絶対守護者の学園生活記
冒険者ギルドへ
「……大事な話がある」
「……なんだ?」
朝の教室で俺は話を切り出す。俺の真剣な表情からかなり重要な話だと察したのか、マルクはゴクリと唾を飲み込む。
「金欠で、やばい」
「……そうですか」
真面目な空気から一転、何言ってんだこいつ、と呆れた表情をするマルク。おいおい、俺は真剣なんだ。碇ゲン○ウの有名なポーズよろしく、肘を机について両手を顔の前で組むほどには。
「何をしたらそこまで切羽詰まるんだよ」
「最近金を使う機会が増えてなあ」
「例えば?」
「この前の決闘で駄目になった武器の補充だろ? あとはアリスとカレンとのデートの時の費用だとか、プレゼント費用だとか」
「…………」
ん? マルクが黙ってしまった。
「おい、どうしたマルク。友が真剣に悩んでるんだぞ」
「………この」
「この?」
「モテ男がああああ! 死ねええええ!!!」
叫ぶと同時、マルクが右ストレートを繰り出してくる。ふむ、中々いい拳だ。だがまだまだ甘い。
「せいっ!」
半身で避け、そのまま突き出された腕を掴み、投げる。
「ぐえっ」
背中から教室の床へ叩きつけられたマルクは変な声を出して気絶してしまう。
降りかかる火の粉は払うと言っただろう。こういう時の為に言った訳では無いが。
マルクの身体が頑丈だからこそ出来ることだ。
クラスの皆も「ああ、いつものか」といった感じで特に反応はしない。慣れって怖いね。
「それでだが、冒険者ギルドで依頼を受けて稼ごうかなと思ってるんだ」
今まで俺達のやり取りを傍観していたミーナへと話しかける。
「冒険者ギルドってたしか登録が必要だったよね? レオン君はしてあるの?」
ミーナも特に何事も無かったかのように返事をしてくる。哀れ、マルク。
「あぁ、一応な」
親父との特訓時代に、経験を積む目的で魔物討伐の依頼などを受けていたからな。
「それでだが、ミーナも来てみないか?」
「僕も?」
「ああ、良い経験になるぞ」
「うーん。なら行ってみようかな」
ミーナは参加と。後はマルクとカレンとリリィ辺りに声をかけてみるか。
※※※
そして放課後。俺はミーナと二人で冒険者ギルドへと来ていた。
カレンは孤児院へ、マルクは許嫁に会うからと言って不参加だ。マルクの許嫁は王都にいるから割といつでも会えるらしい。今度紹介してもらうか。
リリィは母さんに会いに行った。なんでも、この前の野外実習で自分が役に立てなかったことが悔しかったらしく、魔法の威力制御などを教わるために母さんに弟子入りしたらしい。
これを聞いた時はあまりのリリィの健気さに、思わず抱きしめてしまった。そこで普段なら、なされるがままだったリリィだが、なんと抱きしめ返してきたのだ。思わずドキッとしてしまったのを覚えている。
余談だが、リリィは今まで学園長の元でお世話になっていたらしく、同時に魔法の指導も受けていたらしい。戦闘狂である学園長の影響で馬鹿力魔法しか使えなくなったのではないかと俺は睨んでいる。
「流石王都のギルド。大きいうえに綺麗だ」
俺が今まで通っていたギルドは、村や小さな街と言った場所にあったため建物がそこまで大きくなかったり掃除が行き届いていなかったりした。
ミーナは初めて来た場所だからか周りをキョロキョロ見渡している。
「おっ! 有名人の登場だ!」
「やめなってダン!」
「ダンさん! アンさん!」
俺に話しかけてきたのはダンさんとアンさん。俺が冒険者ギルドに通ってた頃によくお世話になった人達だ。夫婦で冒険者をやっている。
「お久しぶりですね。今は王都で仕事ですか?」
「おう久しぶりだな。まぁ気分転換にって感じだ。そういえばリーフェちゃんもいるぞ」
「お、それはめでたいですね」
リーフェさんは俺がよく通っていた冒険者ギルドで受付嬢をやっていた人だ。人当たりが良く、エルフのため、美男美女が多いという例に漏れずの美人だ。あまりの人気に『リーフェたん親衛隊』というのが存在する。この国最大の王都のギルドで働くようになるということは昇進したということだ。
「受付にいるだろうから、久しぶりに顔でも見せてやれ」
「そうします」
そしてダンさん達と別れ、受付へと向かう。
……一つだけ凄い行列が出来てるカウンターがあるんだが。多分これだよなぁ。
ミーナと行列に並び、待つこと一時間。やっと俺達の番が来た。
「こんにちは」
「こんにちは!……ってレオン君!」
「お久しぶりです、リーフェさん。昇進おめでとうございます」
「ありがとね!」
前とは変わらない元気スマイルを披露するリーフェさん。数々の男を落としてきた必殺スマイルだ。
「それよりも聞いたよレオン君。第二王女様と婚約したんだって?私も良い人現れないかなぁ」
見た目は学生でも通りそうなほど若々しいリーフェさんであるが、これでも三桁に届きそうな年齢である。これはエルフが長命だからだ。それも関係してか、俺は君付けで呼ばれている。初めて会った時の俺が十二歳だったことも影響しているが。
