絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

二人の武人

 今日は学内最強決定戦二日目、実質最終日である。
 いつものメンバーで観客席に座り、試合を眺める。
 準決勝から始まるため全三戦で終わるが、初日以上の盛り上がりを見せていた。
 なぜならアリスとソフィ先輩が出ているからだ。しかも準決勝では当たらないので順調に勝ち進めば決勝で当たる。
 学園トップとナンバーツーの戦いが見れるとなると盛り上がるのは納得できる。おまけに二人は二学年二大美少女である。
 案の定、二人は準決勝を突破した。
 そして今は決勝前のインターバルだ。最も激しくなるであろう試合を前に、両選手に最高のパフォーマンスをさせるための休憩時間。

「お、おいレオン。俺達は親友だよな?」
「急になんだよ気持ち悪い」

 俺の両肩に手を置き、顔をずいっと近づけて問い詰めてくるマルク。顔近すぎなんだが。

「お前、ミーナまで落としやがって……。いつものメンバーの女子全員お前の嫁になっちまって、居づらいんだよ!」
「……すまん。ってリリィは違うだろ」
「お前、気付いてないのか」
「何がだよ」
「……いや、なんでもない」

 なんなんだよ……。リリィマイスターの俺から見ても、特におかしいところはなさそうなんだがな。
 いつも通りの超絶可愛い妹様だ。

「レオンの気持ちも分かるわね。これは癖になるわ」
「……わしゃわしゃ」

 女子三人の方を見てみると、カレンとリリィがミーナの頭を撫でていた。
 カレンが「同盟に加わるなら私にも撫でさせて!」と頼み込んだからだ。なぜかリリィも便乗しているが。
 てか同盟ってなんだよ。

 そんな風に各々で自由に過ごしていると、ブザーが鳴り響く。
 インターバル終了のブザーだ。
 そしてアリスとソフィ先輩が同時に舞台に姿を現す。

 ……ん? これは……?

「すまん皆! 少し離れる!」
「レオン!?」

 間に合えよ……っ!

※※※

 学内最強決定戦、決勝戦。
 二人は舞台上で向かい合っていた。

「久しぶりに本気でやりあえそうだな、ソフィ」
「あぁ、この時を楽しみにしていたぞアリス」

 互いに実力を認め合っているからこそ、不敵に笑いあう二人。
 そこに漂う空気は、まるで戦場のように張りつめていた。

「アリスが男にうつつを抜かしている間も、私は修練を積んできたからな」
「べ、別にうつつを抜かしてなんかいないっ!」

 しかし先ほどの空気はどこへやら、ソフィがニヤニヤしながらアリスをからかい始める。ソフィの急な攻撃にアリスは思わずたじろぐ。

「添い遂げたいと思える相手がいるというのは、精神的にも強くなれるぞ? ソフィも探してみたらどうだ?」

 アリスが反撃を試みる。
 帰るべき場所がある。自身を待ってくれている人がいるというのは精神的支柱になる。それは過去の大戦に参加した多くの人が語っていた事であり、世界中でも認められていることである。
 そのため、アリスの言葉もただやりかえす為のものではなく、ソフィに対しての心遣いもある。
 しかしアリスの言葉を聞いたソフィは一瞬だが暗い顔をしていた。すぐに元に戻ったため、アリスはその変化に気付いていなかった。

「私は私より強い者にしか従わない。ふむ、そう考えるとレオンは優良物件だな」
「なっ! そ、それは駄目……ではないのか? ソフィなら私は認めているし、カレンだって話せば多分……」

 語尾に近づくにつれ、段々と声量が小さくなっていく。

「ふふ、心底あいつに惚れているんだな」
「あぁ、私が惚れた相手だ」

 またしてもからかうようにソフィは言うが、今度のアリスは自信満々と言った様子で返事をする。そのアリスを見てソフィは嬉しそうに、しかしどこか影がさしているような微笑みを浮かべていた。

「……そうか。さて、そろそろ始めるとするか」
「そうだな」

 二人は武器を構え、対峙する。
 またしても張りつめた空気となり、そこに立つのは二人の武人の姿。

「試合開始!」

 そして決勝戦が始まった。


  

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品