぼりの屋台へ行き、二本注文した。ちなみに店員は厳ついおじさんである。
 品物を受け取りシャルへの元へと戻り、一本渡した後に自分の分にかぶりつく。

「うっま! これリリィのお土産にしようかな……」

 いや、串焼き肉をお土産にするのは流石に駄目か。俺は食べ続けたが、シャルはなぜか食べずにこちらを見ていた。

「なんだ?」
「いえ、その、食べ方が分からなくて」

 あぁ、生粋のお嬢様だもんな……こういうのにアリスは慣れていたから忘れていた。王様と視察に一緒に行くぐらいだからアリスは知っていたのか。

 食べ方を教えたところ、かぶりつくのに少しだけ抵抗があったようだがどうにか食べることが出来た。顔も綻んでいたし満足していただけたようだ。

 その後も首都観光は続き、途中で買ったクレープを嬉しそうに食べるシャルと一緒に平和な時間を楽しんでいたが

「おいババァ! 気ィつけて歩けや!」

 男の怒鳴り声が聞こえた。どうやら荷物を持って歩いていたお婆さんと男がぶつかったようだ。男はそのまま立ち去ったがお婆さんは尻餅をついて動けないでいる。どうやら腰をやってしまったみたいだ。

「大丈夫ですか? よかったら背負いますよ」
「あらそうかい……助かるねぇ」
「いえいえ、大したことではないですよ。シャル!少し手伝ってくれ!」

 俺はすぐさまお婆さんに近付き声をかける。流石に放っておけないだろ。
 俺がお婆さんと話している間、なぜかボーッとしていたシャルを呼び、荷物を持ってもらう。

 俺はお婆さんを背負い、家まで案内をしてもらう。

「本当にありがとねぇ」
「単なる自己満足ですから。お身体、大事にしてくださいね」

 お婆さんを家まで送り届けた俺達は王城へと向かい始めた。そろそろ第一王女様が戻ってきてるかもしれないからな。

「ねぇレオン君? どうしてさっきの人を助けたの?」

 二人並んで歩いていると、シャルがそんなことを聞いてくる。心なしか砕けた話し方になってきている気がする。少し嬉しい。

「どうしてって困っている人がいたら助けるだろ普通」
「世の中には、その普通が出来ない人が多くいるんですよ」
「まぁそうだろうなぁ」

 忙しい、面倒臭い、関わりたくない。様々な理由があって助けない人は沢山いるであろう。

「でも、自分の手が届くところにいるのに助けないで、後になって後悔するのは嫌なんだ。俺は、助けを求める人がいたら絶対に見捨てない」

 脳裏に浮かぶのは村の惨劇の記憶。
 俺が助けられなかった、皆のこと。

「なんか無駄に壮大なこと言っちゃったな。すまん」

 お婆さんを助けたことから始まった話題なのにな。思わず乾いた笑いが出てしまう。

「ほら、さっさと城に戻ろう」

 この話を終わらせるためにシャルの手をとって王城へと歩を進める。さっき自分が言ったことを思い出して恥ずかしくなり、シャルの方を向けない。

 そうして城に着き、セバスさんの案内によって王様のいる部屋へと入る。

 部屋のソファには一人の男性が座っていた。

「ようこそ獣人国バルディリアへ。私は国王のアーマルです」

 立ち上がりお辞儀をするアーマルさん。弱肉強食の獣人国でトップに君臨するだけあってかなり大柄な体格且つムッキムキな見た目である。が、物腰は丁寧でギャップが凄い。見た感じ獅子の獣人か?

 俺達も挨拶を済ませ早速本題に……本題ってなんだ? 武闘大会の挨拶をするって事しか聞いてないんだが。

「それでは、今年もよろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ」

 アーマルさんとシャルが握手を交わす。え?終わり?

 シャルが部屋を出ようとしたので俺もそれに付いていこうとする。その時

「ちょおおおおおっと待ったあああああ!!!!」

 バン! と扉が開き、そこには一人の女の子が立っていた。
 どうやらやっと第一王女様のお出ましみたいだ。















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