そんなリーフェさんだが、未婚である。なんでも理想の王子様が現れないからだとか。
「リーフェさんなら大丈夫ですよ」
「そうかなぁ? もし行き遅れたらレオン君が私の事貰ってくれる?」
「あはは、その時は俺で良ければ貰いますよ」
「ほんとに? 言質確保!」
こんだけ綺麗で親しみやすい女性なんだ。行き遅れるなんてことは冗談でもありえないだろう。
「……冗談には聞こえなかったけどなぁ」
「なんだ?」
「いや、なんでもないよ」
? おかしなミーナだな……。
「それでレオン君、今回の用件は?」
「ああ、彼女の冒険者登録と簡単な依頼でも受けようと思って」
「うんオッケー。それじゃこの紙に名前を書いてね」
「分かりました」
ミーナが登録用の紙を受け取り、名前を書いてリーフェさんに手渡す。リーフェさんはその紙を持って受付の奥へと行き、しばらくすると名刺サイズの透明なプレートを持ってくる。
「これに魔力を流すことで登録が完了だよ」
それを聞いたミーナはプレートに魔力を流す。するとプレートにミーナの名前とランクを表すFという文字。さらに受注中の依頼が表示される欄が浮かびあがる。
「それでは冒険者における規則を話すね」
簡単にまとめるとこうだ。
冒険者が起こした問題に関しては全て自己責任でお願いね! あ、あとランクはS~Fまであるよ! 自分の一つ上のランクの依頼までは受注することが出来て、ランクアップはある程度の実績と人柄含め上がるに相応しいかどうかをギルドが判断するよ! Sランクは特別な功績を挙げた者のみに与えられるんだって! すっごーい!
といった感じだ。うん、分かりやすい。
ちなみに俺はSランクだったりする。ドラゴンの姿を見たと言う噂の真相を確かめるために偵察をするという依頼で、実際にドラゴンを発見してしまいその場で討伐してしまった事が評価されたからだ。かなりの異例だったらしい。
高ランク冒険者は緊急時に招集をかけられることがあるが、そんな大変な事件は早々起こることではなく、呼ばれたことは今のところは無い。
「それで、簡単な依頼だっけ? ならこんなのどう?」
「ゴブリンの討伐か……ミーナはこれでいいか?」
「うん、任せるよ」
「よし、これを受ける」
「はいはーい。それじゃプレートの提示をお願いね」
俺とミーナの冒険者プレートを渡す。
「はい、これでよしっと! それじゃ気を付けて行ってきてね!」
久しぶりの依頼だ。頑張るとしますか。
「……なんだ?」
朝の教室で俺は話を切り出す。俺の真剣な表情からかなり重要な話だと察したのか、マルクはゴクリと唾を飲み込む。
「金欠で、やばい」
「……そうですか」
真面目な空気から一転、何言ってんだこいつ、と呆れた表情をするマルク。おいおい、俺は真剣なんだ。碇ゲン○ウの有名なポーズよろしく、肘を机について両手を顔の前で組むほどには。
「何をしたらそこまで切羽詰まるんだよ」
「最近金を使う機会が増えてなあ」
「例えば?」
「この前の決闘で駄目になった武器の補充だろ? あとはアリスとカレンとのデートの時の費用だとか、プレゼント費用だとか」
「…………」
ん? マルクが黙ってしまった。
「おい、どうしたマルク。友が真剣に悩んでるんだぞ」
「………この」
「この?」
「モテ男がああああ! 死ねええええ!!!」
叫ぶと同時、マルクが右ストレートを繰り出してくる。ふむ、中々いい拳だ。だがまだまだ甘い。
「せいっ!」
半身で避け、そのまま突き出された腕を掴み、投げる。
「ぐえっ」
背中から教室の床へ叩きつけられたマルクは変な声を出して気絶してしまう。
降りかかる火の粉は払うと言っただろう。こういう時の為に言った訳では無いが。
マルクの身体が頑丈だからこそ出来ることだ。
クラスの皆も「ああ、いつものか」といった感じで特に反応はしない。慣れって怖いね。
「それでだが、冒険者ギルドで依頼を受けて稼ごうかなと思ってるんだ」
今まで俺達のやり取りを傍観していたミーナへと話しかける。
「冒険者ギルドってたしか登録が必要だったよね? レオン君はしてあるの?」
ミーナも特に何事も無かったかのように返事をしてくる。哀れ、マルク。
「あぁ、一応な」
親父との特訓時代に、経験を積む目的で魔物討伐の依頼などを受けていたからな。
「それでだが、ミーナも来てみないか?」
「僕も?」
「ああ、良い経験になるぞ」
「うーん。なら行ってみようかな」
ミーナは参加と。後はマルクとカレンとリリィ辺りに声をかけてみるか。
※※※
そして放課後。俺はミーナと二人で冒険者ギルドへと来ていた。
カレンは孤児院へ、マルクは許嫁に会うからと言って不参加だ。マルクの許嫁は王都にいるから割といつでも会えるらしい。今度紹介してもらうか。
リリィは母さんに会いに行った。なんでも、この前の野外実習で自分が役に立てなかったことが悔しかったらしく、魔法の威力制御などを教わるために母さんに弟子入りしたらしい。
