絶対守護者の学園生活記
泣き虫
「起きた?」
「……おう」
俺は孤児院にあるベッドで目を覚ました。俺の顔を覗いていたカレンと目が合う。
「調子はどう?」
「絶好調だ。今なら学園長と十連戦は出来るぞ」
「その前に私との手合わせも忘れないでほしいな」
「……アリス」
アリスが部屋のドアを開け現れる。
「私は今回の出来事の顛末について説明しにきた」
今回の出来事、か。
「レオン、お前はどこまで覚えている?」
「……全てだ」
ユウちゃんがひどい目に遭っている――
そう思った瞬間、俺は自我を失った。いや、少し違う。
確かに俺の意識はあったが、体がまるで自分の言うことを聞かなかった。まるでもう一人の俺が存在していたかのような。別に中二の病を患ったわけではない。
自分とは別の何かが俺の体を動かしていた。許さない、という感情が俺にも伝わってきた。
俺、疲れてんのかなぁ……。
「なら話は早い。元々コレーグ子爵家には様々な犯罪の容疑がかかっていてな。黒だというのが確定したので近々捕らえられるはずだったんだ。あの護衛の男たちも犯罪に関わっていたらしい。恐らく死刑になっていただろう」
「……そうか」
「だがレオンが人を殺してしまったことには変わりない。だから気にしなくていいとは言わない。でもお前がしたことは悪いことではなかったのは確かだ」
「……そうか」
俺は人を殺してしまったんだ。たとえ悪人だったとはいえ命を奪ってしまった。斬った時の感触は今でも覚えている。
「お前は無理をしなければ生きていけないのか?」
「……そんなことはないと思うが」
「ならもっと私たちを頼ってくれてもいいと思うんだが?」
少し拗ねたように言うアリス。
なんか最近の俺って女の子に甘やかされすぎてないか? でも……
「ありがとなアリス。カレンも」
「ああ!」
「……どういたしまして」
アリスは元気よく、カレンはプイっと顔をそむけながらも反応してくれる。
……本当にありがとうな、二人とも。
「レオン、ユウちゃんが隣の部屋で寝てるから見てきたら?」
「そうだな、見てくるといい。私はカレンと話さなければいけないことがあるようだしな」
「えっ、私は特には……」
「ほらさっさと行ってこい」
「お、おう……」
なんなんだ一体……。
※※※
「レオンお兄ちゃん!」
ユウちゃんがいるという部屋を訪ねると、胸に誰かが飛び込んでくる。
ユウちゃんだ。
そっと抱き留めて、頭を撫でてやる。
「えへへ……」
「……ごめんな、四年も待たせちゃって。辛かったよな?」
「?」
首をかしげるユウちゃん。これは俺のケジメだ。俺が背負っていくべき責任。当時は八歳だった女の子を長い間怖い所にいさせてしまった、そんな俺のケジメ。謝る事しか出来ないのが悔しい。
「怖かっただろ? あんな場所に長い間いて」
「……うん。でも不安はなかったよ」
不安じゃなかった?
「だって、レオンお兄ちゃんが助けに来てくれるって信じてたもん! 前だってレオンお兄ちゃんが助けに来てくれたから!」
「!」
ユウちゃんの髪の色は、長年の監禁生活の影響か、色が抜けて真っ白になっていた。辛かったのだろう。怖かったのであろう。それでもユウちゃんは何一つ疑いのない純粋な目で真っすぐと俺を見つめている。
「だから、レオンお兄ちゃんが来てくれて、私を助けてくれて本当に嬉しかったの」
なんていうか、俺は恵まれているな、そう思った。
とても居心地がいいというか、俺にはもったいなさすぎるくらいに、周りは優しくて。
「どうしたの? レオンお兄ちゃん。悲しいの?」
「えっ……?」
またしても俺は泣いていた。子供の前でさえ泣くとか情けなさすぎるな、俺……。
「違うよ。これは嬉し涙っていうんだ。嬉しい時に出る涙なんだよ」
「嬉しいことがあったの?」
「ああ。俺は本当に恵まれてるんだなって」
「そうなんだ~」
あまり分かっている感じではないが、合わせてくれるユウちゃん。
村を失ってしまってもなお、今の俺の周りには俺を支えてくれる温かい場所が、そして人達がいた。
それに改めて気付かされた。
今度こそは何も失わない。いや、失わせない。
そのために死に物狂いで手に入れた力だ。絶対に守るための。
あの時と同じように決意を固める。
ただし今度は無理をしない程度に、な。
「……おう」
俺は孤児院にあるベッドで目を覚ました。俺の顔を覗いていたカレンと目が合う。
「調子はどう?」