これを聞いた時はあまりのリリィの健気さに、思わず抱きしめてしまった。そこで普段なら、なされるがままだったリリィだが、なんと抱きしめ返してきたのだ。思わずドキッとしてしまったのを覚えている。
余談だが、リリィは今まで学園長の元でお世話になっていたらしく、同時に魔法の指導も受けていたらしい。戦闘狂である学園長の影響で馬鹿力魔法しか使えなくなったのではないかと俺は睨んでいる。
「流石王都のギルド。大きいうえに綺麗だ」
俺が今まで通っていたギルドは、村や小さな街と言った場所にあったため建物がそこまで大きくなかったり掃除が行き届いていなかったりした。
ミーナは初めて来た場所だからか周りをキョロキョロ見渡している。
「おっ! 有名人の登場だ!」
「やめなってダン!」
「ダンさん! アンさん!」
俺に話しかけてきたのはダンさんとアンさん。俺が冒険者ギルドに通ってた頃によくお世話になった人達だ。夫婦で冒険者をやっている。
「お久しぶりですね。今は王都で仕事ですか?」
「おう久しぶりだな。まぁ気分転換にって感じだ。そういえばリーフェちゃんもいるぞ」
「お、それはめでたいですね」
リーフェさんは俺がよく通っていた冒険者ギルドで受付嬢をやっていた人だ。人当たりが良く、エルフのため、美男美女が多いという例に漏れずの美人だ。あまりの人気に『リーフェたん親衛隊』というのが存在する。この国最大の王都のギルドで働くようになるということは昇進したということだ。
「受付にいるだろうから、久しぶりに顔でも見せてやれ」
「そうします」
そしてダンさん達と別れ、受付へと向かう。
……一つだけ凄い行列が出来てるカウンターがあるんだが。多分これだよなぁ。
ミーナと行列に並び、待つこと一時間。やっと俺達の番が来た。
「こんにちは」
「こんにちは!……ってレオン君!」
「お久しぶりです、リーフェさん。昇進おめでとうございます」
「ありがとね!」
前とは変わらない元気スマイルを披露するリーフェさん。数々の男を落としてきた必殺スマイルだ。
「それよりも聞いたよレオン君。第二王女様と婚約したんだって?私も良い人現れないかなぁ」
見た目は学生でも通りそうなほど若々しいリーフェさんであるが、これでも三桁に届きそうな年齢である。これはエルフが長命だからだ。それも関係してか、俺は君付けで呼ばれている。初めて会った時の俺が十二歳だったことも影響しているが。
そんなリーフェさんだが、未婚である。なんでも理想の王子様が現れないからだとか。
「リーフェさんなら大丈夫ですよ」
「そうかなぁ? もし行き遅れたらレオン君が私の事貰ってくれる?」
「あはは、その時は俺で良ければ貰いますよ」
「ほんとに? 言質確保!」
こんだけ綺麗で親しみやすい女性なんだ。行き遅れるなんてことは冗談でもありえないだろう。
「……冗談には聞こえなかったけどなぁ」
「なんだ?」
「いや、なんでもないよ」
? おかしなミーナだな……。
「それでレオン君、今回の用件は?」
「ああ、彼女の冒険者登録と簡単な依頼でも受けようと思って」
「うんオッケー。それじゃこの紙に名前を書いてね」
「分かりました」
ミーナが登録用の紙を受け取り、名前を書いてリーフェさんに手渡す。リーフェさんはその紙を持って受付の奥へと行き、しばらくすると名刺サイズの透明なプレートを持ってくる。
「これに魔力を流すことで登録が完了だよ」
それを聞いたミーナはプレートに魔力を流す。するとプレートにミーナの名前とランクを表すFという文字。さらに受注中の依頼が表示される欄が浮かびあがる。
「それでは冒険者における規則を話すね」
簡単にまとめるとこうだ。
冒険者が起こした問題に関しては全て自己責任でお願いね! あ、あとランクはS~Fまであるよ! 自分の一つ上のランクの依頼までは受注することが出来て、ランクアップはある程度の実績と人柄含め上がるに相応しいかどうかをギルドが判断するよ! Sランクは特別な功績を挙げた者のみに与えられるんだって! すっごーい!
といった感じだ。うん、分かりやすい。
ちなみに俺はSランクだったりする。ドラゴンの姿を見たと言う噂の真相を確かめるために偵察をするという依頼で、実際にドラゴンを発見してしまいその場で討伐してしまった事が評価されたからだ。かなりの異例だったらしい。
高ランク冒険者は緊急時に招集をかけられることがあるが、そんな大変な事件は早々起こることではなく、呼ばれたことは今のところは無い。
「それで、簡単な依頼だっけ? ならこんなのどう?」
「ゴブリンの討伐か……ミーナはこれでいいか?」
「うん、任せるよ」
「よし、これを受ける」
「はいはーい。それじゃプレートの提示をお願いね」
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