「絶好調だ。今なら学園長と十連戦は出来るぞ」
「その前に私との手合わせも忘れないでほしいな」
「……アリス」
アリスが部屋のドアを開け現れる。
「私は今回の出来事の顛末について説明しにきた」
今回の出来事、か。
「レオン、お前はどこまで覚えている?」
「……全てだ」
ユウちゃんがひどい目に遭っている――
そう思った瞬間、俺は自我を失った。いや、少し違う。
確かに俺の意識はあったが、体がまるで自分の言うことを聞かなかった。まるでもう一人の俺が存在していたかのような。別に中二の病を患ったわけではない。
自分とは別の何かが俺の体を動かしていた。許さない、という感情が俺にも伝わってきた。
俺、疲れてんのかなぁ……。
「なら話は早い。元々コレーグ子爵家には様々な犯罪の容疑がかかっていてな。黒だというのが確定したので近々捕らえられるはずだったんだ。あの護衛の男たちも犯罪に関わっていたらしい。恐らく死刑になっていただろう」
「……そうか」
「だがレオンが人を殺してしまったことには変わりない。だから気にしなくていいとは言わない。でもお前がしたことは悪いことではなかったのは確かだ」
「……そうか」
俺は人を殺してしまったんだ。たとえ悪人だったとはいえ命を奪ってしまった。斬った時の感触は今でも覚えている。
「お前は無理をしなければ生きていけないのか?」
「……そんなことはないと思うが」
「ならもっと私たちを頼ってくれてもいいと思うんだが?」
少し拗ねたように言うアリス。
なんか最近の俺って女の子に甘やかされすぎてないか? でも……
「ありがとなアリス。カレンも」
「ああ!」
「……どういたしまして」
アリスは元気よく、カレンはプイっと顔をそむけながらも反応してくれる。
……本当にありがとうな、二人とも。
「レオン、ユウちゃんが隣の部屋で寝てるから見てきたら?」
「そうだな、見てくるといい。私はカレンと話さなければいけないことがあるようだしな」
「えっ、私は特には……」
「ほらさっさと行ってこい」
「お、おう……」
なんなんだ一体……。
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「レオンお兄ちゃん!」
ユウちゃんがいるという部屋を訪ねると、胸に誰かが飛び込んでくる。
ユウちゃんだ。
そっと抱き留めて、頭を撫でてやる。
「えへへ……」
「……ごめんな、四年も待たせちゃって。辛かったよな?」
「?」
首をかしげるユウちゃん。これは俺のケジメだ。俺が背負っていくべき責任。当時は八歳だった女の子を長い間怖い所にいさせてしまった、そんな俺のケジメ。謝る事しか出来ないのが悔しい。
「怖かっただろ? あんな場所に長い間いて」
「……うん。でも不安はなかったよ」
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「だって、レオンお兄ちゃんが助けに来てくれるって信じてたもん! 前だってレオンお兄ちゃんが助けに来てくれたから!」
「!」
ユウちゃんの髪の色は、長年の監禁生活の影響か、色が抜けて真っ白になっていた。辛かったのだろう。怖かったのであろう。それでもユウちゃんは何一つ疑いのない純粋な目で真っすぐと俺を見つめている。
「だから、レオンお兄ちゃんが来てくれて、私を助けてくれて本当に嬉しかったの」
なんていうか、俺は恵まれているな、そう思った。
とても居心地がいいというか、俺にはもったいなさすぎるくらいに、周りは優しくて。
「どうしたの? レオンお兄ちゃん。悲しいの?」
「えっ……?」
またしても俺は泣いていた。子供の前でさえ泣くとか情けなさすぎるな、俺……。
「違うよ。これは嬉し涙っていうんだ。嬉しい時に出る涙なんだよ」
「嬉しいことがあったの?」
「ああ。俺は本当に恵まれてるんだなって」
「そうなんだ~」
あまり分かっている感じではないが、合わせてくれるユウちゃん。
村を失ってしまってもなお、今の俺の周りには俺を支えてくれる温かい場所が、そして人達がいた。
それに改めて気付かされた。
今度こそは何も失わない。いや、失わせない。
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あの時と同じように決意を固める。
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